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桜梅桃李

3月11日です。
忘れずにいること、願うこと、祈ること。

仕事に向かう途中に見た梅林が見事だったので。



「うう、まだ寒いなぁ。花は花でも、梅だとちょっと寒いよなぁ~」
広がる梅園の中、コートに身を包んでいる社がぎゅうっと身を縮めた。
日差しは暖かいのだが、時折吹く風が強いわけでもないのに、体温を奪う。
「春はすぐそこ、って感じではありますけどね。」
蓮は袖を通さず羽織ったままのダウンコートに首をすくめた。
CMの野外ロケで来ている天満宮は、ぽつりぽつりと参拝客がやってくる。ロケだよ!と、撮影の様子をちらりと見ていく姿はあっても、立ち止まる人が少ないのはまだ受験シーズンまっさかりで、のんびりしていられる時期でもないからなのかもしれなかった。
「こんなにいい香りなのに、楽しまないなんて勿体無い。」
蓮と同じくダウンコートにみのむし状態の貴島が、片手に湯のみ、片手にみたらし団子を持って歩いてくる。後ろについている彼のマネージャーは水筒に和菓子屋の手提げ袋を下げてニコニコしていた。
「敦賀君もどお?梅花庵のみたらし団子、うまいよ。」
「いや、遠慮しておくよ。」
「そ?」
このおやつの応酬でいまだかつて蓮が受け取った事はないのに、貴島は気にせずに勧めてくる。もぐもぐと団子を頬張りながら、貴島は剪定された枝先に濃く色づいた花に鼻を寄せる。
「こう和物っていう香りなんだよなぁ〜」
蓮は微笑する。甘すぎない花の香りだが、薔薇のような華々しさはない、「和物」という表現はわからなくも無いな、と思ったのだ。
「そうだね。」
蓮の同意に貴島は少し気を良くしたらしい。
「花にはその花なりの良さがあるっていうの、わかる歳になったみたいだよ、俺。」
「?」
蓮の首が少し傾いたので、貴島はニヤリとした。
「桜梅桃李ってね、どの花にも特徴があって、だからこそ佳いって話。」
「わかる歳になったって?」
蓮はぐるりと周囲を見渡しながら、貴島に視線を戻す。
・・白梅紅梅、、紅梅は、、なんだか。
「若い時はさ、梅って地味で、俺のタイプじゃないね、とか思ってたわけよ。やっぱ、桜でしょ、とか。それがさー、タイプじゃないとか何とかじゃなくなってきたわけよ。」
ずずっと貴島が湯呑みに口をつける。
「ぱっと見、美人さんもいいけど、触れたら病みつきの美肌もいいし、こう、梅みたいに香りが馴染む感じも捨てがたいとね。」
にやにやとする貴島はこんどは白梅に鼻を泳がせる。
蓮はほんの少し眉をひそめた。
・・・俺ってこうも嫉妬深いのか?
おそらく貴島の発言に裏はないとわかっていても、頭に浮かんだ情景にムっとしている自分がいる。

そう、紅梅の鮮烈な色があのユニフォームの色にダブって見えて、にこにことハニーキューティースマイルで、「良い香りでしょう?」と妖精さながらにふわふわしているキョーコの姿が蓮の頭に浮かんでいたからだ。
ましてその後の貴島の発言が、触れたら病みつきの美肌、とか、馴染む香りとか、具体性を焚きつけたものだから、妖精キョーコはいつの間にかその白肌を晒し小さく縮こまって、破廉恥ですぅと涙眼で蓮を見る始末。
だから、白梅に顔を寄せる貴島は、まるで、、全裸のキョーコを見られているようで、腹立たしくなったのだ。(紅梅はラブミーツナギ、脱いだら白梅)

バレンタインデーに乗じて腕に納めた純情可憐な恋人は、まだ十代。肌が馴染むだとかなんだとか、とっぷり大人な世界にはまだ早いと思いながらも、脆い紙縒りの理性が切れ、悲鳴をあげさせてしまうこと数回。
学習能力の高い彼女が、紙縒りが切れる寸前を察知するようになって、微妙に逃げられたりもする。けれど、一度味わってしまったものを我慢できるほど、、本能は弱くない。紙縒りはどんどん脆く細くなっていて。

桜のように華やかだったり、(敦賀さん!と駆け寄ってくるキョーコ)
梅のように薫りだったり(ちょっと凹むと抱きついてくるキョーコ)
桃のように色鮮やかで(ミラクル女優なんですよって元気注入キョーコ)
李のように白く可憐な花(ベッドの上で恥ずかしそうに小さくなるキョーコ)
貴島はそれぞれの花というけれど、蓮には、総てがキョーコに繋がってしまう。

「なっ。」
蓮の目前で、貴島が真っ赤になって立ち尽くしている。
え?
蓮は何事かと表情を改めて、気がついた。つまり、ムっとしたあとに思い浮かべていたキョーコの姿に、顔が思いっきり緩んでいた事に。
「そ、そ、その顔で、愛してるとか、言っちゃうんだ、、、。」
貴島がジリリと後ろに下がる。
「歩くタラシっていうか、凶器だろう!!心臓に悪すぎる!」
ヨロヨロと貴島が口にした言葉は、いつかキョーコがぼやいていた言葉に同じ。
「心臓に悪いって、酷いな。」
「鏡、、鏡見たらわかるって!」
も、俺、永遠の2番でいいや。(抱かれたい男ランキング2位のこと)と貴島がぼやく。
「・・鏡。」
鏡の前で、今の想像をすれば、表情がわかるだろうけれど。
・・・ちょっと見たくないかも、知れない。(恥ずかしすぎて)

さぁあ
紅潮した頰を仄かに梅の薫りを含んだ風が、撫でてゆく。
紅白の梅の花が揺れて、くすくすと笑う愛しい少女の顔になる。
恋は、少し、、恥かしい。



***
短時間クオリティ、、すみません。
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