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「コレって、黒崎監督?」
ラブミー部室のTV前。琴南奏江は右隣に座る最上キョーコにふとたずねた。
パステル調でふんわり笑うCMを二人は見た後だ。
キョーコは笑顔になる。
「さっすがモー子さん。解っちゃうのね〜」
華粧との契約はなかなか厳しく、on air前に撮影の詳細を漏らしてはならないという徹底した守秘義務がある。
今回は監督の名前すら秘密なのだと、キョーコがしゅんとした顔で説明していたのが、先月のことだ。
芸能界にいる女性なら一度は選ばれたいと思う化粧品のCMでしかも華粧となれば、琴南も興味がないわけがない。
ラブミー部で顔を合わせたときに、いままで以上にキョーコがご機嫌で仕事をしているのも伺えたし、どんな仕事だったのかと聞きたくなってしまう。
「もう解禁だから〜」
とキョーコが説明してくれたのは、今回のCMが3監督で3本あること。その3本がランダムに流れるのではなく、流れる時間帯などが細かく指定されているということだった。
「3監督!!て・」
「全部、魔法のルージュなんだけどね。新色がイメージもバラバラな3本だったから、3パターン。」
「へええ。イメージもバラバラな新色って、開発部門がやらかしちゃったのかしら?」
「それがね、「市場調査」で3パターンに絞った結果らしいの。」
琴南はその説明で、「京子」が選ばれた理由が腑に落ちた。
3人のタイプの違うタレントの起用か、3タイプを演じわけられるか。
「アンタ化けるから。」
「モ〜子さ〜ん。」
キョーコの顔が嬉しそうに困った顔になる。
「で、ほか2本はどうなってるの?」
「うんと今晩もう一本が流れて、もうちょっとしてからあと1本。」
「なんだか凄いわね。」
「そうよ大変よ〜」
とキョーコではない、ややハスキーな声が割ってはいってきた。
「あ、おはようございます。」
二人は揃って、その声の主に挨拶する。
ラブミー部は基本ドアを開けているので、佐野みちるはそのまま入ってきた態である。
きっちり揃えたストレートボブ、細身な紺のパンツスーツのスタイルの彼女は先月着任した「ラブミー部マネージャー」。一時ステージモデルをしていたこともあるという長身とヒールでものともせず走るアグレッシブな女性で、二人はあっという間に彼女になついた。
年の差は親子ほどはあるが、二人にとっては頼れる姉になりつつある。
「ごめんねぇ、今日は二人ともオフにしてあげたかったんだけど。」
「?」
佐野は開いていた部室のドアを締め、鍵までかけた。
「??」
「これからしばらくは社長宅で合宿だから。」
「!!!!」
「あ、学校もお休みしたわよ。」
二人が固まったままになっている様に佐野が苦笑する。
「これ、華粧命令だから。」
「え、で、なんで私?」
と琴南が佐野を見つめる。
ふ〜〜〜〜〜っと佐野がため息をついた。
「CMの反響が凄いから、華粧から二人を避難させるようにって」
「???」
「落ち着くまで、社長宅にいてもらうことになったのよ。」
「佐野さん、話がみえません。」
琴南が眉を寄せている。
「ああ、ごめんね。私も正直ちょっとパニクってて。」
佐野が深呼吸して再度説明したのは、華粧の宣伝部が二人の緊急避難を進めてきたところからになる。
そもそも華粧との契約時に「京子」の下宿という事が問題視はされていて、宣伝部はひっそりだるまやで飲み食いしながら様子を探っていたらしい。下宿先として雰囲気等の問題は全くクリアだったのだが、ファンが押し掛けてくるであろう不安が宣伝部には根強くあった。実際、大将や常連がたたき出した不埒な客もちらほら見られたため、佐野にはその報告が伝えられた。LMEとしてもセキュリティーのよい女子寮などの引っ越しは予定していたが、娘同然としている大将夫妻の気持ちと京子のまだ子供である部分を大切にする気持ちからうやむやにしていた部分でもあった。
「・・だるまやに迷惑をかけてしまうんですね。」
キョーコがぽつりと言った。
「・・・うん、そういうことなの。京子が売れた事にたいしてのやっかみで営業妨害もされかねないって。大将はそんなことじゃうちはつぶされないとはおっしゃってくださっているけど、それだけに、、、甘えられないでしょう?」
キョーコがコクリとうなづいた。
「で、モー子さんもって?」
「今流れているの黒崎監督でしょ?キュララつながりだし、仲良しはバレてるし、あなたのマンション張っている連中がいるっていうのよ!!」
佐野が琴南に頭を下げる。
「家じゃなくて、マンション、、、。」
「二人とも今後住むところ、セキュリティーちゃんとしたとこ用意するから、お願いね。二人とも世間の注目がいきなり集中してしまったから、、、ほんとごめんなさい。」
「こちらも遅かったのよ。ただでなくても女の子なんだから、気を使うべきだったの。二人が普段は気配を匂わせないからって、それが安全とはいえないわ。」
「はい、よろしくお願いします。」
キュッと表情を引き締めて、琴南が佐野に頭を下げた。
「ありがとう、じゃ、移動しましょうか。」
佐野が立ち上がる。
「え、そんなに急ぎなんですか?」
「華粧としては、今晩の放送時には消息をくらませてほしいって。」
「しょうがないわ、楽しみましょ。」
琴南が微笑んで立ち、キョーコもそれに嬉しそうに従った。
「じゃ、いそいで車にね!」
佐野がドアの鍵をあけ扉を引いた。

「あ!」
開いたドアの前に人。
「びっくりした!ごめんなさい。」
佐野が笑う。
「お久しぶりです。」
と社が頭を下げた。
「お久しぶり。せっかくたずねてくれたのに、ごめんなさいね。ちょっと時間が押してるの。」
「あっ、すみません。」
佐野は社の後ろに立つ青年に気づいた。
「おはようございます。せわしなくてごめんなさい?」
部屋から出てきた二人も佐野をはさんで、頭を下げる。
「失礼します。」
佐野にせかされるように玄関へ向かう3人を、社と敦賀はちょっと呆然として見送った。







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