人魚姫のゆめ 6

魔人様の「噂の人魚フェア」参加作です。

パラレルです

書くそばから公開してますが、
予告より長いお話になってます、、、。




「ああ、そうだね。」
ばあやが穏やかな顔でいいます。
「泡になった人魚姫がいるねぇ。」


「これ、あんたの首飾りでしょう?」
カナエの声にキョーコはぼんやりそちらを見た。
ピンク色の宝石
「どうしたの?お腹でも痛いの?」
元気のないキョーコにカナエは近寄り、顔を覗き込んだ。
「ううん。」
あの満月の夜以来、キョーコがふさぎ込んでいたのをカナエは知っている。

ピンク色の宝石にはキョーコが下げていた時とは違うものがついていた。
ちゃんと重石をつけて、海底に沈むように。

『キョーコに久遠の誓いを』

宝石の横に付けられた、金のプレートにはそう彫金されていた。

「ねえ、相手がいるなら、戻りなさいよ。」
カナエがぶっきらぼうにキョーコに言った。
キョーコがそのプレートを見たまま、ぴくりとも動かないから。
ぽろぽろと溢れていく白い珠。
海の中で流す涙は、そうやって綺麗な結晶を作る。

・・・泣きっぱなしだったわけね。
キョーコの「家」から、白い珠が溢れ出している。
・・・話したくなるまで、放っておこう。



「は?なんて言った??」
ユキヒトはレンの顔をまじまじと見つめた。
「船で暮らそうと思う。」
ぎこちなく笑う顔。それでも、表情がでてきたことをユキヒトは喜んでいたが。
「それは、旅にでるってことか?」
「ちがうよ。ここを離れるつもりはないから。」
暇さえあれば、海ばかりみている友人。
そこまで魅せられているのかと、ユキヒトはため息をつく。
「この屋敷だと、女達が寄ってくるからか?」
「まあ、それもあるけど。」
のんびりした、昔のような返答にユキヒトは苦笑いした。
「まあ、いいさ。シケや嵐の時はここにくればいいのだし。」
「いや、それを待ってるんだ。そうじゃないと、海に落ちれないから。」
和やかにとんでもないことを言い出したレンに、ユキヒトが絶句する。

「死にたい、のか?」

「いいや?」

レンが窓の外に広がる海を眺めている。

「まさか、おまえ、人魚に会おうとか思ってないよな?」
自分が以前に零した言葉。
「人魚と話せるなら、、知らないかって。」

「思ってるよ。歌声に誘われて、落ちていけばいいらしいんだ。」

「冗談じゃない!」
ユキヒトは激昂した。
「そんな言い伝えみたいな話、本気にするのか?」

「・・・見たんだ。」

「まさか、お前、毎晩海岸にいくのは。」
「そうだよ、人魚に会う為だ。」
レンは、ユキヒトにキョーコを見たとは言えなかった。
もし、違ったら、いや、そうだったとしても、ユキヒトには受け入れられないだろうと。
「勝手にしろっ!」
ユキヒトは、自分の発言を悔いていた。
まだ、キョーコを追い求めているのかと。

・・ねえ、キョーコ。お前が天使か妖精になっているんだったら、あいつを救ってやってくれ!


「もー、全く忌々しい!」
カナエが海面を見上げて毒づいた。
沖を漂うだけの船が、お気に入りの岩場をまるで見張るように浮いている。
「少しでも海が荒れたら、船を粉々にしてやるのに!」
機嫌の悪いカナエに、キョーコは戸惑うばかり。

「乗っているのは随分と色男だわよ。歌って堕としてやりましょうよ〜」
他の人魚達がそういってくるのは当然で。
「だめだめだめ〜」
キョーコが必死にそんな人魚達をなだめて廻り、カナエの機嫌はどんどん悪くなる。
「もうそれだったら、アンタが、その人に、ここからどいてってお願いしてよ。」
「ええっ」
キョーコが大きな目をまた白い粒でいっぱいにするのを見て、カナエがどれだけ肩を落としたか。

船からは毎日何かが重石をつけて落ちてくる。
それは、キョーコが好きな花だったり、好きな色の宝石だったり、好きなものを象った細工物だったり。
あまりのことに、キョーコは何か返さねばと思うようになって、クオンが好きだと言っていた色の宝石に細工を施して、浮きをつけて海面に放った。

その翌日からはとうとうクオンが海に飛び込んできた。
日に焼けて、港町の男達と遜色ないほど逞しい身体を、キョーコは海底の岩場からただ見つめた。
船の錨のロープをたぐりながら、深く潜ってこようとする姿。
・・・どうして。
呼吸の限界に浮かべる悔しそうな表情。
泳ぎ寄っていきたい気持ちとこの姿を知られたくない思い。


「お願いよ。月光浴ができないとお肌によくないの。」
カナエは逆に自分も同じように泣き落としてみようとした。
「う。。判ったわ。お願いしてみる。」
キョーコが顔を真っ赤にして手に握りこぶしを作ったのをみて、カナエは驚いた。
明日は満月、干潮で岩場が海面に出る機会。


コン


船をノックするかのような音にレンはがばっと身体を起こした。
はたして、外に出れば、海面にはキョーコの姿があって。

船縁からレンはキョーコに手を伸ばした。
キョーコは海面から肩上しか出さない姿のまま首を振った。

「あの、、お願いがあって。」

挨拶も何もなく、キョーコは切り出した。

「明日の夜。ここに居ないで欲しいのです。」

「いやだよ。せっかくやっと会えたんだ。」
いまにも飛び込んできそうなレンに、キョーコは距離を取る。
「みんな、月光を浴びないといけないんです。」
「俺がいたって関係ないよ。」
「人魚の姿をみたら、海底に堕ちなくてはいけないんです。」
「いいよ、願ったり叶ったりだから。」
「そんなの、嫌だから、、お願いしているんです。」


「ああ、それじゃあ、こうしよう。」
レンはなにかとても嬉しかった。

「それを聞いてくれたら、ココから明日の夜は離れるよ。」

「じゃあ、約束だよ。」
レンはそう言って、船の中にもどってしまう。

「なっっ。」
キョーコは海面で困った顔のまましばらく浮いていたが、頬を膨らませて、海底にもどっていった。






******
ああもう、前半の昏さが何だったのかっていうぐらいに、お気楽な感じになってきました。
キョーコ視点の時はどうしてもクオンになりますが、ごめんなさい!
黒髪だし、レンさんなんだけど。名乗ってないし。

4/14/19:58に拍手御礼にラクガキつけました。。。
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悲劇からコメディ?ファンタジーへ

こんばんは。お気楽路線、いいではないですか。蓮/クオンの必死なとこも微笑ましい。清いだけのアンデルセンの王子様の方がむしろ人情薄い感じがします。海も冷たげではなく地中海風でのんびりしたイメージで(勝手に)読んでいます。どこか懐かしい海辺の町なのにムードがあるというこれまた勝手な妄想で読んでいます。楽しいので長く続いていて嬉しいです。ありがとうございます。

Re: 悲劇からコメディ?ファンタジーへ

> genki様

コメントありがとうございます!
地中海風のんびり。
そう言っていただけて嬉しいです。
海底の王(某社長)とカナエ人魚様のおかげ。
海のおかげで、自分らしくある二人のになれるといいなもあったんですが。
謎かけしたままエンドマークつけてしまいました。

あと残り1話!

非常に巧みなお話とお別れするのは寂しいですが、最終話を読んでこようと思います。

Re: あと残り1話!

> 魔人様

お忙しい中のコメント!ありがとうございます。
巧みなお話とは!、身に余る光栄です〜
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場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
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