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野茨の冠 1

シリーズものパラレルです。
前シリーズは解説と目次を参照下さい


****
大学の夏季休暇は長い。
そして休暇の前に試験がある。

「敦賀さん?」
蓮はぼんやりと図書館の机から、窓の外を見ていた。
声をかけた愛華は、反応のない蓮にどうしようかと思いながら、右隣の席に座る。
ゴソゴソとノートや筆記具を机に並べては蓮の方をチラチラ見るが、彼の視線は左側の窓の外に、注がれたまま。
、、、何を見てるんだろ?
愛華は3年次だが、図書館はあまり利用してない。旧校舎に同じく古い建造物であるこの図書館は、暗く静か過ぎて余程の事がなければ来ない。
試験期間中も友達との勉強はもっぱら駅前のチェーン系レストランかファストフード店、そんなところだ。
愛華が来たのは専ら「敦賀さんが半日は図書館にいる。」という情報に引き寄せられたからに他ならない。


「もういい加減諦めなよ。」
友達に何度云われてきたか。
高校からの片想い。
高1の時、電車で痴漢にあったのを助けてもらって、恋におちた。
同じ高校の2年生、有名人で、愛華は名前を知っていた。
毎朝、同じ電車で同じ車両の彼に、「おはようございます。」と言えるようになって、愛華の生活は一気に煌いたけれど、夏休みを終えた2学期からぱったり電車で会わなくなる。
・・・ストーカー除けだって!
電車に乗らない距離の所に引っ越したのだと噂できいた。
どうやって帰っているのか、誰も知らない。
名簿の住所は空家で、郵便物は転送されているということまで、愛華は知った。

「女に興味ないんじゃね?」
中学から一緒だった村雨が、もう目を覚ませよと事あるごとに愛華を引き留める。
実際、蓮が特定の女の子とつきあっているという噂は無かった。大学でも同じサークルの百瀬が噂になったぐらいで、性別問わず他人と深く付き合わない人というのは、愛華にもわかっている。
・・・真面目で優しい人だからよ!
腕っ節には自信のある村雨が、その筋から蓮が喧嘩相手を半殺しにしたとか、それで恐れられているとか、他人と付き合わないのは、家がヤバいからだとか、散々、愛華に聞かせても、愛華の想いは変わらない。
・・・優しいって私だけが知ってればいいんだもの!

なのに。

『北澤 ナツ』

ちょっと綺麗で頭が良い、それだけの癖に。
・・・敦賀さんまで誑かすことないじゃない。
蓮がナツを抱き寄せるのを、春から何度となく愛華は見てきた。
いつでもそうだ。ナツが蓮に、じゃない。蓮がナツに吸い寄せられるように。
・・・どおして?

「あのっ」
あの日、ゼミ室のある棟の入口で待ち伏せて、愛華は蓮に話しかけた。
サークルの幹事を引き継いだこと、できれば活動に参加してほしいこと。
「そう、がんばってね。」
ぽんと肩に置かれた手に心が震えた。
ただ、その時、愛華には棟に向かって楽し気に歩いてきたナツと貴島の姿が見えていた。
愛華の姿に表情を一瞬固まらせたナツに、
・・・勝った。
そう、愛華は思った。
ただ、声もかけずに去った二人に気を取られたのは、蓮で。
「じゃあ。」
話を続けようとした愛華は置き去りになった。
・・・どおして?

「また、敦賀なのかよっ!」
項垂れて歩く愛華に村雨が憤る。
「なんで村雨くんが怒るの?」
「アイツ見た目程いい奴じゃないって、何遍言ったらわかるんだよ。」
「村雨くんにはわかんないのよ。」
「一回優しくされたからって、入れ込み過ぎだろう?」
「村雨くん、酷いよ。」
愛華はおもわずこみ上げた涙に少し声を震わせる。
村雨がぐっと黙った。

そして、村雨が蓮に喧嘩を売ったらしいと耳にして、愛華はぎょっとした。
「村雨くんまで、ナツ狙いだって。」
愛華のグループはそういった情報を面白おかしく話す。
「うそっ。」
そう口にした愛華の心境は複雑だ。村雨は以前、愛華のために蓮に意見したことがあって、それで一悶着起こしている。村雨のおせっかいでもあるのだが、彼はどうにも蓮が気に入らないらしい。
「ウソじゃないわよぉ。例のボランティアだっけ?あのサークルの夏合宿だかなんかで、村雨くん楽しそうに計画たててたもの。」
「だって、それはあのサークルには琴南さんがいるから。」
愛華は村雨が演劇部に入ってきた奏江をいたく気に入っているのを知っている。演劇部の内情で彼女がサークルの方を主体にしたあたりから、村雨も柄にも無い子供向けのボランティアに熱心に入れ込んでいるのだ。
「まぁ、そこは知らないけど、その琴南さんとナツって仲がいいらしいわよ。」
「そうそ、敦賀さんナツと別れたらしいし。」
「え?」
「あ、それきいたきいた。Aゼミでもね、気を使ってるらしいよ。」
「はぁーん。それで敦賀さん、いづらいから、図書館なんだ。」
「図書館?」
「ほら、敦賀さん残るから大学にはきてるじゃない。けど、ゼミ室にはナツがいるしで、図書館で勉強してるらしいよ?」
「ナツがゼミ辞めりゃいいのにねぇ、図々しい。」
「敦賀さん、優しいから。」
愛華はそう言って微笑んだ。
「だよねぇ、そもそもあんな子に騙されたなんて、可哀想よ。」
「ほんとほんと〜」

そして、愛華は図書館でぼんやりしていた蓮を見つけたのだった。





*****
ナツちゃんの夏休みと書けば明るい響きなのにねぇ。
野茨の嵐とか、タイトルはもうそれはそれは悩みました。
そして、出だしが愛華さん視点という。
どうなっているんでしょうね〜←おいおい、、。

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野茨シリーズ、待っていました!

こんばんは。野茨シリーズ、待っていました!独特の空気感が好きなんです。ナツは歳の割には大人びているけれど、でも達観出来るほど大人でもない。大学入った頃の、急に色々なものに囲まれちゃった感じを思い出してしまいます。自分はまだ高校を出たばかりなのに先輩は、四年生ともなるとやたら現実的で、同じように考えられない自分が子供なのかと意味もなく落ち込んだことも。

このお話は大学という古くさい場所と伝統、でも大学一年生はまだフレッシュな子供という、いい?ギャップをバックにナツと蓮さまが楽しめる素晴らしいお話です!!
ありがとうございました。

Re: 野茨シリーズ、待っていました!

> Genki様

熱烈コメントとてもとても嬉しいです。ありがとうございます。
大学の1年と4年のギャップってほんと大きいですよね。
同窓会などで、先輩方にお会いすると、やはり上と思ってしまいます。普段の仕事中に同じ年齢差の方がいてもそこまでの年上感がないのに不思議です。

大学生で初めて迎える夏休み、前期というちょっと区切りの時に一体何を感じる二人なのか、回を重ねるごとに増えていく周辺の人間模様、楽しんでいただければ、こんなに嬉しいことはありません。
いつも素敵なコメントをありがとうございます!
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場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
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