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わるいまほう−7

なんだか、本誌はすごい展開になっているらしい、風の噂だけが届いてヤキモキしております。
そんななか。。


「昨日は大丈夫だった?」
給湯室で三時の片付けをしていたキョーコに石橋がひそっと尋ねた。
「え?」
カップをすすいでいる音でよく聞こえなかったのもあるが、質問の意図が読めず、キョーコは手を止めて隣に立つ石橋を見た。
「あ、いや、俺が一緒に買い物とか言い出したせいで、課長に怒られたんだよね?」
少し困ったように眉を下げて、ごめんね、という。
「いえ、そんな。怒られたというより、指導でしたよ?」
キョーコはにっこり微笑んで、再び手を動かし始めた。
「指導って?」
意外な答えに石橋が驚いたらしい。お皿を拭いていた手が止まった。
「その、私もともと総務なので、営業の仕事がちゃんとわかってないといいますか。」
「ええ?そんなことないと思うけどなぁ。」
「貴島さんが同行っておっしゃってくださったんですけど、ただくっついていけばいいわけでもなくて、ちゃんと相手を見て対応できなきゃとか。そういう事の実地訓練だったような感じです。」
「なんだ、そうかー」
ふぅーっと石橋が大きく息を吐いたので、キョーコはすみませんと付け加える。怒られたのかと心配させてしまったのが、何か申し訳ないような気がしたのだ。
「いやいや、謝ることじゃないよ。課長もなのかって、ちょっと心配しただけだから。」
「課長も?」
「あ、いや、、、細かいこと気にする人なんだなって。」
石橋が苦笑してみせる。その微妙な間と言い回しがひっかかったキョーコだったが、だからと言ってそれに突っ込んでも仕方がないかと、手を動かす。
・・それにしても。
石橋が何かあったのかと心配したのも無理がないかもとキョーコも思う。朝の挨拶から少し敦賀の様子が違っていたからだ。
・・笑顔が無駄に多いというか。
妙に優しいその態度は周囲にもわかるほどで、きっと怒りすぎたからフォローしているのだと思われているらしかった。単純に有意義な時間を持てたとキョーコは思うのに、他人の視線は何かあったと類推してしまうものらしい。「怖い」と正直に言ってしまったから、課長なりに考えてくれたのかも、などと思っていたキョーコだった。
「でもさ、そんなに難しくすることないのにね。可愛い女の子が同行したほうが、向こうの態度も軟化するわけだし。」
、、、え。
キョーコの手がピタリと止まった。
「どうかした?」
「い、いえ、可愛いとはちょっといえないんじゃないかな、、と。」
ははは、微苦笑してキョーコは内心の動揺をひた隠す。
「そんな事ないよ。最上さんは可愛いよ!」
石橋が顔を赤らめてキョーコの方を向いた。
「ありがとうございます。お世辞でも、嬉しいです。」
「、、いや、ほんとに、、お世辞じゃ、、ないよ。」
きゅ
キョーコは水道の蛇口をひねって水を止めた。ちらりと壁の時計を見て、「戻らないと、ほんとに怒られちゃいますね。」と微笑んでみせる。
「う、、ん。」
石橋が俯いて、キョーコは少し慌てたように給湯室を出た。
・・・可愛い女の子が同行したほうが、、
その言葉が、ズンと心にかぶさってしまう。
・・・課長はそうは言わなかったのに。
昨夜の話が愉しかったのは、あくまで敦賀がキョーコの「人となり」を認めてくれてたからだと、改めて思った。女だから、若いから、、そんなことを理由や武器にしろと、言われなかった。分析、交渉、そういったものが、仕事の能力として必要だと聞いて、俄然仕事への意気込みが増したのに。

「おんや?浮かない顔だね。」
ハタとキョーコが顔をあげれば、モップ片手の掃除夫が廊下に立っていた。
「こんにちは。」
キョーコは頭を下げる。総務にいた頃もよく話しかけてきた賑やかなこの掃除夫は、「ローリィさん」と社員には呼ばれている。真面目に作業着を着ていることは少なく、かつ、掃除をしているところも見たことがない。ただ、箒や雑巾やバケツの類の入った掃除カートを押して、どこからともなく現れる。今日は真っ白なライダースーツにウェスタンブーツと、昔の歌手みたいなスタイルだ。
「見た所、給湯室で後片付けしてきたようだが?」
年輩なのもあるのかもしれないが、ローリィさんは偉そうな喋り方をする。
「ええ、そうですけど、、浮かない顔してます?」
「なんだ、部署があわないのか?」
「いえ、そんな訳じゃなくて。」
キョーコは慌てたように手を振る。どういうわけか、石橋はまだ給湯室から出てこない。
「なんだ?プライベートの悩みか?ん?」
「、、、。」
キョーコは言い淀んでしまった。プライベートというか、仕事というか、これはモチベーションでもあるようにも思う。
「何にしてもだな、そこに「愛」があるかどうか、考えてみるといい。」
「、、愛、ですか。」
「そうだ。愛だよ。愛!」
ははは
ローリィさんはやおらモップを担ぐと、キョーコが向かうのとは反対側に歩き出した。
「愛、、かぁ。」
キョーコはホゥと小さく息を吐いて、歩き出す。

ちらり
席に着きながら、キョーコは敦賀の方を窺ってみたが、別段変わった雰囲気もなく書類に目を通している姿があるだけだった。
、、課長は仕事を愛してるんだな。
羨ましいな、と思う。キョーコとて仕事は嫌いではないし、最近は面白く感じられるようになって、好きだなと思うことの方が増えた。けれど、どこかに義務感めいたものがあって、のめり込むような仕事ぶりになったわけではない。
、、、女の子、か。
総務にいた時に、寿退社という言葉を何度となく聞いてはいた。キョーコの中でも、その言葉は一種のゴールに思えていたし、それだけを夢見たりもしていたのだ。けれど、、。
昨日、仕事の話をしていて、もっとできるようになりたいと、きらきらした思いを抱いた。最上キョーコだからできる仕事、そういう仕事がしたいと望みを持ったのだ。石橋に悪気はないのはわかってはいる。だからこそ、、世間は自分を若い女性で、会社に華を添えるような存在としか見ないのかと、思ってしまったのだった。
ふるふるっとキョーコは首を振る。
「ゴールを自分で決めてしまったら、やれることは少ない。可能性にかけて努力するものじゃ、ないのかな。」
にっこりとキョーコに笑みかけた敦賀の顔が頭に浮かんで、キョーコはパソコンに向き合った。
・・・自分にやれることをコツコツ積み上げるしかないもの。

「アンタ、大丈夫なの?」
なんとか今日は少しの残業ですみそうだと片付け始めたキョーコは携帯のランプの点滅に気づいた。ぱかりと開いたそこにはメールの着信があって、送り主は奏江。滅多にメールなどよこさない彼女からのそれに、キョーコは笑みを漏らす。
「ありがとう(≧∇≦)大丈夫よー今から帰るところ。」
ぽちぽちとメールをかえす。
程なくメールが戻ってきた。
「一緒に帰りましょ。」
きゃぁぁぁ
一体なんの気まぐれなのか、奏江と一緒に帰れるなんてキョーコには久しぶりだ。
「じゃ、ロビーでね♡」
打ち返してニヤニヤしてしまう。そしてにやけた顔のまま、携帯を閉じた。
「なんだ?やけに嬉しそうだな?」
キョーコの正面の椹主任がパソコン越しに声をかけてくる。
「はい!総務の親友が一緒に帰ろうって、誘ってくれたんです!」
「なんだ、彼氏か何かと思ったよ?」
「やだ、そんな、、」
ちくり
横から視線が刺さった気がして、キョーコは敦賀を見たが、パソコンの画面を見入っている難しい顔があっただけだった。
・・気のせい?
「大丈夫、帰れる時は帰っていいよ。」
椹はキョーコが敦賀を見た理由が、帰って良いものかどうかの逡巡と思ったらしかった。
「ありがとうございます。」
ぺこり
小さく頭を下げて、キョーコは立ち上がる。
「すみません、お先に失礼します。」
「お疲れ、」
席にいた人達から次々に声をかけられ、キョーコは深々とお辞儀する。
「最上さん、お疲れさま。また、明日。」
にこり
上げた視線の先で、敦賀が柔らかく微笑むのとまともに目があってしまって、キョーコはかっと顔が赤らむのが判る。気づかれまいと慌てて「は、はい、失礼しますっ」と俯き加減に返して、鞄をぎゅうっと掴んだ。



****
すみません。
結局、ハンバーグはどうしたのよ!と怒られそうですが、楽しく仕事の話で盛り上がっちゃったらしいですよ。。
そして、石橋君は勇気を奮ってみたけど、スルーされて立ち直れなくなってると。
これ、オフィスじゃなくて、高校じゃね?←乱暴な自己ツッコミ

ローリィさん、という設定を書きながら、にやけてしまったのでした。
おかしいな、最初はすごく裏のありそうな話だったのになっ。
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