さくらんぼの実る頃 2

別館「mokaのお楽しみ」と連動?企画?

時には昔の」の続編です。



「すごい!」
あれは、初めてキョーコを乗せた遊覧飛行。
クーの自家用機を借りて飛んだグランドキャニオンの上空。
所謂移動の為の大型航空機にしか乗った事がないというキョーコに、映画の撮影などで体験するよりもさきに、、
つまり、彼女の「初めて」は、全て自分とであって欲しくて、久遠は半ば強引に誘ったのだ。だから、あれはまだ20代のことだったし、二人とも毎日に懸命で、あまり余裕がなかった頃。二人しかいない大空で、言葉はほとんど交わしていないのに、全てが通じ合うような充足を覚えた。
自然の厳格さそのものの景色の上を、飛ぶ。
地上に降り立ってから、がくがくと膝を震わせるキョーコだったけれど、表情はきらきら輝いていて、久遠は一層愛おしくなった。一緒にいることが嬉しくて、喜ばせられる自分が本当に誇らしくて。それは、初めて会った夏の日のあの感覚を一層鮮烈にした。

それから、数回。お互いがどんどん忙しくなり、飛行機を飛ばしている余裕がなくなったせいだった。俳優の自家用機の事故がきっかけで、エージェントが神経質になったのもある。定期的に訓練しないと、操縦の腕は格段に鈍ってしまって、本当に危険なのだ。彼女を危険に晒したいわけじゃない。
グランドキャニオンを飛ぶ前も、何度も訓練飛行した結果だ。
・・・少し余裕ができたら、また一緒に飛べるといい。
漠然とそんな思いを抱えたことも、忘れてしまって久しかった。
「やっぱり、奥さん乗せて飛びたいよなぁ。」
飛行場の隅で男どもが小突き合っていたのを、久遠は、はっとして見た。映画の撮影のために、ふたたび訓練を受けにいっていた最中のこと。

・・・もう、何年彼女をフライトに誘っていないんだろう?

出逢って20年。やっとこぎ着けた結婚。
それは新たな約束。
「こんなに、まわりの方に心配されていたんですね・・。」
賑やかな結婚式の中で、泣きじゃくるキョーコが呟いた言葉。来賓を簡単に新郎側と新婦側に分ける事が出来ないぐらい、二人はずっと一緒に関係を築いてきたのだと改めて思い知って。
そして、久遠の中で、何かがストンと、憑き物がおちた。

「出演作、もうちょっと選ぼうと思うんだ。」

「どうしたんですか?」
キョーコが心配そうに久遠を覗き込む。ハネムーン先ののどかな南国のビーチで。
「ニックに働き蜂だって言われたんだ。」
ふふ
キョーコの心配げに寄った眉が一気に緩やかになって、笑った。
「キョーコも相談にのって?」
「いつも乗ってるじゃないですか。」
ふふ
キョーコが楽しげに笑う。
「何がおかしい?」
「結婚して、良かったんだなって、思いました。」
「君は!」
久遠は真っ赤になる。いつのまにか、、キョーコのほうが大人になってしまったみたいで。
「何かに追われているみたいだって、いってたじゃないですか?」
だから、よかったなって。
きらきらと輝く海を背景に微笑んだキョーコがあまりに綺麗で。

「君を、心から、愛してる。」
キツく抱きしめたその身体のその耳許に。
「はい。私も愛してます。」
きゅっと握られた背に。

その時、まだ二人に残っている「初めて」をかき集めようと、久遠は思ったのだった。
それが、キョーコを待たせてしまった贖罪になるような気がして。




*****
はい、飛行艇になっちゃった理由でしょうかね。
書いてる私、かなり赤面ですけど、甘いです?意味不明になってないですか〜??
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