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黒い瞳 32

黒い瞳、情熱的な瞳
燃えるような、そして美しい瞳
何と私はお前を愛していることか、何とお前を恐れていることか
きっと私は悪い時にお前と出逢ってしまったのだ

おお、深淵よりもなお暗いのにはわけがある
それは私の魂への喪服なのだ
それは私の哀れな心を焼き尽くす
勝利の炎なのだ

だが私は悲しくはないし、みじめでもない
この運命は私には慰めなのだ
神が与えたもうた全てのよきものは
その燃えるような瞳に生け贄としてくれてやった

エヴゲニー・グレビョンカ/黒い瞳





〜旋律〜

「あなたが黒い瞳なのね?」
たゆたうような声に、キョーコは眼を奪われたまま。
哀しい旋律にのったロシア語の歌。
「すべてを引き換えにした恋ね。」
その美しい人がうっとりとキョーコを見た。
この人の眼差しの憂いは歌のせい?


『黒い瞳』の撮影は残すところあと1週となったオフの日。
ビバリーヒルズのヒズリ邸へ、久遠はキョーコを伴って訪ねた。
玄関で迎えたジュリエナの顔色が一瞬陰ったのを、久遠もキョーコも気づいた。
「はじめまして。」
キョーコはぎこちなく、それでもいつも通りの深々としたお辞儀をする。
ここが日本でなくても、キョーコにとってそれが挨拶の基本だったから。
「はじめまして。綺麗な黒髪ね。」
細くて長い指がキョーコの髪をさらりと揺らした。
「ありがとうございます。」
照れて少し頬を染めたキョーコにジュリエナは優しく笑んだ。
「よく来たね。」
そのジュリを抱くように後ろに立っていたクーが、またキョーコに微笑んだ。
「どうぞ。」
二人に促され、キョーコは久遠を見上げながら、奥に入っていく。

大きな家。
間取りが広くて天井が高いのが、日本家屋とは違うなぁとキョーコは少し感慨に耽った。
、、東京のあの部屋も、無駄に広いと思ったっけ。
体格もあるけれど、こういう空間で育った人なのだと、改めて認識する。

夕食にはまだ早い時間。
バーベキューだと、キョーコは久遠から聞いていた。
「張り切って焼くから、お嬢様方は中でのんびりどうぞ。」
クーが茶目っ気たっぷりに言い、久遠が苦笑する。
バーベキューは男の仕事なのだ。

「映画の撮影はどう?日本と勝手が違うのでしょう?」
二人きり、どの話題からと戸惑ったキョーコにジュリエナは先に話を振った。
「こちらの方が役にじっくり向き合えるので、いいなと思います。」
「デビューがライリーなんて、貴女ラッキーね。」
「はい、そう思います。」
ぎこちない会話。
「黒い瞳、って、よく、母が歌ってたの。」

切ない、切ない哀しいメロディー

ロシアのうた。
「大人の恋のうた。」
歌い終えたジュリエナが、ほうっと言う。
「でもちがうわね。これは男の人の恋のうた。」
にこりと笑んだ女神に、キョーコはたじろぐ。
「私は。」
何と答えていいかわからない。
・・久遠を愛しているのでしょうね?
そう言われているようで。
「いやんなっちゃう、男の子はいつかどこかにいってしまうものって、解ってたのに。」
キョーコはただ綱渡りのロープの上でゆらゆら前にも後ろにもいけないような気持ちになる。
「ああ、やだ、そんな顔しないで、キョーコ。」
ジュリエナが柔らかい優しい顔になる。
「やっと、会えたのだもの。」
「あの、、。」
「私から逃げるのは無理よ?」
にっこりと微笑む顔は、説得にかかる久遠にそっくりだった。

キョーコはジュリエナに手をとられて、彼女が広げるアルバムを見た。
あ・
家族の、記録。
今の久遠に似たクーが満面の笑みで赤ん坊にほおずりする写真。
ジュリエナに抱きついている少年の写真。
「天使のようでしょ?」
写真をのぞきこむジュリエナはうっとりと微笑む。
そのまま、窓の外の2人をみて、表情がくもる。

「久遠は酷いのよ。私が黒髪の姿をみるのが辛いの解っててなんだわ!」

「え?」
キョーコはびっくりしてジュリエナを見る。
「蓮は、私の久遠じゃないもの。」
「でも、あの、撮影で黒髪だから、その、そんなつもりは無いと。」
うふふふ
キョーコの言葉にジュリエナが笑う。
「冗談よ、知っているわ。」

不思議な人だなとキョーコは思いながら、写真に目を落とす。
クーの笑顔、ジュリエナの笑顔、久遠の笑顔。
家族、というもの。

不意に涙腺が弛む。

・・父さんの手はおおきすぎて。

こんなに笑顔の溢れる中だったのに。
恵まれた環境とか、
恵まれない環境とか、
そういった外側じゃ、ない。

何を選んで
どう、進んできたのか、
今、辿り着いているところ、
目指していくところ。

2人で、暖めてく、心。

窓の外、
クーに小突かれながら、動く久遠の姿をみつめる。

〜この運命は私には慰めなのだ〜




*****
久々の「黒い瞳」主題の詩。
なんだか観念的な展開で、ごめんなさい。
甘くない、、

ちょっとこのお話だからでもあるのですが、蓮さんもキョーコさんも
家庭を持つってことに普通以上の不安がある人だと設定してます。
ジュリさんクーさんから何かヒントをもらえるといいなって、
ちょっとそんなお話を書きたくて。












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少し複雑そうなジュリさんがそれらしいですね。

こんばんわ。このお話のジュリさんは、可愛い息子が一人の男に育っていく寂しさも持っていて、複雑そうなので現実味があるなあと思いました。作家様によっては理想のお母様と言うか、お姑さんいうか、明るくてキョーコのことがすぐに気に入って意気投合してガールズ的なスタンスで描かれていることが多いように思っていました。クーがハチャメチャなキャラクターなのでそれもありかと思いますが、現実的ではないかなと思います。この複雑なジュリさんもmoka様の大人風味の一つで、魅力的だと思います。まだまだ続くようですが、『岸辺のアル⚫︎⚫︎』(←古い…)みたいな家族の生きる過程もじっくり拝読させていただきます。どうもありがとうございました。

Re: 少し複雑そうなジュリさんがそれらしいですね。

> Genki様
コメントありがとうございます!
こんばんは。

ジュリさんは、冴菜さんのかわりにいいお母さんであって欲しいのが、正しい二次かと思うのですけど。どうも私のなかで、クーさんもジュリさんも、久遠を闇に追いやってしまった親でもあるんですよね。。。。重すぎる愛。
冴菜さんと対照的な親なのに。
キョーコさんがいい子であろうとしたように、久遠もまたいい子であろうとした、そういう2人なんだと思うと、親が神様のままじゃ、結婚も家庭もありませんよねぇと妄想してしまいまして。ジュリさんがこんな感じになりました。
続き頑張りますね〜
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場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
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