黒い瞳 18

〜団欒〜



「さすがっていうか。」
社が席につきながらこぼした言葉。
完全個室のVIPルーム。入口も別。ドアマンは一瞥しただけで、前に立った人物が来客かそうでないか、判別できるようだった。無粋なチェックなどしない。
「俺たちの顔もわかってるってどういうこと?」
「それが彼らのビジネスなんですよ。」
蓮はにこりと答えた。
有名料理店、その顧客サービス、そのサービスを甘受できる立場。
「京一くんがいるし、ゆっくりできる方がいいかなと、思ったんですけど?」
社と莉夜が戸惑ったように顔を見合わせていたから、蓮は個室を取った理由を口にした。
「ああ、ありがとう。なんていうか、ちょっと驚いただけ。」
社が苦笑している。
日本での特別なサービスはある意味受け慣れていた。
莉夜もキョーコも配慮された待遇は受けているけれど、日本のそれとは格段に違う。

「階級(クラス)」
そういったことを否が応でも思い知らせてくるこの国で、
「特別」
をごく当然のサービスのように、普通なことのように、言えてしまう。
厭味すらない。それは、これが彼にとっての日常なんだと知るのに十分だった。


蓮の横でキョーコは笑顔のまま、さっきのタブロイドを思う。
両親が当たり前のように雑誌に載り、普通に「特別なサービス」を受ける。
・・・やっぱり違うんだな。
ただそれを顔には出せなかった。
社だけでなく、莉夜、そして佐野が戸惑っていたから。
「京くん、寝ちゃってるんですね?」
キョーコが口を開いたので、莉夜が微笑んだ。バギーに乗ったまま京一はぬいぐるみを抱いて眠っている。
「うるさい楽屋でも、寝てられるのよ、この子。シッターが、やりがいがないって苦笑してたわ。」
「大物になるかなぁ」
社が満面の笑みでバギーを覗き込む。

「公演はいつまで?」
食後のコーヒーが配られて、蓮が莉夜に尋ねた。
「あと一月は続きそうなの、こっちのロングランって意味が違うわね。」
「なら、観に行かせてもらおうかな。キョーコも一緒に。」
「ああ、そうね、チケットは劇場に用意させるわよ?」
莉夜が社に予定はわかるの?という仕草。
「撮影がちょっと前倒しになったので、オフがはっきりしたらご連絡します。」
佐野が会話に割り込んだ。
「うん、そうね。なんだか楽しみ!」


「杞憂だったかな。」
「そうだといいけど。」
タクシーの後部座席で、社と莉夜は、京一を覗き込みながら、額をあわせた。
「気掛りのライブもスケジュールの組み直しで、行けなくなったんだし、このまま解消させるさ。」
「そうね。そうよね。」
「莉夜の舞台を二人で見に来るといったんだから。」
「うん、そう。楽しみね。」
「ただ、今更だけど。あいつ、凄いセレブなんだな。」
社がぼそりと言った。
「どうしたの?」
「いや、なんだかさ、マネージャーしてたときの、モヤモヤの理由がまた一つわかった気がしただけ。」
「そう。」
二人はまた顔を見合わせて、微笑んだ。
きっと、うまくいく。
祝福したい。その気持ちが強過ぎるけれど。
京一の寝顔を二人でのぞきこむ。
蓮とキョーコがこんな風に子供を抱く姿を、みたい。
「まだ、俺達は見守るしかできないけどね。」
「うん。励ますこともできるよね?」
「うん、そうだね。」


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Re: タイトルなし

秘密コメントありがとうございます!
キョーコちゃんの闇の方が、複雑怪奇。一個ずつ昇華目指します。
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場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
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