野茨の縛6

前話は解説と目次を参照下さい


「あなた、首に何かあるの?」
奏江の何気ない一言に、ナツは一瞬固まる。
日曜日、地元の駅で待ち合わせて、乗り込んだ電車。
その日は天気も良く、8時という朝の時間でも、身体を少し動かせば汗ばむほどだ。
そう言った奏江はタンクトップに薄手のパーカー姿。
ナツはモックタートルシャツにやはり薄手のパーカーを羽織っていた。

「ちょっとやきたくないというか。」
「あ、わかるわかる。UVプロテクターは私も考えたのよね。」
「あの黒い、いかにもUVものですというのはちょっとと思って。」
んーと奏江が考えるふうになる。

「私、キスマークでも隠してると思ってたんだけど?」
にっとでもいうような悪戯っぽい笑顔で奏江が笑う。
「琴南さん?」
「だって、今日も大変だったんじゃないの?敦賀さん、独占欲つよそう。」
ぷっ
ナツは吹き出してしまった。
「吹き出す事ないじゃない、もーっ。」
「すいません、そんなこと言う人珍しいから。」
蓮に関して、異性として興味がないという、あからさまな奏江の評価。
「そりゃね、うちの兄貴達と同じ高校だったから、話は聞いてるし。」
「琴南さん、お兄さんがいるんですか?」
「そう、2人もいるわよ、姉も弟もまあ、馬鹿みたいな大家族よ、うち。」

高校生の、蓮。
それはナツが想像しなかった世界。
最初からあんなじゃなかったんだろうけど。


「おー奏江ちゃん来た来た〜!」
福祉施設玄関前に集まっていた3人ほどの中から、体格のいい男が奏江に向かって手を振ってきた。
「、、結局きてるし。」
奏江のぼやくような声。
「え・」
「あのね、あの人3年の村雨さん。うちのサークルじゃないんだけど。」
「?」
奏江の表情からナツは「複雑」しか読み取れない。
「演劇部の人でね、どういうわけか、手伝いにきてくれてるのよ。」
苦虫を潰したような顔。

「なになに、奏江ちゃん、北澤さんと親しいんだ!」
2人の前に立った村雨は驚いたように奏江を見た。
「はじめまして、おれ、村雨泰来っての。」
「北澤ナツです。」
「へえ、下の名前、ナツ。なんだ。よろしく。」
運動着のパンツのポケットに手を突っ込んで、顎を少しだすようにしてぴょんと頭を下げた村雨に、ナツはいつものきっちりのお辞儀をする。
ナツがお辞儀から顔を起こした時、目の前の村雨が真っ赤になっていた。
いつのまにか、ポケットから両手がでて、ふよふよと彷徨っている。
「あの?」
「いや、えと、、よろしく。」
村雨がくるっと踵をかえして戻っていく。
「行きましょ。」
奏江の声にナツも施設の門をくぐった。


わらわらと囲んでくる子供達を、奏江が慣れたようにあしらっていく。
電車内でみていたような表情ではなくて、顔全体を使うように大きく笑い、大きく怒る。
大きな声というのではないのに、ちゃんと賑やかな子供達の中に伝わる声。
戸惑っていたナツの手を小さな手が掴んだ。
「おねーちゃん。」
まだ幼稚園ぐらいなのかな、見上げてきた男の子にナツはかがみこんで「なあに?」ときく。
「て、つないで。」
「うん。」
差し出された手は小さく、ナツの人差し指を握れば目一杯で、ナツはその手を包むようにした。
そうやって、賑やかに遊ぶ子供達を見るようなところに佇む。
その様子に、職員の女性が声をかけてきた。
「あら、レンくん良かったわね。」

ナツは少し驚いた。
「よかったら、その子、レンくんと一緒にいてあげてください。珍しい事なんです。」
こそりと小さくその女性がナツに耳打ちした。
「はい。」
ぎゅうっと握る小さな手。

結局、ナツは奏江達が奮闘する中、レンというその子とホールの隅っこに座って、何をするでもなく、ただみんなの様子を見ていた。その子がひたすら手を握り続けるから。

さっき想像した、高校生の蓮が、もっと幼くなって、ナツの横に座っているような気がした。
「みんな」と一緒にいる姿より、こうやって、「みんな」を見ていたという姿のほうが、彼に近い気がする。
・・逃げないで。
蓮がよく口にする言葉。
ナツは逃げられないと思うのに。
何を蓮は望んでいるんだろう?

知りたい。
ナツは、蓮を知りたいと、思った。






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6話まで一気読み!

互いにある意味必死なのだけど、でも、相手に種類は違うけど恐怖というものを味わせてしまう二人。

蓮さんのストカの酷さに、流石にナッちゃんが心配になってしまいますが。

只怯えるだけでない彼女が蓮さんを上手く操縦できるようになる日は来るのか。楽しみにしてます。

Re: 6話まで一気読み!

> 魔人様

コメントありがとうございます!
一気読み、お疲れ様です、。棘よりもある意味、読みづらい話かと思いますので、一層、ありがとうございますと重ねてしまいます。

ストーカーって自覚が無いのが怖いんですよね。やってる本人は本当に心配してるわけです。ナツがどう思うかってことを想像してない所が怖さに繋がるわけですが。
一途な恋の裏側、の怖さでしょうかね。
安心できるエンディングを迎えられますようにと、書いてる人も心臓バクバクです!
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場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
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