黒い瞳 15

〜足枷〜



「こっちの撮影って、のんびり過ごせるんですね?」
キョーコの問いかけに、蓮は苦笑した。
「ライリーが、変わっているんだ。多分カメラを廻すようになったら、ちょっとタイトになるよ。」
それでも、スタッフにも俳優にも、「組合」があって、契約時間外の拘束はあり得ない。
だから、日本よりのんびりしているかもしれなかった。ただ、それは主役級でなければ味わえない余裕。端役は何作か掛け持ちで慌ただしく調整しながら飛び回るから、拘束されてなくても休み無く駆け回らなくてはならない。
「こっちで次の映画とか、全く考えていないの?」
蓮は何気ない風に尋ねた。まだわからないとキョーコが答えたのを覚えている。
「考えてはいるんです、ただ、自信がなくて。」
キョーコが少し頬をそめた。
「自信がない?」
「日本の女優って、いままでも2作とか、そこどまりですよね。需要がないかなって思いますし。」
「微妙だね、それ。俺は言葉の問題の方が大きいと思うよ。」
テーブルに食事を並べていたキョーコの手が止まる。
「キョーコはちゃんとした発音だし、もうちょっと馴れた方がいいけど、、やっていけるんじゃないかな。」

「敦賀さんは優しいですね。」

蓮は再びキッチンへ身を翻したキョーコの腕を掴んだ。
「俺は、、優しくなんか、ないよ。」
キョーコの首の痕。
「そんな甘いこといっちゃだめです。」
「いいよ、どうだって。ずっと一緒にいよう?」
困ったようなキョーコの顔。
キッチンへ消えてしまう姿。

「・・・不破のこと、、、、婚約者なんだって?」
正面に座って食べる食事。
「ごめんなさい。ただ、それは表向きだけで、もう。」
「、、君の口から聞きたかったな。」
「・・・ご存知だと、思っていたんです。」
キョーコは知っていて、蓮が受け入れてくれたのだと、だから、あえて言うなということだと、思っていた。口にしたくないから、安堵すらしていた。

「来年の大河ドラマは主役なんだってね。」
重くなっていく空気。
「話、できなくて。」
「ああ、そうだね。」
・・・ききたくなかった。日本に帰る予定で来たなんて。
「大抜擢というか、ビックリするやら嬉しくて。」
明るく方向を変えていこうとする声音。
「お姫様の役なんて久しぶりなんです。ちょっと変わってるお姫様なんですよ。」
「じゃ、喜んで、日本にかえるんだね。」
ピタっと止まるキョーコの手。
「俺も次が決まってるし、日本には、行かない、から、まあ、仕方ないのかな。」
「それは、、」
「ああ、だから?あんな風にされても黙ってるんだ?」
「・・・・」
「狡いのは、、お互い様でいいのかな。」
蓮はキョーコの首に手を伸ばす。
びくっと走る震え。
「君は他人の婚約者だしね。それとも婚約者から君を奪った酷い奴になるのかな。」
真っ赤になって俯くキョーコに蓮は言葉が止まらない。
・・・そんな中途半端な君じゃないのは、知ってる。

ーこんなに早く、しかもオドネル監督のヒロインなんて、予定外だったんだ。ー
蓮の頭には社の言葉が響いた。
・・・舞い込んだチャンスに何も考えずに飛び込んできたから。
・・・・日本での生活の整理もできずに、駆け込んできたから。


ーきっと私は悪い時にお前と出逢ってしまったのだー


日本では、俺に纏わり付くものが足枷で。
今は君に纏わり付くものが足枷で。


「ああ、痕が残らないように気をつけるよ、、君は女優だったね。」




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Re: タイトルなし

秘密コメントありがとうございます。
うう、まだ鬼展開、、、すみませぬ。タケシも出てきたがらない、、、。
ドラマチックな浮上を準備中とだけ。

Re: 蓮さん

秘密コメントありがとうございます。
ご心配おかけします。もう、何やら二次の道を踏み外しつつありますが、、暖かい未来まで、どうかお見守りくださいませ。
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場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
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