恋セヨ、乙女!其の什九

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ぎゅう
抱き上げた細い身体を蓮は庇うように、瓦礫を避けて走る。
一緒なら強くなれる。
ここへ駆けつけた時とは、全く違う世界。


土煙があがるなか、現場に駆けつけた蓮の視界に、キョーコがみつからなかった。

スローモーションのように流れていく景色。
教会の周りは騒然としていた。
「キョーコっっ!」
スタッフに取り押さえられて叫んでいる奏江の声に、蓮の視界が一瞬暗転した。

崩れだした教会が、ガラガラと音をたてる。

「うそだろっつ!」
「キョーコがいるんだ!!放せっ、放せよっ!」
不破が何人かに捕まったまま叫んでいる。

自分の前に立ちふさがる人、人、人
掴まれる腕
「蓮、やめろっっ!」
「蓮ちゃん!」

それら全てを蓮は振り切った。
すべきことは、一つしか、ない。

ズズン
崩れたものが砂埃をたてて、落ちる。
もどかしいように身体がまえに進んでいない。
ただ、落ちてくるものも傾いでくるものもひどくゆっくりで、それを避けることが容易だった。
教会の中は、落ちた天井の隙間からの光で、煙が乱反射していた。

キラっ

祭壇の先に光った緑の輝き。
・・まさか?

「最上さんっ!」


祭壇の下からのぞく白いレース
・・間違いない!


駆け寄ればそこに、果たして、
小さく丸まった姿があって。

「つ、敦賀さん」
大きな瞳が蓮を見て飛びついてきた。
ただ無言で、蓮はその姿を抱きしめた。
暖かい感触に涙が出そうだった。


ガラガラがらっ
まだ崩壊が止まらない。


ぎゅうとその小さな身体を抱え込む。
無事だった。
気が遠くなりそうなほど、
嬉しかった。

「怪我はない?」
落ち着いた感覚が慌ててキョーコに向き直らせた。
「足、捻ったぐらいです。」
ちょっと震えのある声。
それでもホッしてしまう。
「よかった。」
「君が無事で。」
「良かった。」
ぎゅうとまた蓮はキョーコをだきしめた。
「敦賀さん」
キョーコは蓮のシャツをぎゅうと掴む。

カラン

小さな音がしたきり、崩壊が一旦やんだのか、地響きもおさまる。
・・今のうちに。

蓮はキョーコを抱き上げると、倒れ掛かった柱がアーチを作るその先をみた。
・・出られる。
「しっかり掴まっているんだよ。」
キョーコは頷いて、蓮の首にかけた手に力をこめた。

遠慮なんか
必要なかった。

ほんとは怖くて、どうしようもなかったのに、
こんなに幸せな気持ちになってしまう。

抱き上げられて、嬉しくなってしまって。
空を飛んでるみたいだ、と
キョーコは思ってしまった。


「大怪我でなくて、良かった。」

まるで宝物を抱えるようにキョーコを抱えて戻ってきた蓮に、ようやっと声をかけれたのは、社だった。
埃と涙でぐちゃぐちゃになった顔に、蓮は「すみません」と小さく頭を下げた。
ぶるぶると首を降って、「よかったから、うん、うん。」ただ社はそう言った。

奏江も千織も泣きながら走り寄ってくる。
「ごめんなさいっ」
腕の中で謝るキョーコを2人はただ見つめるばかりで。
それでも蓮はキョーコを抱き上げたまま離そうとはしない。

「敦賀さん、あのぅ、もう、大丈夫なので。」
「いやだ。このまま病院にいくから。」

その会話に、社も奏江も千織もほんとうにホッとした顔になった。


その日の撮影は中止になった。
怪我はキョーコ一人。
ただ機材の被害の確認もある。
まして、老朽化していた教会の崩れ方は予想以上に酷く、そこでそのまま撮影は難しくなってしまったのだった。
解体業者が爆薬を仕掛けようと細工しておいたことが、脆くなっていた基礎の限界を早めたらしかった。
大惨事にならなくて良かったと、緊張が解けた後、誰もがへたり込んでいた。


「ダメです!」
「君こそ、ダメだっ!」

病院の廊下に響く声。
ペットボトルのお茶を両手に抱えた社が苦笑し、隣で奏江と千織が顔を見合わせた。

爆破で大きな怪我はしていなかったものの、万が一ということで、キョーコと蓮は近くの総合病院に担ぎ込まれた。
しかし、お互い身体は過信気味の2人で。

「足を捻っているんだから、おとなしくしたらどうなんだ。」
蓮がキョーコに寝ているようにいい。
「寝てるなんて大げさなんですっ。敦賀さんこそ、ちゃんと診察受けて下さい!」
その応酬を繰り返している。
それが、2人の照れ隠しであることは、誰にもわかってしまったが。

さしもの曲解思考も発揮しようがなかった。
あんな中助けにきてくれた理由が、親切とか先輩とか、そんな風にとれるワケがない。
「君が大切なんだ。」
その言葉に、キョーコは真っ赤になって、黙った。
「わ、私だって、敦賀さんが、大切、なんでですっ!」
蓮はぐっと言葉に詰まる。

「「だからっ!」」

2人の声が揃った。
そして、顔を見合わせて笑った。

「うん、診察受けてくるから、大人しく待っていて?」
蓮はキョーコの頭を撫で、
そして、そのおでこに軽くキスした。
ボフン
そんな音が聞こえそうなほど、瞬間の真っ赤になったキョーコに
、、どうしてくれようか。
と思いつつ、まずはここまでだなと、「いってきます。」と病室を出た。

キョーコは捻挫だったが、病院側も芸能人が待合ロビーにいられると大混乱ということで、一室にいれてくれたのだった。
蓮も診察と言われたのは、背中からの流血がそれなりにあったからだが、当人の自覚にはない。
集中していたからもあるかもしれなかった。

「あの、、、2日程、背中を濡らさないで下さい。縫う程深い傷は無いですが、傷が多いので綺麗に治すには、、。」
医師が言いづらそうに告げた。
俳優に2日お風呂に入らないで下さいというのは、どうなんだと思ったらしい。
ただ、受け手はそうでもなかった。
「わかりました。」
にこりと会釈して出て行く。

「最上さん、どうしよう。シャワー禁止って言われたんだけど。」

そう言ったら、キョーコがあれこれ考えたりしてくれそうで。
なにか嬉しくて蓮はスタスタと病室に向かった。







*****
、、ショータローも古賀もどうしたんでしょうかね?
もう最強のふたりに手出しはできないと、思いますが。

次回で最終回。
どうやっても甘ったるくてベッタベタな最終回になります。
ここまで、お楽しみいただけましたでしょうか?

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優しい感じの蓮様ですね。

こんばんわ。moka様の他のお話と比べると優しい感じの蓮様ですね。春風ふう。関東大⚫︎災も2011年の後ではちょっと取り上げにくいところもあったかも…となんだか私が申し訳なくなりました。←自意識過剰ですね、失礼しました。子供の頃、少尉があまりにも優しくてちょっと(子供のくせに)物足りなく感じたことを、また思い出しました。蓮様は春風ふうと見せて実は腹黒紳士の面もあるので今の時代によく合ったヒーローかなと思っています。このような掛け合わせは2次ならではの楽しさがあって、と同時に難しそうだなあとも思いました。最終回も楽しみにしています。どうもありがとうございました。

Re: 優しい感じの蓮様ですね。

> Genki様
コメントありがとうございました!
確かに!拙宅長編では一番素直な蓮さんですね。周りが意味不明な分策士にもなれず、恋心に振り回されて。
あの、お気遣いなく!楽しんで書いてますーリクエストだと、普段の自分と違う着想なので、こなすのが面白いのですよー、、こなれて楽しい読み物になっているかは、、皆様に委ねます(*^^*)

結構酷いお話を書いている拙宅ですが、人の悪意の事故だけは禁忌です。読むのは好きなのに不思議ですけど。
ですので、ハプニングで例示していただいたタイタxxxも魅力的でした。こちらは人魚姫ネタを交えて書きたくなってしまうので、これまた凄く長くなりそうで断念してます。始めちゃったら笑ってくださいね!

あと1回残しておりますが、リクエストしろという無理矢理なお願いを聞いてくださりありがとうございました!
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