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わるいまほうー6

こちらのお話、お正月ぶりですね。


「ああそうか。・・君は姿勢がいいんだな。」
喫茶店を出て歩く道すがら、敦賀は一緒に歩きやすいと感じて、呟くようにそう言った。敦賀の半歩後ろぐらいを、後ろ過ぎず、完全に並ぶでもない絶妙の距離感でキョーコは歩いている。携帯を弄るでも無くリズミカルにしっかりと歩く様子は、楽しそうにも見えて、奇妙にくすぐったい気持ちになった。
・・デートではない、上司と部下だから。
気持ちを引き締めようとした、その自分の言葉に愕然とする。
・・これをデートにしたいと、思っているのか、俺は。
「あの、、無理でしたら、遠慮なくおっしゃって下さい。」
「え?」
いつの間にかキョーコと共に敦賀も足を止めていた。
「無理って、何の事かな?」
「あの、課長はあまり社内の人とは飲まれないんですよね?」
少し遠回しに、敦賀が乗り気でないのでは?と、帰ろうとして尋ねているのがわかって、溜息が出そうになる。自分は浮かれているのに、キョーコには全く伝わっていない。
・・それが、いいんだか、わるいんだか。
「そんなことはないよ。ただ、まあ、立場上、長居しても皆が気を使うかとは思っているけど。」
「ええ、なので、そのぅ。気を使っていただいてしまっているような。。」
キョーコの心細そうな声に、敦賀は内心むっとしてしまって、また、慌てる。
「誘ったのは、俺のはずだけど?」
「そ、それはそうなんですけど、何か私、粗相を重ねたのではないかと。」
「どうして、そう思うの?」
「会社で、誘われたら断らないのかとお叱りでしたよね?でしたので。あの。」
敦賀を見上げていたキョーコが俯いた。
・・・お説教の続きだと思って、きたんですけど。
キョーコが口にしなかった続きが、敦賀には聞こえた気がした。
「ケーキ屋さんにお連れしたりとか、空気読めてなかったのかなと、思いまして。」
思っていたのとは少し方向がズレていたキョーコの言葉に、なにか良かったと思う自分がいる。
「読めてなくはないかな、、俺は楽しんでるけど?」
「えっ?」
俯いていたキョーコが、ガバリと顔を上げた。
「そんなふうには、とても。」
むぐっ。キョーコは慌てたように口を手で塞ぐ。
「そうか、それは君の観察力不足だな。」
しまったと顔に書いているようなキョーコをうっかり撫でたくなってしまって、敦賀は腕を組んだ。
「それじゃまだまだ、営業同行させられないよ。」
「す、すみません!」
「ほら、歩くよ。」
話が仕事の方向に向けば、敦賀の口は滑らかに動いた。それは自分でも呆れる程に。
営業とは交渉術だから、すべて真っ正直に相手に晒すものではない、とか。
しかし、そんな話になればなるほど、キョーコは目を輝かせ始める。
「ということは、表に出されないものを読まなきゃいけないんですね。」
「そう。、、だから難しい顔をしてるからって、、、」
言いかけて敦賀ははたとショーウィンドウにうつる自分の顔を確かめた。 そこには冷然とプレゼンしている時と同じ顔があって、それは自分でも機嫌の良し悪しなどわかろうはずもない表情だった。
「交渉の余地無しとは限らないんですね。」
敦賀を見上げるキョーコは見るからに嬉しそうで頰まで染めている。
・・・・。
調子が狂うというのが、今の心境にぴったりだと思った。
こうなってみて、敦賀はキョーコを誘ったのは仕事の一環ではなくて、単にキョーコのプライベートを知りたかったのだと気づく。
どんな物が好きで、何を楽しいと思うのだろう?
会社で見ているだけでも、可愛らしいとか綺麗なものが好きなのは伺えるし、およその見当はついている。けれど、それ以上に知りたい。
「好きな子には。」
ふと社が苦笑して告げた言葉が、ぼん、と脳裏に蘇る。
・・俺は、この子が好き、なのか。
「あの?」
黙り込んだ敦賀にキョーコが不審がって声をかける。
「あ、ごめん。確か君は、和食党だって言ってたか、なと。」
「え、そんなお話しましたっけ?」
びっくりしたのか、キョーコの目が丸く大きく見開かれた。
・・したことないけどね。
敦賀はキョーコの素直な反応に内心苦笑する。ふとキョーコが昼休みに広げているお弁当が、いつも松花堂ふうだから、和食が好みなのかと思っていただけだ。
「好みも確認せずに、悪かったね。」
敦賀は足を止め、この店でいいかな?とキョーコに尋ねた。
賑やかな通りから少し入った角、小さな立て看板とオレンジ色のライトに照らされた小さな店。ナイフとフォーク、それにワイングラスの絵がなかったら、輸入雑貨のお店と思うであろう瀟洒な外装。
「素敵ですね。」
キョーコが小窓から見える店内に、美味しそう、と呟く。
「どうぞ。」
その呟きにほっとして敦賀はその小さな扉を開き、キョーコに入るよう促した。

「目玉焼きハンバーグっ。」
それは小さな声ではあったが、感激しているらしいのは充分敦賀には伝わった。きらきらした表情でメニューをみているその様子は、お菓子の話をしているときに近く、それ以上に親しみのある表情に感じられる。
「・・ハンバーグ好きなんだ?」
そんなボリュームのあるものを美味しそうだな、とは思えない敦賀だったが、キョーコの様子に引っ張られそうになる。
「・・・子供だな、って思いましたね、今。」
キョーコがメニューからちらりと上目遣いで敦賀を見る。
「少し、ね。」
くす
メニューから顔半分を覗かせて、紅くなっているほうがよっぽど、、子供じみていて、、可愛らしいけど。
「せっかくなんだし、頼もうか?」
「・・お願いします。」
オーダーを終えると、暫しの沈黙。
「あの、課長にはありませんか?特別メニューって。」
キョーコがテーブルと店内と視線を彷徨わせてから、敦賀に向き直ってたずねてきた。
「特別、メニュー?」
「普段は食べないけど、誕生日とか、お祝いしたいときとかに食べる、とっておき、です。」
「あ、なるほど、ハンバーグはとっておきなんだね?」
明らかに図星だったらしく、またほんのりと頬が染まった。
「いいね、そういうの。」
「・・そ、そうですか?」
「で、どうして、特別がハンバーグなの?」
その質問は好い質問といえなかったらしい、と口にしてしまってから気付いた。キョーコの照れるように困っていた顔が、瞬時に本当に困ったという表情にかわったからだ。
「・・・手間隙がかかってて、美味しいですよね?」
「ごめん、俺、料理はほとんど出来ないから、あんまり、わからないんだ。」
「あ、そうなんですね。」
キョーコがハッとしたように顔をあげ、そして、そのタイミングで、ドリンク類がサーブされた。
「じゃ、今日もお疲れさま。」
「お疲れさまです。」
カチン
小さくグラスを触れ合わせる、その時、そっとグラスを持つ指に触れて、その感触にどきりとする。気付いてしまった感情が、些細な事にいちいち反応していく。
「なんだか、本当の歓迎会みたいです。」
キョーコがにこりと笑んでグラスを口元からテーブルに戻した。さりげなく、グラスを拭う様も当然のようで慣れているのが伺える。
「本当の歓迎会って?」
「その、あの、、課長には歓迎されてないような、気がしてましたので。」
肩をすぼめて、キョーコは敦賀の反応を伺っている。
「俺こそ、、相当嫌われてるよね?ま、上司ってそういうものか、と思うところはあるんだけど。」
「嫌ってはいません、、、怖いですけど。」
は!
あまりに直球で返されて、笑いが溢れてしまった。
「正直な気持ちをありがとう。じゃ、少しは怖くなくなった?」
「はい。」
「それはよかった。」
こみ上げてしまう笑み。
お世辞が入っていても、嫌ってはいないという言葉が嬉しかった。




*****
だらだらと仕事後のシーンが続きます。穏やかでいいなぁ〜(と自己満足)
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No title

moka様
まってました!“わるいまほう”大好きなお話しです♡
蓮キョでオフィスもの、いいですよね。OLキョコちゃんかわいいし、蓮さん(なぜか課長職多いですよね)の管理職素敵です。年下でもそんな上司いたらいいですよね・・・・
蓮さんの嫉妬全開なるのでしょうか?貴島さん&石橋君。そしてショータローもまだまだ絡むのかな・・・
うーん早く次も読みたいです。楽しみにしてます♡♡

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Re: No title

ひろりん様
大好き!を、ありがとうございます!
うふふ、三人はまだまだ絡みますよ〜ちくちくと蓮さん策を練るのか、暴走するのか?
楽しみにして下さってありがとうございます!ご期待に添えますように!!!

蓮さん年齢を考えれば管理職無理だと思うんですけど、対外的にはあの貫禄なので、、つい(笑)
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場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
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