野茨の縛17(最終回)

前話は解説と目次を参照下さい


****


ナツの戸惑いは腹立ちに繋がって、蓮を乱暴に振り切った。
「もう、やだ!」
「怒らないで。」
蓮が怒るよりはオロオロとしている。
喜ぶとでも思っていたのかと、ナツは更に腹立たしくなる。

「私のこと、見てない!」

ガチャン
ナツの家の玄関が開く。
心配そうな母の顔がそこから出てくる。

「見てるよ。君しか眼に入らないんだ。」
「やだっ!」
抱きしめようとした蓮を振りほどく。
「都合のいいようにしないで!」

ナツが玄関へ駆け込んでしまって、蓮は怪訝な顔をするナツの母親に頭を下げた。
こんな状況で、何も食い下がりようもない。
「お騒がせしてすみません。」
蓮のその言葉をきいて、彼女は軽く頭を下げてドアを閉めた。
仕方なしに蓮は車に戻る。
ナツの部屋に電気がついたのをみて、車のエンジンをかける。

ナツは違う。
ずっと一緒だ、とか、そんな言葉を喜ばない。
いままで蓮のまわりにいた女の子達とは違う。
「私だけ」
それを押し付けてこない。
それが寂しいのだと、蓮ははじめて知った。
自分が望む程に焦がれてはくれないのかと。


一目でその姿が焼き付いた。
凛とした何者をも寄せ付けないような綺麗な花。
「血を流してでも手折ってみせて。」
そう言われた気がした、あの言葉。

どんなに胸が裂けそうな思いをしても、腕の中に抱きとめれば、そんな記憶が霧散する。
抱きしめれば抱きしめる程、離れている寂しさが胸を焦がす。

「夏休みに一緒に来たらいい。」
父の何気ない言葉が、とびきりのプランに思えてしまったから。
まさか、怒るとは思わなかった。
・・見てない、って。
ナツが喜ぶと思っていたのだ。
「旅行」
それをとても楽しそうに語るナツに。
二人きりを期待するその気持ちを共有していると、蓮は嬉しかったのだ。

どうしたらいい?

辿り着いた部屋には、まだナツの香りが、気配が残る。
テーブルにおかれた、あやとりの本。
「ふたりのほうが、面白いの。」
ナツの可愛らしくて溶けそうな微笑み。
狙ったようには取ってくれない、あやとり。
それを楽しそうに、綺麗な指が手繰っていく。

思うようにならないから、はまっていく。

知りたいから、やり取りを繰り返す。

搦め捕った筈の縛をナツは笑って抜けていく。
「まだまだね。」
するりとおちた糸。

繋げた小指の糸。
「うんめい?」
ちくん
「またやりなおせばいいのよ。」
ちくん


「本当に君しか見えないんだ。」

蓮はベッドのシーツに手を伸ばす。
野茨の向こうに隠れてしまう姿。

自分に纏わり付いて、刺さる棘。
それでも、手を伸ばさずにはいられなくて。



・終・






*****
喧嘩して終了??
いや、これ、シリーズなので。
新章は仲直りというか、蓮さんやり直しです。





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面白かったー!

こんにちは。野茨シリーズ、面白いです。こういう恋もある、みたいな話ですね。そしてナツを手に入れたと思っていた蓮様がやっぱりダメダメなところが人間味があって不器用で愛せるキャラクターなのもいいです!続きが既に楽しみです。どうもありがとうございました!

Re: 面白かったー!

> genki様

コメントありがとうございます!
とても嬉しいです!
「こういう恋もある」もう、まさしくソレなのです!!
それを感じ取って頂けたなら、もう幸せで幸せで!!
人に普通に甘えることができない不器用な二人が、それぞれに考えて繰り出す行動と、周囲の思惑と。
しかも、学生であるという緩やかな時間の拘束。
高校とは違う、社会人とは違う、そんな感じも愉しんで書いています。

続きもまた、纏めて公開できるように練っていきますので!
また、よろしくお願いいたします。

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