黒い瞳 13

〜闇夜〜



「京子、さん?」
佐野はキョーコの頸を見て、両手で口を覆った。
夕食を終えて、戻ったホテルの部屋。
ストールをはずしたキョーコをみて、あげてしまった悲鳴。
鬱血痕だけではない。ほっそりとした頸の痛々しい紫の痕。
日中は、そこまで気にならず、キスマークを隠してるぐらいだと佐野はあまり追及しなかった。
「、、、どうして。」
キョーコは佐野に苦笑いした。
「私、おかしいのかもしれません。」
「え、だって、それは。」
キョーコが首に手をあてる。
「仕事に影響したのは、私が慣れてないからなんです。すみません。」
「いえ、、そんな痕がつくなんて、慣れるものじゃないのよ?」
首を締めたような痕ならば、、全身、まさか、、、。
佐野はいきなりキョーコのブラウスをたくし上げた。
「、、、、酷い。」
涙を浮かべた佐野をキョーコが見つめている。
「もう、やめて?やっぱりホテルに戻って?あなた、壊れてしまうわ。」
キョーコがかぶりを振る。
「私、ずっとずっと、、求められたかったんです。」
「、、、京子さん?」
「シャワー、、浴びてきます。」

佐野は、しばらく呆然として、そして慌てたようにスマフォに手を伸ばした。
渡米直前まで、キョーコを敦賀にあわせることを躊躇していた莉夜なら、理由がわかるかもしれないと思った。理由がわかれば、手のうちようもある気がする。
「遅くにごめんなさい。」
「こんなこと、話せるのは、あなたしかいなくて。」

「心配かけるようで、ごめんなさい。そうね、社さんには云わないで。」
「ごめんなさい、でも、必要だと思うわ。私の言葉では、京子さんはわかってくれない。」
「うん、そうね。どうもありがとう。おやすみなさい。」
耳からスマフォを離して、佐野は、大きく溜息をついた。



花束を投げ捨ててキョーコを抱いた男の顔は優しく、狂気など感じさせなかった。
あの二人をみて、佐野はホテルを出ることを許したのだから。
4年、キョーコと佐野で何度も話し合って、作り上げてきた「京子」という女優。
最上キョーコに欠かせないなら、「京子」にも欠かせない男(ひと)であり、、、
どんな報道がなされようと大丈夫なように、神経を尖らせて準備しながら、そんなことが嬉しかったのに。
長い片想いをずっと見守ってきたのに。
何故?
佐野は頭を抱えた。
キョーコがそれを嫌悪しないなら、、
ただ彼女は異常な事だと理解できていない気さえする。
どう伝え、どう距離を保たせるべきなのか。
こちらに来たばかりだというのに。

「体は大事にしないと。」
空々しく言い放った声。
俳優だから、上手に表面を取り繕っているのだろうか。
わからない。
「敦賀蓮」に関わる情報は、、上辺のものが多すぎた。
マネージャーだった社にも、仮にも恋人だった莉夜にも知らないことが多い。
「久遠ヒズリ」と「敦賀蓮」、その奥底にあるもの。
「アイツは紳士なんかじゃない。キョーコは騙されてる。」
不破の苦々しげな言葉が、佐野の脳裏を掠めた。
「キョーコが逃げ帰れる場所になるから。ぜってー、必要だって。」


この映画を足がかりに、京子を日本から離れさせようと佐野は計画してきた。こんな事態を予想なんてしていなかった。もっと希望に満ちて暖かいものになるはず、だったのに。
会わせるべきではなかった。
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Re: 今の久遠氏の狂気

先読みありがとうございます〜
次回はキョコさん。
すいません、ストイックに片思いのまま4年間頑張っちゃってきたのも、一種の狂気だなと。
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場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
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