恋セヨ、乙女!其の十

堰がきれるのはいつなんだろう〜



さあっ
時々吹き抜けていく、春の少し強い風。
桜が枝をゆらして、花びらが舞う。

樹に登る。

スタッフが大人2人が登っても大丈夫な樹を探すのに手間取ったと言っていた。
撮影で樹を痛めてしまう訳にもいかない。


「やっぱり、並ぶのはちがうなぁ。」
新開が腕をくんだ。
樹を探すのにイメージをと、顔合わせのときに並んで座る絵を確認していたにも関わらず、しっくりこないらしい。

キョーコは枝に腰掛けたまま、蓮が隣からひょいとその大きな身体にも関わらず、軽々と降りてしまうのを見つめていた。
・・敦賀さんってどんな子供だったんだろう?
木登りなんてイメージが無かったから、慣れたように枝に腰掛ける様にちょっと驚いた。
子供の頃に登ってたのかな、とふっと思う。
・・うまく想像できないんだけど。子供だった頃はあるはずで。
「敦賀さん、木登り、慣れてるんですね。」
キョーコが何気なく言う。

「え?」
蓮は言葉の意図が読めずに、キョーコを見上げた。
「いえ、あの、小さい頃木登りとかされてたのかな、とか、思ってしまって。」
「ああ、うん。わりと好きだったかな。」
キョーコの座る枝に手をかけて、蓮は樹を見上げる。
「目線が変わって、遠くまで見れるしね。」
「そうですね。違う景色です。」

「あ、それでいこう。」
新開から声がかかる。
「少し登りかけで、枝に顎をのせる位だな。」
キョーコも蓮もその指示で演技に戻る。


「そんなところに、いたんですね?」
「だって、、ごめんなさい。」
「どうして、謝るの?」
「私、私のせいで、小倉なんて。。」
項垂れる紅緒。
伊集院はすこし樹にのぼり、枝に両腕をかける。
「謝る必要はないですよ、僕は、、、。」

「もうあなたと一緒の人生しか考えられないのだから。」

「わ、私。」

「好き、でしたよ。もう、ずっと前から。」

じいっとみつめる伊集院に、紅緒はただ見つめかえすだけ。
さぁぁっ
風が花びらを舞わせて、紅緒の長い髪を揺らす。

枝を掴む紅緒の手に、伊集院の手が重なる。
紅緒はすこしかがむように、
伊集院は身体を伸ばして、
お互いの顔を近づける。


「カット!」


その声にはっとなった2人が至近距離にまで、近寄った顔に固まった。
あと数センチで唇が重なるような、距離。
・・・・な、な、なんで。
けれど、そんなシーン設定ではない。
・・・・あ、最上さん固まっちゃってる。
はぁ
蓮はため息をついて、枝から離れた。
そうしないと、キョーコが樹から降りれない。
それなのに、キョーコは固まったまま。
「最上さん?」
蓮のその声に、はっと身体を起こしたキョーコはその反動でバランスを崩した。
「あっ!」

落ちたっ
と眼を閉じたキョーコは、その衝撃がなくて恐る恐る眼をあける。
ふぅ
ほっとしたという蓮の顔が間近にあって、真っ赤になる。
「す、すみませんっっ。」
落ちた身体はそのまま蓮の腕の中に抱きすくめられていた。
ぎゅう
肩と膝裏にあった腕に力が込められて、キョーコの身体は蓮に密着する。
「ごめんね、俺が声かけた、から。」
耳元にかかる声が、何か、、。
「つ、敦賀さん?」
キョーコの慌てた声に蓮は我に返る。
すいと屈んで、キョーコを地に下ろした。


軽くて、柔らかくて、、暖かくて。
今までだって何度か抱きすくめてきたけど。
少しづつ、少しづつ、感触が変化してきてる気がする。
身体の丸みや甘い薫りが。
蓮は何も言えずに、キョーコから離れた。

どうしたらいいんだ。
こんな風に触れていたら、セリフとわかっていても「好きだ」と言い続けていたら。
この先を望んでしまう。


どうしたらいいんだろう。
こんな風に抱きしめられて、セリフとわかっていても「好きだ」と言われれば。
期待してしまう心が育ってしまう。


「なんだ、役が抜けないのか?」
新開が蓮に話しかけるまで、現場は微妙に静かな時間が流れていた。




*****
うお、すすまないっっ。








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