人魚姫のゆめ 3

魔人様の「噂の人魚フェア」参加作です。

パラレル
すみません。途中は悲恋で悲劇でございますですよ。
ラストはこれまたウチ的な幸せになる予定。




「悲劇といったものはそういうものなのでしょうが。」
ばあやは少し姿勢を改めた。


クオン王子の変貌は、すぐにキョーコの知る所になった。
それは、彼が目の前に現れたから。

「王子でなければ、俺を愛してくれるのだろう?」
「どうして、どうして。」
じりじりと寄ってくる黒髪の青年から、キョーコは後じさる。
それは屋敷から少し距離のある庭。
「私に父や兄を捨てろというのですか?」
「俺は家も両親も捨てたんだよ?」
草に足を取られて、キョーコは尻餅をついた。
すかさずキョーコに覆い被さるクオン。

「お願いです、お戻りになって!」

「私は。」
続けようとした言葉を口を塞がれて発することができない。
乱暴なキス。
話すことを拒絶したそれは、キョーコの口奥を犯していく。
抱きすくめた手が、キョーコの身体をくまなく探りはじめた。

「いやあ!」

その声にぴたりとクオンの動きが止まった。

「そんなに、俺のこと、嫌い?」

キョーコは首を振る。

「心から敬愛しております。私の王。」

その言葉は、臣下が王に忠誠を誓う言葉。
クオンは、上体を起こした。

「そう。」

それはもう力の抜けたようなうつろな瞳。

ユキヒトが駆けつけた時には、泣きじゃくる妹とただ力なく佇む友人がいた。
抜け殻のようなクオンを王宮に戻し、家に戻ったユキヒトは妹もまた、気力を失ったことを知った。

クオンの無気力は、政治も変える。
まだ王位継承権は王弟にあると、気づく者が増えた。
傀儡政治を思い描くものも出てくる。
安定していた国家が、不穏な空気を孕み始めた。

宰相が最も望まなかった形が展開されていく。
・・・これでは、あの恋を認めた方がよかったのかと。
人形のようなキョーコに、これ見よがしに届くショーからの花に贈り物。

そして、キョーコの婚礼が決まる。

「俺の勢いを見せつける機会だからな、着飾れよ。」
上機嫌でアレコレを見立てるショーを、キョーコはぼんやりとみていた。


白い白いレースをふんだんに使ったドレス。
その下には外すことのできなかったピンク色の宝石。
花嫁衣装のままキョーコはふらふらと歩き出した。
明日が婚礼という夜。
屋敷の者達も寝静まった、そんな夜中。

月だけが冴え冴えと世界を照らしていた。
もう、疲れた。
あの人を傷つけて、
それでも守らなくてはならないと思ったもの。
それが
こんなふうに
ぼろぼろと崩れていく。

誰にも見つからない所へ

水面に月の光が反射して輝いている。
・・この河の先には海があって、もっと広い世界があるんだよ。
クオンが言っていた話を思い出す。
「もっと、広い、世界。」

キョーコの足が河へ吸い込まれていく。
ドレスが水を含んで、キョーコの身体を流れに巻き込んでいく。
・・はやくこうしていれば良かったんだ。

河の流れがキョーコの身体を運んでいった。



「翌朝は大変なことでしたよ。残った足跡をたどりましたが、河にはもう何一つ手がかりはなかったのです。」
ばあやは、水を口に含んだ。
「宰相は倒れて、その職を辞してしまいました。そして、国が乱れたのです。」
「その最中、国王夫妻が突然に身罷られたのは、この悲劇のすべての終末だと、そう思ったものです。」


ユキヒトはクオンとともに都を離れた。
国王夫妻の死に不審を抱いたからでもあり、父が亡くなり自分がここにいることの危険も感じた。
生かされているだけ、そんなクオンを置き去りにすることもできなかった。
父と妹がこの友人を大事に思っていたのは間違いなかったから。
その思いが方向違いだったとしても、それが悲劇を産んだのだったのだとしても。
いつか自分を取り戻して、生きようとしてくれたら!
ユキヒトの思いはそれだけだった。

「いつか海の向こうの国と交易をするんだ。」
そう話していたクオンを思った。
海へ
港町へでよう。
あそこなら雑多な仕事もある。
景色もかわる。


「ええ、やっと人魚姫のお話にたどりつきました。」
ばあやはそこで少し笑った。
「人魚姫はね、港町では話題となっておりましたよ。綺麗な姿に綺麗な声。ただその哀しげな歌声に誘われて、水底へ堕ちていくのだと。」


クオンはしゃべらないが、その体格と元々の俊敏さで力仕事を難なくこなす。
王子に力仕事、、とユキヒトは思わないでもなかったが、持参金だけで生活するには限界もあり、かつ怪しまれる。
いつ宮廷の人間に気がつかれ、勢力争いに再び巻き込まれないとも限らない。
名前は何となくの思いつきで、「レン」そして、自分は「ヤシー」と名乗った。
「海の向こうに憧れているのだ。」
そんな一攫千金を狙うようなことを「ヤシー」は言って廻って、職を得た。

博学で愛想のよい「ヤシー」はほどなくして、人魚姫の話を聞いた。
「えれえ、別嬪だっていうんだがさ、姿を見た奴は海の底だ。誰もしらねえ。」
ふと、遺体の見つからなかった妹を思った。

・・人魚姫に会えたら、妹を知らないかと聞けないだろうか?



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