スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

web拍手 by FC2

野茨の棘9(最終回)

前話は解説と目次を参照下さい



緊張する石橋と入ったゼミ室に、蓮の姿はなかった。
「あ、蓮なら、調子悪いって。」
社がナツを見て、そう声をかけてきた。
石橋に聞こえないようになのか、小声で、「調子見に行ってやってね。」と社は付け加える。
ナツは苦笑した。
律儀に帰ることを、社に伝言したのかと思うとおかしかった。
社はあの傷をなんだと思ったんだろう。
少しはあの綺麗な顔が腫れたのなら、いい気味とナツは胸の裡でつぶやいた。
・・鍵は、かえそう。

大学にほど近いマンション。
カードキーと暗証番号で入る玄関。
ナツは部屋番号を押してインタホンを鳴らす。
「はい?」
「北澤です、鍵をお返ししたくて。」
「部屋まで来てくれないかな。」
インタホンが切れて、入口の自動ドアが開いた。
小さく息を吐く。

部屋のドアの前でまたインタホンを押す。
「入ってくれば?」
大学と部屋とでは、言葉遣いまでも変わる。
こんなマンションで一人暮らしなんて、どこまでお坊ちゃんなんだろうとも思う。
ファミリー用の間取りに一人。
家族が転勤で不在という気配は微塵もない。
アルバイトをしているようにも見えない。
あくせくしない、その雰囲気を気に入っていたけど。
部屋に入ったら、誰かの恨み辛みを聞かされるのだろうと思うと気が滅入る。
ただ、逃げる気はない。

ガチャ
引いて開けたドアの先。
壁に背をもたれた蓮の姿。
「訳がわからないんだけど?」
不機嫌そのものの声。
「鍵お返しします。申し訳ないですけど、暗証番号も変えて下さい。忘れる努力はしますけど、疑われるのはいやなので。」
「だから、なんで?」
蓮が壁から身体を起こして、ナツの腕を掴んだ。
ガチャン
ナツの背後で鍵のかかる音がする。

「石橋くんだっけ?彼を選ぶの?」
「選ぶとか、わかりません。」
「まさか、ユミカって子の事で妬いてくれたの?」
「どこまで、とぼけて揶揄ったら気が収まるんですか?」
「揶揄う?俺が?」
ぐいっと腕を引っ張られて、ナツは身体のバランスを崩した。
脱ぐつもりのなかったヒールが引っかかって。
「痛い!」
「痛いのはこっちだよ。」
片足だけ脱げたヒールを玄関にのこして、ナツは身体を引きずられる。
どさっと絨毯の上に放り出される。

「いっそその綺麗な顔に、傷をつけてあげようか?」
ナツの上に跨がってしゃがんだ蓮は小さなその顎を片手で掴む。
「他の誰もが振り向く事ができない位に。」

「どうとでも。」
ナツは瞼を強く閉じた。

そのままどれほど時間がたっただろう。

ぽたん

ナツの頬に生暖かいものが落ちて、ナツは瞼を開けた。
真近に迫った蓮が涙をおとしている。

「どうしようもなく、好きなんだ。」

「ね、俺だけを好きだと言って。」

瞬きもできずにナツは蓮を見つめる。

「ばかみたい。」

そう呟いたナツの唇が塞がれる。

ひらひらと白い花が咲いている。
綺麗なその花には幾多も棘があるのに。
つい手を伸ばしてしまう。

花ばかりに目を奪われて、
どんどんと絡まりつくその棘に、
気づいた時には
全身囚われてしまうんだ。



・了・





*****
誤解を解くとか理由を知るとか、
全くなしかい!

ナツさん無自覚ですけど、らしくないことをちらほらしていて、恋に堕ちちゃったんだね、です。これでも。

はー、書く方は大盛り上がりで一気にあげてしまいました。
いやもう、病んでる設定大好きで。

そういや出てくると予告されていた村雨くんとか、その他?
だってまだこれナツちゃん1年生の5月ですよ。
シリーズだから、別タイトルでまた、ちらほら、やってきます。
って、今晩とか明日とかに始めてしまいそうですけどね。
・・・心優しい方々の呆れ顔が、、
すみません!


関連記事
web拍手 by FC2

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

終わり…?

とりあえず?お疲れ様でした。

本日まとめて野茨シリーズ一気読み!
仄暗い設定は病んでる時じゃないと自分じゃ書けないので楽しませていただきました。

棘を抜いた後もずっと残る痛みのようなナツに、絡みつきじわじわと締め上げ棘を食い込ませていく蓮。逆も然り。
ハッピーエンドにはほど遠い、ギリギリの緊張感のあるお話で満足ー!!
続くの…かはmoka様次第ですがゆみーのん、このお話好きです。もう一回読んできますー(笑)。

Re: 終わり…?

> ゆみーのん様

コメントありがとうございます!
しかも、一気読み、、お疲れ様でした。

好き!頂きましてありがとうございますー
ギリギリの緊張感とか、もう、ゆみーのんさんに褒められたら、天高く舞ってしまいます!!

きっと村雨君が空回りしていっそう闇の深くなる続きシリーズが、、。

これは序章でしょ??

こんばんわ。別タイトルでの続き?もしくはシリーズ第二弾、ぜひ読みたいです‼︎今回のお話はナツ、大学一年、蓮様とのまさかのおつきあい開始編、みたいな感じで、序章ですよね??そういえば、序章の前に高三3月編もあったんでしたね。←正確には、もっと前もあった…か。

大学ってのっぺりと四年間が過ぎていくように見えて、二年、三年、四年と意外と生活が変わってくる局面があります。図書館での試験勉強や学食で人と待ち合わせたり、大学近くのカフェでおしゃべりしたり、教授室での教授とのやりとり、バイトで他の大学の学生に会う、などなど多様な場面が存在しています。その時々のナツが如何にナツらしく生きているのか見てみたいと思います。蓮様は振り回されっぱなしだと思いますけれども。

人を操ることにかけては天性の才能を持つナツさん、高校時代以上の刺激を求めて周りにも魅力を振りまいていく、なんて素敵ですね。勝手に色々言ってしまいましたが、とにかく楽しみにしていますのでよろしくお願いします。どうもありがとうございました。

Re: これは序章でしょ??

> Genki様

コメントありがとうございます。
「野茨」でも後押ししてくださって、今回も本当に嬉しいです。
重ねて、ありがとうございます。
本当に、学生時代って振り返ると毎年違うのですよね。
上級生が卒業し、新入生が入って来て、人が入れ替わってしまいますし。

バイト、、蓮さん許さないかしら。いま、ちらりと家庭教師とか妄想がかすめて行きました。
新章も早速はじめてしまいましたので、お楽しみ頂ければ嬉しいです!
message
場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
最新記事
counter
カテゴリ
flyaway news twitter
ブログとHPの更新状況とちょっと呟き フォローはご自由にどうぞ!(フォロー返しはあまりないかも)
Link
上部のサイト様は相互リンクいただいてます。 マナー携帯でご訪問くださいませ。 下部のサイト様は大好きサイト様で、リンクフリーに甘えさせていただいてます!!
検索フォーム
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。