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領主の城-7

お待たせしました?

これまでのお話は、目次からご確認ください。


7. 前菜

テーブルについているのは、5名。それに対して周りに控える侍従が随分多いようにキョーコには思えた。特に領主の席の後ろにワゴンが置かれて、何か荷物のリレーをするように侍従達が並んでいる。
そもそもキョーコはこんな風にテーブルについて食事を待つなどというのは、幼い頃以来で、何か居心地が落ち着かない。せかせかと調理して配膳しているのが当たり前だったのだ。そのせいか、ついつい観察してしまう。
隣でクオンがキラキラした笑顔で、キョーコの様子を伺っているのに気付けば、余計に動揺する。
・・・どうして。
いつか、王子様が。憧れていたお話のように、しかも、幼い頃の約束どおりに、迎えられたのはとても幸せなことだと思うのに。
何かが、魚の小骨が喉につかえているように、キョーコの気持ちをモヤモヤさせている。
キョーコは小さく首を振った。
・・・これが夢だったとしても、夢ならなお、楽しまなくちゃ。

キョーコの前には何ものっていない白く大きなお皿があって、それは隣のクオンも同様だった。順にサーブされるのはわかるけれど、領主の後ろの何も載っていないワゴンがどうも気になって仕方がない。
・・・あれは、皿を下げる為の物かしら?
料理も運ばれてきていないのに、片付ける準備なのかとキョーコは不審がる。
領主たちはグラスにそそがれた葡萄酒を手に、何か真剣な面持ちで話をしているのだが、キョーコの耳には届かない。それだけテーブルが広いというのもあるが、あえて、こちら側の二人には聞こえないように話をしているようだった。
「何か気になる?」
クオンがキョーコに身体を寄せて、囁くようにたずねた。
「・・あのワゴンは、何かと、、思ってしまって。」
キョーコは俯き加減に尋ねた。この城の、当然のことなのならば、尋ねるのは恥ずかしい事なのではないかという躊躇がある。
ぷっ・・・
キョーコの心配に反して、クオンが小さく吹き出した。
「なんだ、あれのことだったんだ。」
それでも愉快そうにくすくすと笑うクオンに恥ずかしくて、キョーコは顔を真っ赤に染めた。
「そんなに、笑わないで。」
「いや、ごめん。あれは、、父さんの食事には必要なんだよ、見てればわかるから。」
クスクス
クオンはまだ笑っている。
「必要?」
戸惑っているうちに、温かいスープが前に置かれて、キョーコは自分の空腹に気づく。
領主がスープに口をつけたのを確認して、その少しとろみがかった、おそらくはコンソメのスープにキョーコはスプーンを入れた。
「!美味しい。」
思わず微笑みが漏れてしまう。
「口にあったみたいだね。」
嬉しそうにクオンが微笑んで、キョーコを覗きこむ。
「えぇ、だって、この味は、、じっくり丁寧に煮込んで、濾して、、って、手間というか情熱が籠ってます。」
とうとうとキョーコの口が語り出す。
ローリィの手もジュリの手も止まった。
「料理に詳しいんだな。」
「えぇ、好きなんです。」
「それはいい!」
領主とローリィの声が揃った。
「クオンも貴女が作るなら食べるようになるだろうしね。」
和やかになった食卓は、一段と暖かみが増したように感じられたけれど、キョーコは、ふと手が止まってしまった。
領主はよく話もするけれどずっと口には何かが放り込まれている。話は息継ぎにすぎないというような勢いだ。つまり、口の中に物がない瞬間に話して、相槌が返されるその間に凄まじいばかりの勢いで食事が口に詰め込まれるのだ。空になった皿がどんどんと後ろに控えたワゴンに載せられていく。
「彼の食欲も、一種の呪いだと思うけど。」
クオンがこそっとキョーコに耳打ちした。
「貴方が食べないのは、その反動?」
キョーコは、少し口をつけただけのクオンのスープを見た。
「そうだと思うよ。メインだけはちゃんと食べるから、あまり怒らないで?」
そのクオンの言葉に繋げるように、ローリィがキョーコに向き直って少し真面目な顔で言う。

「こいつも、、、まぁ、婚礼が終わったら驚くように食べるかもしれないけどな。」

「婚礼が、おわったら?」
キョーコはそれこそキョトンとして、ローリィを見る。
「それはクオンから直接説明してもらった方がいいわ。」
やはりニコニコと微笑んでキョーコを見ていた領主夫人のジュリがそう口をはさんだ。何かこの領主一族をクオンをいっそう謎めいた存在に感じさせる発言ではあったのだけれど、嫌な感じではない。先刻からの領主の食事の平らげっぷりはいっそ気持ちのよいぐらいで、そして、後ろに控えていた侍従達の息のあった連携作業の様子に、キョーコはイガイガと喉に絡んでいた居心地の悪さのようなものを感じなくなっていたからだ。
そう、この城の人々は皆、職務に忠実で主人たる領主一族を慕っているのだということが、料理からもそれを廻る状態からも感じられたから。
・・・そんな一族の一員に望まれるなんて、夢物語のようだと思ってしまうけれど、、嬉しい。
ぽっとキョーコの頬が期せずして、ほんのりと染まる。
ちらり
少し横目でキョーコはクオンを伺って、その視界に入った彼のうっとりするような笑顔に、思わず手にしていたスプーンを料理の上に落としそうになった。
・・な、なんて顔で私の事見てるの!!!!
かぁぁっと頭のてっぺんから湯気が吹き出しそうなほど、恥ずかしい。
でも、、
でも、、
どうしようもなく、
嬉しくて、
心が弾んで飛んでしまう。

美味しい食事が、何か上の空で進んでいく。
・・・勿体ないのに!どうして!
あれほど気になっていたワゴンも何もかもが視界に入らない。
ただ、隣から寄せられる蕩けてしまいそうな笑顔に飲み込まれてしまった。



*****
アップした後に、これだー!と副題を変更しました。
だから、ひょっとすると次回から限定かもです。主菜はやっぱりアレなので。
ええ、クオンさんが総攻勢かけてますから(笑)
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