黒い瞳 side R-2

〜出国〜



「おめでとうございます。」
綺麗なお辞儀。流れる黒髪。
君の顔をこうやって間近にみるのは、もう半年ぶり。
差し出された花束より、差し出してくれた手に。
触れてももう、君の表情は変わらない。
・・貼付けたような笑顔に感じるのは、、、、。
「ありがとう。君に花をもらえるなんて、嬉しいよ。」
「お祝いですから。」
柔らかい体のラインがよくわかるドレス。
そんな服が似合うようになったんだね。

ハリウッド映画への出演が決まった。
そのお祝い、と社長宅で開かれたパーティ。


「久遠・ヒズリは封印したまま、か。」
社長の表情は厳しい。
「はい。」
受けたオーディションは東洋人の役。久遠ではない。
「じゃ、あいつ等の所には帰らない、のか。」
「・・・まだ。」
「いつになったら、帰るんだ?帰る気がないんじゃねえだろうな?」
「久遠に戻れないんです。」
「はぁ?」
「もう、戻り方がわからないんです。」
社長の顔が歪んでいる。


最上さんの姿が、あっというまに別の人たちに呑まれてしまう。

「蓮?」
隣から覗き込む莉夜の顔。
「どうしたの?って、私しょっちゅう聞いちゃうわね、ごめんなさい。」
莉夜が苦笑している。
「あなたがそういうところを見せてくれるから、ほっとしてるのに。」
「え?」
「完璧でなくて、人らしいところ。」
「・・・そうなんだ。」
俺も苦笑いをかえす。
「敦賀蓮」が少しづつ変化したのは、最上さんがいたから。
あの子に再び会ったから。
久遠が時々隙間から覗いてくる。
・・あの子は笑ってるかな?
・・俺をみて、微笑んでくれるかな?

久遠・ヒズリ
いろんなことを重荷にしてしまったそいつ。
そいつが言う、あの子に辛い涙をもう流させちゃいけない。
そのためについた嘘が、嘘を重ねて、、、さらに身動きできなくした。

嘘だったんだ。
いろんなことが。
全部話して、君が許してくれるなんて、そんなのは都合が良すぎる。
まして、俺を愛してくれなんて、無理だろう?

君を抱くかわりに別の女を抱いて。
それで、君が離れてしまうことは、わかってた。
いつまでも期待しているのは、限界だった。

親の七光りなんていわせない、その地位を築いて帰るはずが。
かぶった皮ごと帰る。
君にあかせなかった「久遠」を映画だからって公表できるわけがない。
どこで、君に打ち明けるべきだったんだろう。
打ち明けていたら、もっと違う未来があった、、と思うほどに。

違う未来。

夢見ていたのは、君と一緒にあるくレッドカーペット。
その時の俺の姿がどっちでも、君が一緒にいてくれるなら、よかったんだ。

相談してもらえなくなって、
心配すらしてもらえなくなって、
話ができなくなって、
会えなくなって、
辛くて辛くて。
それなら、君に全てを打ち明けて、逃げられたほうが良かったじゃないかと、久遠が責める。
違う、汚い俺を知らないままでいて欲しいんだ。
男として最低でも、役者として尊敬してくれてるなら、その尊敬を壊したくない。

君がくれたキス、その感触の想い出だけが、心にあかりを灯す。
握ってくれた手。
抱きしめた躯。
「尊敬」
そのために代償にした、恋心。

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