スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

web拍手 by FC2

領主の城 6

6・晩餐




・・・少しづつ、思い出して。
クオンの言葉にキョーコは小さく頷いた。

あれは、母に置いて行かれたとわかった日。
悲しくて、寂しくて、でもベソもかけずに、お屋敷から離れた森に彷徨い込んだ。人目につかないところで泣きたかったから。
さわさわと水の流れる音がして、その音の方へと灌木の間を抜けたキョーコの視界に飛び込んだ、眩いばかりの姿。金の髪、翠のひとみが、きらきらした笑みをキョーコに向ける。「こんにちは。」軽々と川面を跳ぶ姿に、妖精だと思った。
「これをあげる。」
妖精が差し出してくれた碧い石。
「天に翳してごらん?」
キラリ
石の色が変わる。
「ほら、少し気持ちが軽くなったよね?」
吃驚しながらキョーコは大きく頷いたのだ。

・・・・ただ、記憶はそこまでで、どう別れたのかも、会ったのが一回きりだったのかどうかすらわからなくなっていた。現実だったと証明できるのは、碧い石と森の中の小川だけ。石も「貰った」のではなく、「拾った」のかと、自分をも疑っていた。「物語」が大好きで、本を読んではその世界を夢想したから、記憶がごちゃごちゃになったのだと。
じぃっとキョーコは背の高いクオンを見上げる。
「どうして、ちゃんと思い出せないのでしょう?」
クオンの表情に翳がさす。
「、呪いなの、、かも、知れないな。」
小さく呟かれた言葉に、キョーコの表情も曇る。
「でも、どうして私?お姫様でもないのに!」
縋るように見上げるキョーコに、クオンは困ったよう笑顔を作った。
「俺と出逢ってしまったから、かも、、、。」
キョーコは首を横に振る。
「きっと逆です。私が呪われているから、、クオン様に類が及んだんです。助けて頂いたばかりに、、。」
・・・実の母にさえ見棄てられてしまうような存在なんて。呪われてるのかも。
「違う。俺の祖先たちがしてきたことを許せない人達がいるから、、。」
涙目になってしまったキョーコをクオンが抱き寄せる。
「だから、、その、、我々一族は、特殊なところがあるから。」
「特殊?」
「・・・こうやって城に住まうとか、ね。」
クオンの少し歯切れの悪い言葉に、キョーコは「領主」であるというその地位や権力財力を、ひけらかそうとしない人柄を好ましく思った。そして、人の羨むような存在の重責を想像する。呪われるほどに嫉み恨まれるのは、普通なら持てないものを沢山持つからで、恵まれた容貌はなおのこと標的にされやすいのだろう。
・・・哀しみを癒す石は、私より彼に必要な物だったんだ。なのに。
キョーコはそっとクオンの背に両手を廻した。
とくん、とくん
「ちゃんと胸の音がしますよ。生きている人の証です。」
「・・・うん。そうだね、生きてる。」
くぐもったような声がキョーコの髪の間を伝わる。クオンがキョーコの髪に強く顔を寄せているのだと、その感触にかぁっとなった。
ドクッドクッドクッ
自分の鼓動が耳奥で強く鳴り響いて、目が回りそうになる。

コンコン
扉をノックする音に、はたりと顔をあげ、キョーコは両腕を慌てて引っ込めた。
「クオン様、お時間です。」
それはヤシロの困った様な声。
「わかった。」
そうっと片腕がキョーコから離れて、その離れた手がキョーコの頰を包んだ。その手に少し上を向くように誘われて、キョーコの視線はクオンの視線とぶつかる。
にこり
細められた瞳はひどく優しい微笑みでキョーコを射抜いた。
「ごめん、ちゃんと説明する前に時間が来てしまったよ。今晩は、俺の両親の他に、伯父上がいらしていてね、、その、、なんていうか、伯父上というのが、、その、、。」
コホン
クオンが少し視線を反らせて小さく咳払いをする。
「一族の長ではあるのだけれど、、ちょっと驚くかも知れない。」
その発言に、クオンのなんとも言い難い微笑みに魂が抜かれたようだったキョーコは我に帰る。
「あの、それは。」
「なんというか、、言葉ではうまく言い表せないんだ。」
「酷く怖い方なんですか?」
「いや、違うよ。過保護というか、親切というか、、その。」
キョーコの背を抱いて、クオンはゆっくりと歩き出す。説明に難渋しているクオンが面白いのか、ヤシロが眼鏡の奥を歪めて握った手で口元を隠した。
「発想が突拍子も、、。」
ちろり
クオンはキョーコを見て、クスっと笑う。
「突拍子のなさでは、、君も負けてないから、、気が合うかも知れないな。」
「、、突拍子もないって、、。」
「だって、俺は妖精なんだよね?」
うっ
キョーコは顔を真っ赤にして言い淀んだ。幼かったあの日、少年に名を問う前に「妖精さんなのね!」と言ったキョーコである。
「それは私が幼かったからで、、貴方だって否定しなかったし。」
「うん、、だから、伯父上の言うことは話半分で流していいからね。」
にっこりと再び微笑んだクオンに、キョーコはまたどきりとする。
・・・つまり、伯父上様は子供っぽいという事?!
そういえば、そもそもいきなりお城に連れてこられて、何が何だかさっぱりわかってなかったことに気付いた。御両親に紹介され、親戚までいらっしゃるといい、そもそも、10年前に約束していたという、、結婚?!
ぴたりとキョーコの足が止まる。
「どうしたの?」
クオンがキョーコを覗き見る。
「あの、その、、私で良いんでしょうか?」
先刻、クオンは愛していると言ってくれたけれど、、、立場が違いすぎやしないか?
「俺は君が良いんだよ、キョーコちゃん。それを否定するような人達も此処にはいないし。、、、否定できるのは、、、君だけ。」
説明なしに、クオンはキョーコの戸惑いを察してくれた。それをキョーコはとても嬉しいと思うけれど。
「俺を好きになってはもらえない?」
キョーコは慌てたように首を振る。
「何が何だか、、よくわからなくって、、その、、。」
「うん。ごめんね。でも、あの舞踏会の夜、君が逃げ出したりしなかったら、こんな慌ただしいことにはならなかったんだよ。」
「・・・・。」
キョーコは俯いた。あの時も訳がわからなかったのだ。
・・・あんな破廉恥なこと。、、靴擦れを、、足の指を、舐められたなんて!
かぁっとまた顔に血がのぼる。
そして、また別の事に気付いた。
・・・翌朝には、傷がすっかり治っていたのは、、、「特殊なところ」?血の味って、、え、まさか、あの森でも私、怪我したの?
「大丈夫。みんな君の事を気に入っているんだ。」
そっとクオンがキョーコの背を押した。

扉の向こうは煌びやかな世界。
廊下に明かりが漏れ出るほどに、数多い燭台が大きなテーブルを煌々と照らす。そのテーブルには一番の上座に黒い装束の髭を蓄えた紳士が、その横に舞踏会で見た綺麗な奥方様と領主様が席についていた。
その三人が一斉にキョーコに視線を向け、笑顔をほころばせた。
「待っていましたよ。キョーコさん。」
一番の上座にいた紳士が立ち上がる。黒い髪を全て後ろに撫で付けその顔立ちを露わにしているせいか、目の力が遺憾なくキョーコに伝わる。キョーコは、深々とお辞儀をした。
「堅苦しいことは抜きだよ、お嬢さん。さあ、食事を始めよう!」
颯爽と、まるで舞台俳優のように紳士が言い放つ。
ふと、キョーコはその時、紳士の口元が何か不自然な事に気付いた。
・・・牙みたい。
まるで八重歯の人のように、歯がちらりと存在を主張していた。
・・・まさか、ね。
キョーコは席に着いて、正面に座るクオンの御両親の恐ろしく整った顔立ちを、注意深く見た。彼らの口元は特に何かということはない。
・・・伯父上は、、なんて、クオン様が表現しづらいといって言い淀んでいたから、かえって気になっちゃったのかも。



*****
この先はクーさんの山盛りご飯に吃驚仰天な感じでしょうかね〜
ローリィは伯父上設定!
エログロ言ってましたけど、まだ遠いかも?!
関連記事
web拍手 by FC2

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

message
場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
最新記事
counter
カテゴリ
flyaway news twitter
ブログとHPの更新状況とちょっと呟き フォローはご自由にどうぞ!(フォロー返しはあまりないかも)
Link
上部のサイト様は相互リンクいただいてます。 マナー携帯でご訪問くださいませ。 下部のサイト様は大好きサイト様で、リンクフリーに甘えさせていただいてます!!
検索フォーム
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。