野茨の冠 3

シリーズものパラレルです。
前シリーズは解説と目次を参照下さい


****

「ちゃんと塗っとかないと!」
ペンションの部屋で奏江とナツはお互いに日焼け止めを塗り合う。
アルバイト3日目。オーナーが自慢のクルーザーに乗せてくれるというので、2人ははしゃぎながらも、海上の照り返しを恐れてケアに余念が無い。

「一体どういうツテだったんですか?」
目的のペンションに着いて、それが別荘と知ったのは早かった。駅に迎えに来たのが外車なら、運転手もプロ。
「やぁ、奏江ちゃん。今年も頼むね。」
玄関で迎えてくれたオーナーは、、俳優だった。奥様は女優で、その、代々俳優だという御一家の別荘なのだと、奏江がしれっと云う。
「よぉ」
奥から出てきた少年が奏江に声をかけた。
小学生、かな。
ナツは思うが、彼の外見もまた見たことがある。、、子役。
「飛鷹君。こんにちは。」
奏江が満面の笑み。ナツが知る限り、こんな笑顔はそうそう見れない。
飛鷹も少し照れたらしい。
「あ、はじめまして。北澤ナツです。」
「奏江の友達か。」
ちろりと見上げてきた顔が少しふてくされている。

「エキストラでね、たまたま、ま、色々あって、お姉さんがわりっていうか、家庭教師というか。」
夏休みだが、多忙な一家は飛鷹にあわせられない日もある。子役として仕事があるとはいえ、そこまでの拘束はなく、子供らしく夏休みを満喫させてやりたいという一家の要望。
「ゲストも来るしね、手伝いが欲しいって。」

ハーバーに着いて、ナツはギョっとした。
蓮が、いた。
、、どうして。

「うちのもここなんだよ。」
蓮がちらりと白いクルーザーを見る。
奏江に蓮の方へ押しやられて、ナツは結局、飛鷹達を見送った。
「そう。」
「準備してあるから。」
腕を引かれて、ナツは白いデッキに足をおろした。
「運転、できるんだ。」
「免許はあるよ。、心配?」
ナツは首を振る。
ハーバーのスタッフが外から声をかけるのが聞こえ、エンジンの音が響いた。

「琴南さんに聞いたんだ。」
沖に出て、蓮はそう切り出した。
奏江が蓮に驚かなかったから、それはナツも予想していた。
「ここに別荘も、あるんでしょ?」
「うん。上杉さんの、隣。」
ナツは言葉を失う。
、、なにそれ。
上杉、それはナツ達がアルバイトをしている別荘の主人の名前。
彼らは有名人で、だからこその生活だとナツも思う。

一体、蓮が何者なのか、ナツには面白くはなかった。
平凡な単調な毎日なんか送りたくはない、けれど、こんなんじゃない。
人にレールを敷かれるのはまっぴらだ。
そこまで思って、ナツは図書館を思い出した。
にこやかに並んで会話していた二人。
お似合いだと、思った。

「何を怒ってる?」
「別に。」
「俺、アメリカには行かないから。」
「ふうん。」
ナツは海を眺めた。
奏江達はどこに向かったのか、見えるのは煌めく海面だけだ。
「泊まるのは、うちでどうかな?」
「いや。」
奏江と部屋は別だが、ギリギリの時間までおしゃべりできるのが楽しい。
蓮に振り回されていた時にはなかった楽しみ。
ダイエット、コスメ、奏江が見てきたテレビ局の実情、話題には事欠かない。
「どうして?」
「嫌なんだもの。」
「何が?」
「全部、、、」
蓮の思い通りなんて。そう言いかけてナツは言葉を飲み込んだ。
蓮がナツから視線をそらせる。
「そんなに嫌なんだ?」
少し怒気を孕んだ声。向き直った蓮の表情にナツは唇を噛んだ。

「あんな顔して微笑む癖にっ。」

蓮の表情が唖然となって、そして蕩けるような笑顔になる。

「妬いてくれたんだ?」

ナツは黙った。あれを嫉妬だと否定はしない。でも何がといえば、蓮について何も知らないのが腹立たしいのであって、あの女性をどうにかしたいとかそういう感覚ではなかった。

「同じ高校ってだけだよ。」
蓮はにこやかに微笑んでナツを抱きすくめる。
「最低…」
ナツの知らない蓮の過去。
その過去を知っている、それが面白くないのに。
それに蓮は気づかない。
蓮の貌が近づく。重ねる唇。迎えてしまう身体。
ナツはなげやりになった。



*****
波乱の夏休み?



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