野茨の棘4

前話は解説と目次を参照下さい。




窓から見える風景は限られている。
ゼミ室は3階、大木が多いこのキャンパスにあって、窓からの風景はただその緑を愉しむもの。
大木は大学の歴史の古さを物語り、「伝統」とかそういったものへのプライドを育てる。
この窓からは、この建物にむかってくる道を歩く人が、見える。

ナツが来た。
「真面目で美人、ね。」
蓮は彼女を窓越しに見下ろして、苦笑をもらした。
ナツが両親までも騙していると、蓮は知っている。
あの両親は高校で自慢の娘が「悪魔」と言われていたとは夢だに思わないだろう。

何にも頑張り屋さんだから、成績はいつも良くて。
綺麗な物が大好きで、おしゃれも手を抜かないし、だから妬まれたりするのね。
お友達がいないことだけが心配だったけれど、頭も良くて美人じゃ、ちょっと仕方ないと思ってましたの。
ほどほど、が愛嬌なのかもしれませんけど、、あの、ナツはいい子なんですよ。

送っていったナツの家で、母親は少し頬をそめてそう言った。
「これからも、よろしくお願いしますね。」
ちょうど帰宅した父親もそろって、にこにこと蓮に挨拶した。

「あの人達、それでしあわせなんだもの。知らなくったっていいんじゃない?」
クスクスと蓮の一人暮らしの部屋で、ソファーに転がったナツが嗤う。
「俺は、親への安心材料なんだ?」
テーブルで本を広げていた蓮はナツの綺麗な脚が宙に伸ばされたのを見た。
「そう、とても理想的。」
ふふふと笑う顔はまるであどけない少女にもなる。
「あの日なんて、母が馬鹿みたいにはしゃいでたもの。あんなカッコいい先輩がいるなんて素敵ね!って。」
「送らせたのは、それが理由?」
ちくり

「見た目じゃなくてね、頭が凄くいいのって付け加えちゃった。」
「俺といるのは、それが理由?」
ちくり

「そう。っていったら怒るんでしょう?」
「さあね。」
ちくり

「なんだ、つまらない。」
「怒らせたいの?」
ちくり

「さあね。」
クスっとナツがわらう。
「だって、蓮もご同類でしょう?」

「あんな性悪女に引っかかったのは、敦賀くんが真面目で優しい人だからよね。」
あははとクッションを抱えて、誰の口まねか蓮にもハッキリとわかるようにナツがいう。
「女に興味ないのかと思ったら、なっちゃんみたいのがタイプとはね。」
「真面目で美人なんて、良く引き当てたよな。」

「ねえ、何がほんとう?」
胸の奥にささって抜けない棘が、血を流す。
「君を綺麗だと思っているのは、ほんとうだよ。」


「あ、社さん。この本、面白かったです。ありがとうございました。」
気づけばナツがゼミ室で社と話をしていた。
小さな可愛らしい紙袋を社が受け取って、少し赤くなっている。
「やだな、貸した位で大げさだよ。」
「あ、そうなんですね。私、こういう風に貸して頂いたりすることがなくって。」
あの、嬉しかったので。とナツがシュンと下を向く。
「ややや、えと、いや、俺も嬉しいよ、喜んでもらえたなら良かった訳だし!」
「ほんとですか?」
ちろりと社を伺うように見たナツに、社が真っ赤になって後じさる。
「よかったです!また、教えて下さいね。」
「う、ん。」
社が歯切れ悪く、蓮を見た。そして、それにつられたようにナツも蓮をみる。


「敦賀さん、こんにちは!」
そのわざとらしい笑顔ですら、君は綺麗だ。






*****
痛いっ。痛すぎます。
ここまで酷いの?とお叱りも承知。
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