野茨の君

パラレル。
『野茨』の前のお話。

桃無しなので限定ないですけど、微笑ましさ皆無。
一種独特な世界観になっていたらいいな、という感じです。






春のキャンパスは、賑やかになる。
新入生が真面目に通ってくるから。
その新入生をめぐって、部活やらサークルやら、いつもは大学に来ない連中も来るから。

蓮はそんな賑やかなキャンパスの外れ、煉瓦造りの古い校舎に足を向けた。
所属するゼミ室がその校舎の隣の建物なのもある。

「敦賀くん!」
ぱたぱたと追いかけてきた女性の声に、蓮は小さくため息をついて振り返る。
「なんでしょう?」
「あの、新歓も落ち着いたから、サークルに顔だしてもらえないかな、と。」
こちらが苦笑いするのをわかっていて、逸美が声をかけてきたのは蓮にもわかる。逸美の立場もあるしなと、あまり邪険にはできない。
「新歓じゃない、といっても、なんというか。」
ディベート・サークルなんてお固いサークルなのに、昨春は蓮が新入生の勧誘に立ったために、蓮目当てで随分と女の子が入会してしまったのだ。もともとかなり真面目な人間しかいないサークルのメンバーは、カラーの異なる彼女達の扱いに困り果ててた。蓮も彼女達が面倒くさいせいか出席回数が減って、いまや幽霊部員と成り果てている。

「まあ、そうなんだけど、あの中からちゃんと活動してくれる子も残ったわけだし。」
「出ないと拙いですか?」
履歴書にサークル活動などの課外活動は必須だと、ただその為に入ったようなものだ。
存外真面目な活動にちょっと熱心だった時期もあったが、2年の春の新歓がそれで、もう懲りた。
「まあ、無理にとは言わないけど、、敦賀くん位のレベルじゃないと私もつまらなくて。」
「また、おだてる。百瀬さんにはかないませんよ。」
帰国子女だという彼女は「ディベート」が馴染んでいる。
蓮も彼女と相対すのは面白いと思ってはいるが、とかく外野が面倒なのだ。
「ごめんなさいね。それだけ。」
逸美はさらりと蓮に手を振った。
「すみません。」
蓮はなんとなく、謝ってしまう。

もう3年、司法試験(注)にも本腰いれるつもりだし、多少就職も視野にはいれておきたかった。
できるだけ、面倒は避けたいのが本心だ。
ゼミ室へと歩みだす。

ふんわりと風がふいて、花の薫りがかすめた。

そうだった。
この時期、煉瓦造りの校舎の南の壁一面にノイバラが咲く。
入学してそれを見つけた時、なにか心が騒いだ。
艶のない濃い緑の葉をバックに平たい白い花が、一斉に咲く様が、綺麗だと思った。
それを見ようと、思っていた。


社さん?

その花の壁の前に立っていたのは院生の社で、彼の前には花に見蕩れているらしい少女の姿。
何か社が話かけたようで、彼女が社にふりむいた。

綺麗な子だな。

ああ、そうか、姿勢がいいんだな。
細い首筋がしゃんとしていて、すらっと制服のスカートから伸びた脚は膝を変な方向に曲げてもない。
高校の制服か。

社に声をかけようか、と蓮は歩みをすすめた。

「綺麗なものは血を流してでも愛でるもの。」
艶やかな唇が零した言葉にズキンと胸が掴まれる。

「君は文学部を受けるの?」
社がそう切り返した。
「いえ、法学部です。」
「へえ、俺、法学部の院生の社っていうんだ、来年からよろしくね。」
チリっ
蓮の胸に刺さる棘。
いつものように、人懐こい笑顔を浮かべる社が、忌々しいようで。

「北澤ナツ、です。」
ふっと鼻先で笑うような笑顔が答えた。
「えっと、社、センパイ?」
少し首を傾けてクスリと嗤う顔は、人を小馬鹿にしているようなのに、
鮮やかに胸に焼き付いた。

「ありがとうございました。」
頭をぺこりと下げるだけかと思ったら、しっかりと腰から綺麗なお辞儀をして、彼女は背を向けた。

かつん、かつん。
そんな音が聞こえそうなほど、まるでモデルが歩いていくかのような、流れるような歩き方。


「おっ、蓮。お前も見に来たか。」
社が蓮に気がついて声をかけても、蓮は「ナツ」の後ろ姿を追ってしまっていた。
「おい?」
手を翳されて、蓮は一瞬目を閉じて、社に向き直る。
「な〜んだ?お前、気になる?」
「いや、お知り合いですか?」
蓮は当たり障りのない笑顔を浮かべる。
「いいや、全く。大学の見学らしいよ。あんな子、ウチにきたら大騒ぎだな。」
ふうと社がため息をつく。
「大騒ぎって。」
「・・あ、お前は見慣れてんのかもしれないけど、えっらく綺麗な子だったからな。」
「ああ、そうですね。」
そう言いながら、蓮は壁のノイバラを見上げる。
スッキリと装飾のない潔癖というような美しさ。
「そうですねって。」
驚いたように社が目を見開いて、蓮を見た。

まるで、野茨のような君。
手折るには、その棘でどれだけ傷つくのか。

棘がわかっているのに、手を、伸ばす。
それを自分のものにしたくて。




・了・




(注)司法試験予備試験のこと。それと法科大学院受験と両方です。
*****
どっぷり〜
自己満足の世界です〜


この後、蓮さんストーカーですから!
・・1年かけて、ナツちゃんを探し出すんですよ、、。
制服と名前は判ってますからね。



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にゃー!

おもしろーーい!!

今から本編強奪許可あり作に移動ですが、こちらも名前だけは紹介オッケーでしょうか?(リンクなし)

Re: にゃー!

> 魔人様

ありがとうございます。
よろしかったら、こちらもどうぞもらっていってやってくださいまし。
あの限定だけだと、怖いだけ、かもですし。
いや、こっちから読む方が余計に怖いかもですが。

おもしろいといっていただけて、ちょっとホッとしてます。はい。

なんと!

有り難い!!

嬉しいです。

有難うございます!今から早速お披露目させていただきますね!!

m(_ _ )m

Re: なんと!

> 魔人様

こちらこそ、ありがとうございます!
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場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
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