野茨の縛11

前話は解説と目次を参照下さい


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ゼミ室の机の上は、おもちゃ箱をひっくり返したような様相。
剣玉やらヨーヨーやら、貴島が選んだのは、「懐かしい」といわれる類いのシンプルなおもちゃで。
ゼミ室にきた石橋がまた、嬉しそうにそれを手に遊び始めた。
ゼミの集合日ではないから、部室等の拠点がなく、ゼミ室で憩うような学生がぽつぽつと顔を出す。
「へえ、懐かしい。」
石橋のほかにも何人かが手にして、話に興じる。
器用に剣玉を操ったり、ヨーヨーの小技を披露するもの。
ナツはぼんやりとそれをみていた。
「北澤さんもやってみる?」
「見てる方が楽しいです。」
「へえ、ひょっとして、見た事なかった?」
「兄弟いないですし。」
「そっか〜そういうものかもねぇ。」

石橋や後から来たゼミ生が、ナツの顔色を気にしていないから、蓮はもうあそこにいないのだろうと、ナツはまたぼんやりと考えていた。
貴島はさっきのことを全く話題にしないでいる。
まるで何も見なかった、ように?
それほど仲が良いようでもない貴島に、蓮はナツとのことを話していたのかと、それもじんわりとナツの胸を締め付ける。貴島が賭けにキスと言ったのは、そういう相手だと蓮が話したからなのか。
・・・そういう相手

カチャン
ドアを開けた蓮が、びっくりしたようにゼミ室を見た。
「よう。懐かしいだろ〜こういうの。」
貴島がヨーヨーを蓮に投げるようにして、引いた。
慌ててよけようとした蓮は苦笑しただけで、あれこれと広げられたものを眺めている。
「どうしたの、これ。」
「今度さ、ボランティア行く時に持って行こうかなと。好きじゃん、ちっちゃい子ってさ。」
ちらりとナツは視線を感じて、顔を向ける。
ナツはあやとりの本を眺めて、指を動かしていた。
来客が帰った後に、教授が他の道具まで引っ張りだしてきて、ナツに勧めたのだ。
やれなくはないが、ちゃんと説明を読むとはまりだす。


蓮は特に構えもせずにナツの横に座ると、その指が紐を絡めて動くのを眺めた。
「そこに紐ありますよ。」
ナツはそう言ってみたのだが、「不器用だから、遠慮するよ。」そういって、ただ見ている。
・・・嘘吐き
親指をくぐらせ、中指を抜き、、
赤い紐がスルスルと形を描いては、変化する。
「器用なんだね。」
ナツは答えない。
黙々と指を動かす。
じわじわと締め上げられて息が苦しい。
・・・嘘吐き

「おいおい、ここは勉強の場だ!」
入ってきた社がぎっと貴島を見た。
「サークルの荷物置き場にするなっ。」
「はいはい、すいません!」
貴島が苦笑する。
「きょうじゅ〜社さんが怒ってますが?」
開いていた教授室のドアの方に貴島が声をかける。
「こっちに来ていいぞ〜この知恵の輪がな、結構な難易度なんだ。」
暢気な教授の声がして、貴島が笑い、社が眼を据わらせた。

「これ、お借りしてもいいですか?ちょっと家でもやってみたいです。」
教授室に移るべく、がさごそと荷物をまとめる貴島にナツは声をかけた。
「いいよいいよ〜って俺のじゃないけど、なっちゃん部員だし。」
「次の訪問のときにでもさ、披露してよ。」
「はーい。」
ナツが笑顔をつくる。バッグに本と紐をしまう。
「あれ、北澤さん帰るの?」
石橋が声をかけてくる。
「うん、まだ本調子ではないし。」
貴島に会わなかったら、大学には来なかったし、、
あんな所に出くわさなかったのに。

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