野茨の縛9

前話は解説と目次を参照下さい


**

「北澤さん、そんな奴についてちゃダメだ。」
凄んだ表情を少し緩めた村雨が、ナツに話しかける。
・・そんな奴?
そういえば、村雨はナツの名字は知っていた。
奏江の話からも、蓮とナツは学内で有名らしい。

そもそもこの旧校舎のノイバラの前を学生は通らない。
・・わざわざ、でなければ。
だから、ユミカにあった時も驚いたんだ。
・・ここがまるで、秘密の場所のように思っていたから。
だから、石橋にも教えてみようとしたのだ。
・・蓮にとってこの場所が特別かどうかを知りたくて。

そういえば、蓮はもうこの大学で3年すごしていて、毎年ノイバラが咲くのを見ているといった。
1年の時に気づいて、気にかけてたと。
どうして気づいたんだろう?

トン
蓮に後ろへとナツは押されて、よろめく。
その勢いで、蓮から、離れた。

「無粋だ。」
蓮の声が冷気を孕んでいる。
「ハン、無粋はそっちだろ。」
村雨が顎をしゃくる。

がっ
そんな音がして、村雨が蓮の懐へ飛び込んだように見えた。
しゃっ
風を切るような音。

カツ、カツ、カツ
殊更にミュールのヒール音を響かせて、ナツは2人から離れて歩き出した。
「ばかみたい。」

2人の過去に因縁があろうとなかろうと、ナツには面白い状況ではなかった。
「そんな奴」
そう言える程、村雨は蓮の何を知っているというのか、ナツの何を知っているのか。
それが面白く無かった。
奏江の村雨をみる「複雑な顔」は、それをも知っていたのか、とすら思う。
2人が殴ろうが、殴られまいが、関心がなかった。
ただ、面白く無い。
まるで、蚊帳の外。
腹が立った。


携帯は便利なツールだと思う。
ゼミにも、蓮にも、「体調が悪いので、お休みします。」そうメールを送った。
誰の顔も、誰の話も聞きたく無い。
そんなときにもってこいだった。
連絡すれば、以前のように蓮が行動にでることもない。

自室に引きこもって、ベッドに転がった。
「声だけでも、きかせて。」
返ってきた蓮のメールに、ばかみたい、とナツは呟く。
声だけでもと言った電話で、きっと、村雨とどういう知り合いなのかと聞くんだろう。
聞かなくても、謝るのかもしれない。
ナツが知りたいのは蓮の事だと、蓮は気が付くのだろうか。

身体しか知らない。
そもそも、それだって、妙に手慣れているから、過去に何人かの女がいたんだと思う。
あの顔を、あの声を、何人が知っているのかと、腹が立った。
・・好きなんだ。
何人に、それを耳許で囁いてきたのか。
「吐きそう」
メッセージを、蓮に送った。

「ごめん。ゆっくり休んで。」
返ってきたメッセージに、ナツは、また、ばかみたいと呟いた。

ばか

こんな気持ちを持て余す自分に。
こんな自分は知らない。

枕を抱えて、泣いた。











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