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「夜分におよびたてして、申し訳ありません。」

LMEの社長室、案内されて入った室内の風景に大友は絶句した。
社長の宝田が奇抜な衣装なのは、想定内。
だが、ここは日本だったよな?ていうか、いや何の為にここに来たんだっけ?

目前の長身の青年が頭を下げたので、大友は状況を理解した。

「いや、ちょっと想定外で驚いたよ。・・・ありがとう。」
大友は苦笑する。青年の後ろで目を真っ赤に泣きはらしている京子が、心配そうに大友を見つめており、その姿にまた現実感が増した。とはいえ、二人が宝田にならったコスチュームなために、自分がうっかり間違ったところに来てしまった違和感が否めない。
「あの、想定外って?」
金髪碧眼の青年が困ったような顔で大友をみている。
「いやハロウィンだったっけ?て、宝田さんはともかく二人までとは、思ってなかったよ。」
そう言って、宝田が二人にまでコスチュームを用意した理由を、大友は気づいた。
敦賀蓮が隠していた本来の姿を、そのまま見せられて普通の対応ができないだろうと見越していたということか。
そして、普通の対応でないことを避けたかったのかと。

「京子から聞いてましたが、宝田さんはお人が悪い。」
大友の前に近寄ってきた宝田に、苦笑を投げて右手を握手のために差し出した。
ニヤリとでもいうような顔で宝田が、力強く手を握ってきた。
「これがウチ流です。」
宝田が全員がソファーにつくようにうながした。

「敦賀君、乱暴な要求を聞いてくれて、ありがとう。絶対にいい映画にするから、期待してほしい。」
整いすぎたその顔が和らいだ笑顔をみせる。その横で京子が全てを包み込むような笑顔で彼を見ているのに、胸が暖かくなってしまった。
「こちらこそ、、ありがとうございます。ああ言っていただけなければ、、」
彼のがっしりした手が口元をとっさに覆う。
「うん、僕はきみの心情や理由は聞かない。君のドキュメンタリーを撮るつもりも無い。だから、さらしてくれるなよ?」
京子が何かいいたげに大友を見る。
「京子もだよ。君が彼の心情を知っているならそれでいいけど、僕にそれを説明する必要はないから。」
コクリと彼女らしいうなずき。やっぱり聡い子だなと思う。
「そうそう、フランス語はかなり上達したのかな?」
「少しは」
京子がちょっと苦笑している。
「もう、あっちもはやく京子を寄越せと煩いんだよ。勉強しているなんて言ったら、パリに来た方が早いだろうってね。」
「やはり、あっちで撮りますか?」
さすがに、宝田さんは察したかと大友は内心舌をまいた。
敦賀君の姿は日本では浮きすぎる。
「華粧からもヨーロッパロケは強力プッシュなんですよ。たぶんロケ中に何本かCMも撮らされるんだろうな。しかもね、脚本は英語とフランス語で通しちゃおうって。」
「ほう。」
宝田さんが満足げな相づちを入れる。
「佐野さんから、敦賀君がヒトに教えられるほど会話に問題ないって聞いたから、そっちに話が流れてね。」


「今晩はありがとう、有意義だったよ。」
改めて敦賀君に握手を求めた。そのあとに京子にハグする。
そのハグを上からやや警戒を持って見ている敦賀君の顔。
「そうだった、お願いがまだあったよ。・・・申し訳ないけど、京子を抱くのは映画撮り終わってからにしてくれるかな?」

「は?」

 ぶはははははは〜っと宝田さんが大爆笑。
 敦賀君の顔は硬直。
 京子の顔はゆでダコ。


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