さくらんぼの実る頃 1

別館「mokaのお楽しみ」と連動?企画?

時には昔の」の続編スタートです。
アラフォーな蓮キョのその後・・・・


「久遠?」
キョーコは久遠のその広い背中にいぶかしげに声をかけた。
穏やかに波が打ち寄せる小さな海岸。
ホテル・アイオライトのプライベートビーチ。ホテルは高台にあるが、階段を降りれば白い砂浜がある。そして、海の向こうはアメリカ、つまり太平洋を望んでいるわけで、ホテルの庭からの景色は、遠く海の向こうに思いを馳せるような眺望になる。
キョーコがオーナーであるこのホテルが、結局は二人の生活の拠点となった。どこかに邸宅を構えたところで、映画の撮影などで飛び回る二人にはあまり馴染みようがないし、留守宅を任せる人を改めて雇うより、気心の知れたスタッフのいるここが、何があっても安心だという結論になったからだ。
そのせいか、久遠はあちこちと以前以上にホテル周囲を探索する。
「一体何を捜しているの?」
キョーコはホテルの仕事があるから、まるきりオフの久遠とずっと一緒に過ごしているわけではない。その「ホテルの仕事」があるゆえに、久遠はここを拠点にすることを渋ってはいたのだが、じっとしていることのほうが苦手なキョーコに余計な仕事をふやさせないのは、ここが一番だという事実も無視できなかったのだ。それに、副支配人の冴木を始めとしたスタッフが皆、さりげなく配慮してくれているのも久遠にはわかる。
「特に捜しているわけじゃないよ。」
そういいながらも、久遠は海岸を小さく仕切る形になっている突き出した崖やら岩場を覗き込んだりとせわしない。
「?」
キョーコも久遠が自然を前にすると、少年のようになってしまうのはよく知ってはいる。木の上で寝こけている姿を見つけたときにはかなり驚いたものの、そんな姿に「妖精コーン」は健在なんだなとちょっと嬉しくなってしまったのもたしかだ。

「飛行艇??」
きらきらと妖精スマイルを繰り出す久遠の手には、赤い飛行機の模型。
広いベッドに二人並んでそれを見る。
「ちょっといいことを思いついたんだ。」

「なにやら作っておいでのようですけど、なんでしょうね?」
日中に冴木がキョーコに告げた久遠の謎の行動。要らなくなった新聞紙だとかちょこちょことしたものをスタッフに貰いにきているらしいのだが、キョーコはそんなことは知らなかったのだ。
結婚して、夫婦として過ごす部屋も作ったけれど、一応各々の書斎のような部屋がある。そこに籠るのは台本を読み込んだり等、何か集中しておきたいときだ。だから、久遠がその部屋にいるのは役造りだろうとキョーコは思っていたのだ。よもや模型造りとは想像外。
長くつきあってきているのに、まだまだ久遠にはいろんな面があるのだと驚いてしまう。

「キョーコが名前を決めてくれる?」
久遠は細いワイヤーで飛行艇をぶらりとさげると、キョーコの掌にそれを着地させてそう言った。
「名前ですか?」
両手にのせた赤い飛行機をキョーコはじっとみつめる。
・・プリンセスなんとかってつい言いたいけど。
いい加減そんなことを言ったら恥ずかしい歳という自覚はある。
「というか、、飛行機じゃないんですね?」
胴体部分が丸くころんとしたフォルムは、セスナのようなスリムな形とは違う。
「そう。飛行艇って船だからね、女性の名前がいいかとおもって。」
笑顔のまま、久遠はキョーコの掌からふわりと飛行艇を飛び立たせる。
「船?」

「水上で離着陸できるんだよ。」

その言葉をきいて、キョーコはこの数日の久遠の行動の意味を完全に理解した。
そして、、、たぶん、近日中に、いや、明日にでも、その飛行艇なるものが、納品されるであろうことも、確信した。

「誰が、操縦するんです?」

にっこりとキョーコは久遠に微笑みかける。

「俺。」

きゅらきゅらと光線を飛ばして、久遠が微笑み、キョーコの目前に飛行艇を揺らす。

「やっぱり!」

模型はあくまで導入。
おもいついたことを、空想のままで放っておく久遠ではない。まして、クーと一緒に空のスポーツとかいいながら、セスナを簡単に飛ばすような感覚の持ち主である。
・・・いったい、おいくらで買えるものなの?!
キョーコの頭の中が混乱し始めた。
・・・アメリカ感覚だとあの広大な国土を移動するのに、飛行機は当然なのかもしれないけど。
実際、クーもジュリも自家用機を持っている。
・・・車だって車庫証明がいるっていうのに、ぱっと売っちゃうのかしら、飛行艇って?!
・・・ていうか、何処に売っているの???
・・・まさか、太平洋横断とか言わないわよね!!

「ここにヘリポートも無理だし、近場に飛行場もないからね。これが一番だなって。」

そう、ビーチをうろうろしていたのは、機体が入れるかどうかを見ていたに違いないのだ。格納場所も考えていたのに違いなく。
キョーコは呆然と久遠が揺らす赤い飛行艇をみつめた。



*****
タイトルは、元ネタの主題歌よりいただきました。登紀子さんの歌声大好きなんです。
歌詞は歌の出来た背景などを考えるとちょっとそぐわないのですが、登紀子さんバージョンの訳詩は素敵だと思いますので、よかったら聴いてみてください。このお話のBGMにしています。
お話は甘くてかゆい感じになるかと。



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