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魚の小骨

また、横道な短編です。



「んッ。」
小さく咳払い、それを誤魔化そうと呑んだ息が鼻に抜けた。
蓮は鼻を軽く押さえるように手を翳したが、社には気づかれる。
「どうした?」
眼鏡の奥が笑っていないから、体調誤魔化してないだろうな?という疑惑の問いだと蓮には伝わる。
正直に言おうか、どうしようか。
そうやって考えた時点で怪しまれるとわかっているのに、考えた。

それは昨晩の事。
スタッフ達の何気ない会話を聞きながら、遅い夕食をとっていた蓮だった。
深夜、ただでなくても食べる気など起こらない蓮に社が、
「キョーコちゃんに言いつけるかなぁ、真夜中でもすっ飛んで来て怒ってくれるよね。」
と、言うから、渋々呑み込んでいたロケ弁当。
少しづつ忙しくなってきたキョーコに、会える機会も少ないのに、食事のことで怒られたくはない。まして、真夜中に叩き起こすなんて、最悪だと思うが、社がやりかねない事も蓮は知っている。

ごくん。

ほぼ水で流し込むように食べていた。

「でね、あんなナリなのに、すごく綺麗に焼き魚食べてたのよ。ほろっときちゃった。」
それは女性スタッフの声。
「へぇ、ビジュアル系ってなんか、焼魚食わねぇと思ったのに。」
会話を流す男の声。
「なんだかね、和食党なんですって。そのギャップ萌え、っていうの?」
「出た、ギャップ萌え、かー」
からかう別の声。
「しかも、料理が上手くなきゃ、女じゃないって、その傲慢がステキー!」
「ハイハイ、不破サマさまですねー」

ぐふ

呑み込みかけた塊を、蓮は危うく喉につかえさせるところで、胸を軽く叩いた。
聞きたくない名前が
聞きたくない事柄を背負って。

和食党、料理上手、女。

連想するのは、「ご飯はちゃんと!」と言い募る少女の顔で。
「美味しい?」
きっと彼女は彼にそうやって尋ねては、綺麗に食べる彼の姿に満足していたんだろう。

俺は。
彼女の料理なら食べられる。
けれど、美味しい?なんていうレベルで聞いてはもらえない。
「食べれますか?」だ。

ちくり

喉に何かが引っかかった。

それが、今朝になっても引っかかったままで。


「あ、敦賀さん!おはようございます!」
歩いていた前方から満面の笑みで小走りに近寄ってくるその姿。
「おはよう、最上さん。」
蓮も少し大股で一歩を踏み出す。

「良かった!お会いできると思って、作ってきちゃったんです。」
差し出されたのは小さな包み。
どきり
「お弁当なんです、け、ど。」
蓮の反応を伺うような大きな瞳。
「ありがとう。」
蓮は包みを持つキョーコの手ごと包み込む。

「君の料理はとても美味しいから、嬉しいよ。」

「だっ・」
瞬間に真っ赤になったその顔が、更に嬉しくて、蓮は破顔する。
キョーコがへなへなと膝を崩しかけたので、慌ててその背を抱きかかえた。

・・・本当は毎日作って欲しいけど。

ヘニャリと床に座り込んでしまったキョーコには、まだ、それは言ってはいけない気がして、蓮はただ、笑顔のまま、彼女を立ち上がらせた。

そして、喉の違和感が消えていることに、気がついた。

「美味しい?」
そうやって親しく聞いて欲しかったんだ。
だから、美味しいって、先に伝えるよ。
蓮はそっと呟く。

君が好きだ。



おわり



*****
美味しいご飯が食べたいな。

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