him

大好きな曲妄想。
さて、どなたのなんという曲か?


him


s公会堂、歌番組の生放送が行われるその会場に、キョーコはひっそりと座っていた。二階席の最前列中央。
その席になったのはキョーコの希望でもあり、彼の希望でもあった。
「ね、今日って敦賀蓮も歌うんでしょ?」
「やだ、ファン道におけない発言!タカ様以外は外道でしょっ!」
ざわざわと開演前の周囲は興奮の只中だ。番組収録、しかも生放送となれば、観覧の競争率は大変なものだったろうとキョーコも思う。今となっては、出演者の人気や事務所の力関係である程度ファンクラブなどに優先して席が分配されていて、一部が番組応募の抽選に充てられるのだとわかっているが、必死に応募していた過去を思い出すと、少し腹立たしくなった。
1階の中央あたりに陣取る集団がショータローの追っかけだというのは、会場全体を見渡せるキョーコの席からはあまりに明らかで、今や歌番組には欠かせないミュージシャンだという事を否が応でも思い知らされる。

*****

「え?」
キョーコは蓮の依頼に目を丸くしていた。
「君の時間と身体を貸してもらえないか?って。」
かつてそう言われていった蓮の家で、「ごっこ」をしたのは、かの先輩のスランプの時だった。今、蓮が撮影しているドラマがかなり重い内容だというのは、本人や社からそれとなくは聞いていたキョーコである。
視聴率のふるわなかったドラマのリメイク。当時売れ始めたばかりだった脚本家の悔しい黒星を、なんとか白星にかえたいという野望があって企画が通った。いまやその脚本家がドラマを書けば、視聴率20%は固いと言われている売れっ子になっていたからだ。監督は緒方、脇を固めるのもdarkmoonとほぼ同様のスタッフ、そこで主演に指名されたのが蓮だったのだ。
『俺は、この顔が・・・嫌いなんだ。』
日系人。それ故に社会から爪弾きにされた青年が、一つの出逢いから、夢へ歩み出すのだが、彼の過去が闇へ引きもどそうとする。
その救いのないようなストーリー故に、どこかに希望や夢を見られるよう脚本家もかなりストーリーをいじったのだとはいう。その一つのアイディアが、主人公のギターの弾き語り、だった。
「人前で歌う前に、聴いて貰えるかな。」
蓮がキョーコに頼んだのは、つまりはそういう事で。
・・・そもそも、、妖精規格なのよ?アコギ抱えられただけで、如何しようかと。
散々、ショータローの姿を見慣れていたキョーコでも、蓮の長い指が弦を爪弾く姿はキュン死させる気ですかっ!と叫びたくなるほど、萌えに満ちていたのだ。天界の楽器を手にした大天使。キョーコのギターに関わる記憶がその一晩で全て、蓮に置き換わったのはキョーコにも蓮にも幸せなことに違いなかった。
「オリジナルのシンガーに見て貰ったから、大丈夫だとは思うんだけどね。」
微笑んだ顔が、すぅっと役の顔にかわって前奏を爪弾きだす。

〜もしも君が彼らの 言葉に嘆いたとして
それはつまらないことだよ
なみだ流すまでもない筈〜

〜何故ならいつも 言葉は嘘を孕んでいる〜

つうーーっとキョーコの双眸から涙が溢れ落ちた。
歌詞が胸を
蓮の声が胸を
ついて
感情を静かに揺さぶった。

〜君の喜ぶものは ありあまるほどにある
すべて君のもの 笑顔を見せて〜

そっと弦から手を離した蓮の手がその涙を拭った。演奏が止まる。
「、、笑顔を、、見せて」
間近に迫った蓮の顔に、キョーコはハッと目を見張り、そして閉じた。
触れた唇
甘い口づけ。
心を満たしていく暖かなもの。
そうっと離れてキョーコを覗き込む蓮に、キョーコは懸命に微笑んだ。

〜ほらね 君には富が溢れて いる〜

そのまま泣きじゃくったキョーコを蓮が抱きとめて、朝を迎えた。

*****

ドラマは思った以上に視聴率をあげ、蓮の弾き語りは瞬く間に話題になった。歌番組への出演要請も殺到、本職ではないからという蓮の断りもテレビ局側の意向で捩じ込まれてしまう。
そして、公開生放送などという、本職の歌手でも緊張の場面に蓮は臨していた。

「俺の愛する人に。」
マイクに向かった蓮の声に悲鳴が上がって、会場が静まり返った。
蓮のその言葉はドラマのセリフそのままだったから、知っている人は演奏が始まるのだとわかっている。ただ、、蓮の視線の先は二階を見ていた。

・・・ドラマは、過去に重なるんだ。
蓮はキョーコにそう告白した。
・・・君に救われたのも、ほんとう。
・・・この歌詞を君に聞かせたかったのも、ほんとう。

君が好きだ。

君にはありあまる富が、ほんとうに溢れ出ていると俺は思うよ。
こうやって、多くの人の前で、俺は君を愛していると歌えるんだ。

笑顔を見せて


わぁあ
どよめく客席の上を蓮の視線は通り過ぎ、二階を見あげる。
そこに、真っ赤な顔になって蓮を見つめるキョーコの姿を認めた。
暗がりの客席でもその姿は希望の星のように輝いて。

君にありあまるほどの喜びを、贈ろう。




*****
林檎様の、ありあまる富、でした。
ドラマの主題歌だったのは後から知ったので 、ドラマの内容はwikiベースでアレンジしてます。スキビ脳でwiki読んでちょっとびっくりしました。ご興味ある方は検索ください。

ほんとは尚のヤキモチ視点だったネタですが、ちょっと違うなぁと寝かせたらこうなったのです。
関連記事
web拍手 by FC2

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

message
場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
最新記事
counter
カテゴリ
flyaway news twitter
ブログとHPの更新状況とちょっと呟き フォローはご自由にどうぞ!(フォロー返しはあまりないかも)
Link
上部のサイト様は相互リンクいただいてます。 マナー携帯でご訪問くださいませ。 下部のサイト様は大好きサイト様で、リンクフリーに甘えさせていただいてます!!
検索フォーム