野茨の縛1

前話は解説と目次を参照下さい
新章です。縛(いましめ)



「蓮、背中、、。」
社に言われて、蓮は背に何かついているのかと訝しんだ。
「シャツに血が滲んでる。そんなとこ怪我したのか?」
「え、、。」
社の前でその傷を見せるわけにもいかず、医務室に行きます、としおらしげに答えて、立ち上がった。

初夏。
時に汗ばむほどの陽気になって、衣更えで、薄手の衣服になる。
白シャツにジーンズ。
そう衣装持ちでは無い蓮の服装のパターンは決まっていた。着飾って出て行くような趣味もないから、どちらかといえば、無難で着心地の良い服を選んではいる。身長がずば抜けて高いこともあって、米軍基地近い洋服屋か、気に入った海外ブランドの直営店ぐらいしかサイズの合う服が置いてない。
ナツの買い物について行くようになって、多少意識はするものの、サイズの壁に落胆することの方が多い。

社の指摘にしまったとは思った。
医務室よりは着替えだと自宅に足を向ける。
ナツの手入れした爪はスクエアではなくて、オーバルで、その形は皮膚に食い込んで、裂くのだ。
そうやって付けられた痕を愛おしむ蓮でもあって、バスルームの鏡の前で新たな傷の確認をしては、絶頂に仰け反るナツの淫蕩な表情を思い出して笑みを溢す。
ピリピリと傷に沁みる痛みすら愛おしい。
躯を重ね交えるごとに、ナツの悦びが深くなるのが蓮にはわかる。
蓮にしがみついて食い込む指先。
その痕が滲ませる血液。

白いシャツは、ナシだと、苦笑する。
血液の滲みは簡単には落ちない。
背中にひけらかすような滲みをつけて歩き回れば、ナツが部屋に寄り付かなくなる。
それだけは勘弁してほしい。
許されるなら朝まで毎日抱き締めていたいのだ。
ただ「品行方正な娘」の「尊敬できる素敵な先輩」であるために、門限厳守で家に送る。
休講となれば、日中からその身体を貪られているとは、あの両親は知らない。

5月の予備試験は流石に合格とはいかなかった。
ほぼ院生に気持ちは傾いていたし、両親はそれでいいと進学を承認してくれた。
教授陣からも進学に内諾を得ていて、所定の試験と手続きを残すのみ。
ナツの講義の時間はゼミ室か図書館で勉強して過ごす。
「お前が将来を考えるようになって、父さんは嬉しいよ。」
受験資格のためだけではなくて、学びたいことがあると報告した蓮に、L.A.にいる父親は嬉しそうに答えた。
「恋人でもできたか?」
PC画面に映る、にやりと笑う顔。蓮は答えなかった。

「恋人」その単語が持つような、甘くて優しい雰囲気はそぐわない。
「ご同類?共犯?別になんだっていいわ。」
ナツが淡々という。
甘い顔はほんの一瞬、欲情に蕩けた顔で蓮をせがむ、その時にしか、見れない。
「好き」「愛してる」と、蓮が降るように浴びせても、ナツはそんな言葉を返してはくれない。

「とても綺麗だ。」
そう言って抱きしめれば、目の淵をほんのりと染めて、ぎゅうと細い腕が蓮の背中に這う。

白い花をみつめて「綺麗」と唄うように言うあの顔で、見てくれたらいいのに。

蓮は濃紺のTシャツに着替え、羽織るシャツを探しながら、
このまま大学に戻るより、ゼミの終わる頃にナツを迎えに行こう、と思いついた。
着替えて戻れば、社に「わざわざ着替えて戻って来たんだ?」とからかわれそうで。

背中の傷が少し疼いた。




*****
はい、新章です。
蓮さんの背景ちらり。(久遠はいません。)

それにしても、血が滲むってね、、ナツちゃーん。
蓮さんが俳優でモデルさんだったら無理なこと。
いや、欲求と理性の狭間で懊悩してもいいけど。



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