黒い瞳 side-k -3

〜招待〜





「出席は、社長命令だ。」
キョーコは社長室で、ローリィから差し出された封筒を手にした。
、、祝賀会。
「そこで会ったら、もうあいつはアメリカだ。もう、会うことはない。」
笑いも怒りもしないローリィに、キョーコも表情はのせなかった。
「わかりました。」


半年。
もう夏の気配と夏休み向けのドラマのスケジュールになった。
雪の中、訳もなくボロボロ落ちた涙は、もう、、枯れた。
テレビ局のポスターや雑誌で敦賀さんを見かけても、涙は出てこなくなった。
撮影、インタビュー、撮影、打合せ、撮影 。
ドラマと映画と取材と、めまぐるしい日々に、倒れるように眠り、起きる。
考える暇がないのは、ありがたかった。
「もう少し仕事を選びましょう?」
「でも、、一つでも多く役をこなしたいんです。」
「、、、多ければいい時期は過ぎたわよ。自信持って?」
佐野さんは、量より質と事あるごとに言うようになった。事務所と彼女で受ける仕事を決めてくれるとはいえ、最終決定はキョーコというスタイルのため、佐野さんと話し合いは多い。

「自信。」
あの人に対抗できる演技ができるようになった?


ー敦賀蓮、ハリウッド映画に出演決定ー

ああ、そうか。
日本から出て行ってしまうのだ。
ドンドン先へ進んでしまうんだ。

祝賀会。

敦賀さんの横で微笑む笹さん。
笹さんはアメリカについて行くわけではないらしい。
社長の話で敦賀さんは日本からは離れてしまうと思ったから、笹さんと結婚するのか、と。
ああ、向こうで落ち着いたら、とか、笹さんの仕事の都合とかもあるんだろう。
「何ぼおっとしてるの?」
モー子さんの声。
「・・疲れてるんじゃ、ないの?」
テキパキした話し方だが、心配が滲んでいる。
「やあねぇ、手が塞がってて、さっきのケーキを食べれなかったって、思っただけ。」
「そう。、、なら、さっさと渡してきなさいよ、その花束。」
ブルーのラッピングに包まれた、花束。
「、、うん。」

二人を前に、後輩として不自然なく花束を渡す。
何度となくシュミレーションを繰り返してみても、敦賀さんのリアクションが全く浮かばなかった。リアクションが浮かばないから、シュミレーションは二人の前に行くところで、止まってしまう。
半年前、映画の撮影後から佐野さんがマネージャーについてくれて、敦賀さんの前から逃げた。後輩として接してくださいと言ったきり、言葉を交わしてない。同じ業界にいても、そんな事が可能なのだと、驚きもした。だから、逆にそれまで偶然だと思っていたことがそうではなく、何らかの意図があったのだということにも驚いた。
会おうとしなければ、会えない。
避けようとすれば、避けられる。
避けていること、は、敦賀さんにだって明白だ。
たかだかキスシーンぐらいで、大袈裟で重い後輩だと思われている筈だ。
、、花束を渡しに行ったところで、似非紳士の笑顔で受け取られるだけだろう。そう頭は判断するのに、心は、何か言ってくれるのを、期待している。

差し出した花束に添えた両手に触れて包む、手。
「嬉しいよ。」
という優しい声。
柔らかい笑顔。
ーやめて!
その優しさが残酷なんです。
、、指輪のない敦賀さんの手に気づいてしまう私。
堕ちきったはずの地獄がまたさらに深くなる。
、、もう会うことはない。
社長の声が、心を落ち着かせた。
口角を少し上げて、微笑んで去る。

戻った私の肩をぽんぽんとモー子さんが軽く叩いた。
何も言わず、並んで会場を後にした。
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しくしくしく

続・切ない!偏ですね。

もう、彼女がいる以上、キョコさんが動けば常識のない嫌な女になっちゃうし、蓮さんが動いてくれないとどうしようもないですよねー。

モー子さんが側にいてくれて心強いですが。

続きもドキドキしながら待ってます!

Re: しくしくしく

>続きもドキドキしながら待ってます!

とんでもない方向に跳ぶ予定ですが、、、、
ついて来てくださいまし!
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場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
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