スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

web拍手 by FC2

領主の城-5

今回は少し長め・・
次回はもう隠し部屋かなぁ〜


5・再会

馬車に揺られながら、キョーコは俯いた。馬車の誂えはしっかりしていて、座り心地のシートにはクッションまでが置かれていた。肘をのせたり、抱え込んだりするのに程よく、天鵞絨のカバーの触り心地が良い。「領主様」がいかなる存在かを知るには充分な馬車だった。
「私はクオン様の側近でヤシロと申します。・・バルコニーでお会いしましたね。」
靴を広げた男・・ヤシロがキョーコに微笑んでみせた。茫然とする夫人を残して屋敷前に停められた馬車に案内される途中のことだ。
「え、お判りだったんですか?」
キョーコはたじろぐ。一刻も早くというクオン様の申し付けだから、着替えすら待てないとヤシロは説明し、キョーコを急かしたのだったが。
「それは当然もう、わかっておりましたよ?」
ヤシロの爽やかな笑顔は、靴以前にキョーコに気づいていたが、夫人の手前明言を避けてくれたということを示していた。
「あの時は、その・・・魔法で綺麗にしてもらったからで、随分違うかと。」
キョーコの言葉にヤシロは眼を丸くした。
「女性は皆さん綺麗におめかしなさる、そういうものでしょう?」
そう言ってヤシロは馬車に乗るようキョーコの手をとり、キョーコが座ったのを確認すると扉をしめ、御者台の横に向かったようだった。だから、馬車の座席にはキョーコひとり。
クオン様の思惑に、母の約束。
魔法のかかっていない自分に、クオン様は眉を顰めるだろう。だからあの時、逃げたのに。それを忘れてうかうか応じた自分を恥じた。あの時は魔法がかけられた容姿だったから、、、自分でも信じられないほど、綺麗な姿だったのだ。こうやって探し出されてのこのこと、こんな姿で出て行っては、がっかりされるのではないのか。
どんどんと心細くなっていく。
お城に行かせないという母との約束を知らなかったとはいえ、お世話になってきた夫人を裏切ってしまった。そして、クオン様にがっかりしたと云われたら、どうしたらいいんだろう?
・・・どうであれ、帰りづらいな。
ヤシロに急かされただけではない、何か舞い上がった気持ちで馬車に乗ってしまった。せめて、母が自分をお城に行かせたがらなかった理由だけは突き止めたい。
、、あ、御守りを探さないと!
小間使いでいいから、お城においてもらうことはできないだろうか。
キョーコは「小間使い」の考えに何か力を得て、小窓の外をちらりと見た。

景色は深い森からいきなり開けた。城郭の外側は平坦な草地。
ガラガラと車輪の立てる音が硬質なものに変わる。
お城にかかる石橋を走っているのだと、キョーコはぼんやりと思う。まだ外は明るいのに、道中の景色を殆ど眺めることなく、お城に辿り着いてしまった。
城門をくぐり抜けると、馬車の速度は抑えられて、馬の蹄の音もゆったりとしたトロットになる。
カカッ
蹄の音が止まり、車も止まる。
キョーコは大きく息を吐いて、吸った。
・・・・なるようにしか、ならないもの。
ガチャリ
開かれた扉の向こうから、キョーコを覗き込んだのは、黒い髪・黒い瞳のあの青年だった。
「ああ!来てくれたんだね!」
その優しい微笑みに、キョーコは頰を染めた。差し出された手はあの時と同じに大きくて力強い。まして、自分の素の姿に眉がひそめられなかった事に、キョーコはありがたい気がして、素直にその手に頼った。
「名前を訊ねもしないなんて、俺は失礼極まりなかったね。」
馬車を降りるキョーコに青年がいう。
「こちらこそ、申し訳ありません。」
「俺はクオン。」
「キョーコと申します。」
降り立った石畳の上、キョーコはクオンに臣下の礼をとる。
「キョーコ、きれいな響きだ。」
クオンがそっとキョーコの手を取った。
「皆が待ってる。」
舞踏会のあった大広間への階段へ、クオンはキョーコを促した。

果たして大広間には壮年の男性とキョーコと同じぐらいの歳であろう女性が二人いた。三人はクオンの姿を認めて、頭を下げる。
「彼女が、捜していたひとだよ。」
クオンは三人にキョーコを紹介した。
「貴女となら食事ができるとおっしゃるので、期待しておりますよ。」
お城の侍従長だというマツシマがにこやかにそう言った。
「お食事係ということでしょうか?」
キョーコはクオンに招かれた理由を、そういえば知らされてなかったと、改めて自分の迂闊さを顧みた。
「いや、違うよ。」
クオンがむっとしたように返す。
「どうして呼ばれたのか、わからない?」
その棘のある雰囲気にキョーコは萎縮する。
「はい。あの、、逃げ出したからの罰とか。」
咄嗟にでたのはそんな言葉。
「ああ!そうだね!そうだった、君は靴も放り出して逃げたんだったね!そのお仕置きは、、しなくちゃいけないね。」
くす
クオンが少し楽しそうに笑った。
「お仕置きって。」
言い淀むキョーコにクオンは笑みかける。
「そうそう、足の傷は良くなったんだね?」
キョーコは素足を舐められたという事を思い出して真っ赤になった。そう、逃げ出したのはそのせいもあったことをキョーコはすっかり頭の隅に追いやっていたのだ。
「・・・良くなったなんて、どうして。」
「血の匂いがしないからね。」
クオンはにっこりと微笑む。
「匂い、、て。」
「いろいろ知ってもらわなきゃいけないことがあるんだけど、まずは、君の身の周りのことを任せた人間を紹介させてくれないか?」
クオンの言葉にキョーコはまた、目を見開く。
「私の身のまわり?」
「そう、貴女様の、部屋付きのチオリに側用のカナエ。二人とも他所からの行儀見習いですが、優秀です。城内の事は彼女達に確認ください。」
マツシマが二人の女性をキョーコに紹介した。二人は整った顔立ちをしていたが、ヤシロやマツシマのような愛想はないらしい。たいして歳のかわらなそうな二人に、ショーの取り巻きを思い出して、キョーコはぐっと息を呑んだ。カナエは綺麗な黒髪の美貌の女性で、チオリは小柄で眼がパッチリとした可愛らしい雰囲気。二人とも品があって、「行儀見習い」する必要は無さそうに見えた。
「では、キョーコ様、お召替えに参りましょう?」
カナエがそっとキョーコを誘う。クオンがにこりとして頷いたので、キョーコはそれに従った。クオンにお仕置きといわれて、キョーコの頭は半分パニックを起こしている。この城で何をすれば良いのか、さっぱり見当がつかない。ありていに言えば、舞踏会で見染められたということは客観的に理解したものの、その先がわからなかった。
お嫁入り?そうだとすればキョーコが想像していたものと違う。半ば強引に連れてこられたのだ。
「もうちょっと、嬉しそうにしたら?」
カナエが片眉を少し上げてそういった。
「へ?」
「そうですよね、未来の領主様の妻になるというのに、浮かれていただいていいんですよ?」
チオリが淡々と云う。
「妻?」
キョーコの声がひっくり返っていたので、二人が立ち止まる。
「わかってなかったんですか?」
「いえ、あの、ほんの少しはそういうことかなと思ったんですけど、それにしてはアッサリ事が進んでいくので。」
「あっさり?ですか?」
チオリが困った顔でキョーコを見、カナエを見た。カナエが腰に手を当てフゥゥと深い溜息をついた。
「まぁ、お部屋に行きましょう?」
「、、、私、荷物を持ってきてもいないのに、、。」
「ああ、もーっ。そういう所がダメよね、、いい事?そういう事は、クオン様におねだりなさいね?貴女をお城から出す気は、クオン様にはないのだから。」
「え、、お城から出れないんですか?」
「そうね、まず一人では出れないわよ。」
カナエはキョーコを一瞥してスタスタと歩き出す。少し萎れてキョーコがそれに従うと、その背後でチオリがくすっと笑った。
「クオン様の人を観る目は確か、かもしれませんね。」

「こちらです。」
両開きの扉をカナエが押し開ける。
キョーコの目の前に広がったその部屋は広く、そして華やかだった。薄桃色を基調とした壁紙に絨毯、そして緑の森がよく見える大きな窓には透かし模様のカーテンがかけられていた。
奥に据えられた天蓋付きのベットは布団の厚みか脚の高さなのか、踏み台が横に置かれるほどの高さがある。まるで物語のお姫様のお部屋だと、キョーコはうっとりした。
「何か気に入らないモノがありましたら、仰ってください。」
部屋を見て回るキョーコにチオリが声をかけるが、チオリもカナエもいそいそと何か手を動かしている。キョーコはハタとそれに気づいて二人に駆け寄った。
「あの、何をしたら良いんでしょう?」
「ああ、そうよね、えっと、これから貴女のお披露目をしなきゃいけないの。だから、身綺麗に整えたいのだけど、何しろドレスの寸法とかクオン様の記憶レベルでの用意だったから、確認しなくちゃいけなくて。」
「まあ、およそ間違いは無さそうよ?」
「たかだか数時間で、よく覚えたわよねぇ。」
「覚えたじゃなくて、測ったの間違いでしょ。」
「そうよね、身長にスリーサイズ、腕の太さ、脚の太さに長さ、首まわり、、、」
カナエとチオリが会話をしながら、キョーコにドレスを押し当てる。
「なんだ、完璧ね!」
「じゃ、着替えましょう!」
するり
カナエが前、チオリが後ろに立って、キョーコの服に手をかけた。
ひゃぁぁぁ
夫人の着替えを手伝うことはあっても、キョーコは手伝われたことはない。恥ずかしくて悲鳴があがる。
「自分で着替えられますからっっ!」
「そうはいかないのよ、私達の仕事ですからね。」
ぱっぱと二人が手際よくキョーコを裸にしてしまう。いつ用意していたのか、温かいお湯に浸した柔らかい布で身体を拭われて、白い下着が被せられて、キョーコは、はぁと息をついた。
・・・何が何だか、、。
事態に対応するのがやっとで、なにか現実感がキョーコにはないままだった。

・・・・・

「ああ、思った以上だよ。綺麗だ。」
大きな机の向こうからクオンが、扉のところで立ち竦んだキョーコを迎えに歩み寄る。
「そんなに怖がらないで。」
困ったようにクオンがキョーコに話しかける。
「こ、怖がってるのではなくて、訳が分からないんです。」
「何がわからないのかな?」
「そもそも、どうして、私が・・。」
クオンの整った貌が曇る。
「君は俺が嫌いか?」
「い、いえ、そ、そんな滅相もない!!」
「あんなに楽しい時間はなかったんだよ、”キョーコちゃん”。」
え、、
キョーコはたじろぐ。”キョーコちゃん”というその響き。
そして、クオンは上着の胸ポケットから、何ものかを取り出して、キョーコに差し出して見せた。
大事な御守りの、、石。
「ずっと、持っていてくれたんだね。」
クオンがそっとそれをキョーコの目の上に翳す。
「哀しみを吸い取ってくれる、石。」
キラリと色を変えるそれをクオンが見つめ、そして、キョーコの掌にぐっと握らせた。
「ずいぶん、石に哀しみを吸い取らせたんだね・・」
そっとクオンの手がキョーコの頭に触れて、撫でる。
”キョーコちゃん”と呼んで、キョーコに石をくれたのは、、金髪に碧い眼をした妖精。誰にも話した事ない大切な思い出を、クオンが知っているのか?キョーコはさらに戸惑う。
「どうして、それを知っているの?」
「俺だから。」
クオンは口元を少し歪めて、キョーコを抱き寄せた。
キョーコははっとする。街でささやかれていた噂・・金髪のはずのクオン様が黒髪だった・・。
「踊っている最中に、ひょっとしてと思ったんだ。懐かしくて愛おしい薫りがしたし、、その、、血の味が、記憶通りだったし、落としていったのが、その石だったから、間違いないと確信したんだよ。」
抱きすくめられた腕の中で、キョーコの頭が混乱する。
・・・懐かしい・愛おしい・・薫り?血の味??
「約束したよね?」
ぎゅうと抱きすくめる腕が強くなった。
ドキドキと鼓動が伝わってくるのか、自分の胸がたてているのか、小刻みに刻まれる揺れ。
すり
キョーコの髪にクオンが貌をよせて、耳もとに囁いた。
「10年後、俺のお嫁さんになってくれるって。」
ちゅ
耳朶に落とされた接吻の音が、大きく響く。
「あぁ、いい匂いがする。」
低く艶を帯びた声にキョーコの身体はふわふわとし始めた。・・これは魔法?
「あっ」
首筋をそろりと撫でた感触にキョーコは声をもらした。
オカシクなってしまう。
キョーコは両手をクオンの胸に突いて、身体を離そうともがいた。
「どうして?」
悲しそうにクオンがキョーコを見つめる。
「どうしてって、私、、、貴方の事、知らな過ぎる・・。」
「俺がキョーコちゃんを愛しているっていうだけじゃ、ダメ?」
眉を下げて少し首を傾げたクオンの表情に、キョーコは悲鳴をあげそうになって、両手で顔を覆った。掌に真っ赤に熱を上げた頬の温度が伝わる。
「君が約束を忘れているんでも別にいいよ。俺はキョーコちゃんしかいらないんだから。」
「でも、でも。私が覚えてるコーンと貴方はちがうの。」
「うん、そう、これは呪いだから。」
クオンは黒い髪をその長い指でさらりと梳いた。
「呪いって・・。」
「よくはわからないんだけど、キョーコちゃんになら解いてもらえそうな気がするんだ。」
「私、魔法なんてわからない・・・」
クオンが首を静かに振った。
「呪いを解くのは、、魔法使いじゃないよね。」
あ!
キョーコはいろいろな物語を思いおこした。
・・・お姫様の呪いは王子様の・愛の力で・解けたのです・・めでたし・めでたし・・
「・・・・・。」
「キョーコちゃんは俺を愛してはくれないの?」
「愛なんて・・・わからないもの。」
キョーコは項垂れる。
「うん、だから、この城で一緒に過ごそうと思うんだ。」
「このお城で、一緒に。」
「そう、俺の事、少しづつ思い出して?」
クオンはそっと屈んで、キョーコの頬に口づけた。


*****
・・蓮さんの顔で、グアムの妖精王子の台詞を云っているような感じです。なんていうか、学芸会みたい?腹黒い企みは次回以降を御愉しみに〜この回の明るさは書いているほうもびっくり!

前回の拍手ありがとうございます〜そして、拍手コメントをいただきました、
♡も☆ぷ様・ち☆け様・み☆ん様・ぴ☆が☆ぴ様♡
ありがとうございます〜このお話が何処へ転がっていくかは、今回にヒントあり?!のような。お待たせしてしまいますが、励ましコメントにエンジンはご機嫌で稼働中です!!



関連記事
web拍手 by FC2

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

message
場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
最新記事
counter
カテゴリ
flyaway news twitter
ブログとHPの更新状況とちょっと呟き フォローはご自由にどうぞ!(フォロー返しはあまりないかも)
Link
上部のサイト様は相互リンクいただいてます。 マナー携帯でご訪問くださいませ。 下部のサイト様は大好きサイト様で、リンクフリーに甘えさせていただいてます!!
検索フォーム
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。