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Fastener

はい、曲妄想のお話です。
この曲につけられた映像があって、しかも大好きな映像作家さんの作なんですが、PVではないので画像を貼れないのが残念です。曲もシングルカットではないようなんですけど。


なんだか朝から居心地が悪かった。
その原因は、きっと蓮のせいとキョーコは思って、そして、首を振る。
正しくは、キョーコの何かがもとで蓮が何かを感じてしまったせいだと思う。
その何かがわからないから、居心地が悪いのだ。
「キョーコ、後ろ向いて。」
着替えていたキョーコに蓮が声をかける。ワンピースのファスナー、それは身体が柔らかいキョーコは一人で着れるものだったけれど、蓮の手がそっと腰に触れて、じっと音をたててファスナーが上げられた。
つきあい始めた時には短かったキョーコの髪は胸にかかる長さになっていて、こんなワンピースを着る時には少し邪魔になる。だから、こうやってファスナーを上げてもらう時はキョーコは少し俯いて、髪を首横で押さえる。そして、上げ終わった蓮が合図のように首筋にキスを落としてくれるのを、ちょっと期待するのだ。
けれど、今晩はキスがない。
キスを待ってしまった、ほんの瞬間の間のせいで、キョーコは「ありがとう」を言いそびれた。そして、振り向けないまま、髪を背に戻して鏡を見た。
鏡には、じっと鏡の中のキョーコを見つめる蓮がうつる。その瞳は翡翠の色で、笑顔でも怒った顔でもない。無表情。鏡の中で目が合って、すぐに蓮はふいっとその視界から消えた。

・・君の背中にもファスナーがついていて

キョーコは助手席の窓に映った自分の苦笑にまた苦笑した。
珍しくカーステレオが音楽を流していて、だから、会話する気がないのだとキョーコはそっと小さく息を吐く。ちょうど流れたその歌の歌詞に、さっきを思い出した。
映画の熱愛する恋人達のように、蓮はドレスアップするキョーコを手伝うという名目で触れてくる。綺麗になる君を一番に見たい。綺麗だと一番に言いたい。
そんなくすぐったいことをさも当たり前に蓮は云うのだ。
きっとご両親を見て育ったせいだと、キョーコは思うが、それが嫌な訳ではない。ただ、いつになったら、蓮をどきりとさせるような反応を返せるようになるんだろうと、思ったりはするのだが。
だから、さっきはらしくなかったのだ。
ファスナーを上げたら、キスして、後ろから抱きすくめて、綺麗だと、鏡の中のキョーコと眼を合わせて微笑むのに。

・・僕の手の届かない闇の中で
・・違う顔を誰かに見せているんだろう
・・そんなの知っている

「何か・・・隠してるよね?」
それは躊躇いがちの低い声。
「え?」
「全く隠しごとがないっていうのは、不自然だって理解してるけど。」
「一体・・・何ですか?」
キョーコの声も探るようになってしまう。しかも、運転席の蓮の顔を見れない。怒っているのとは違うけれど、もやもやを抱え込まれているのがわかる。
「私が蓮さんに、隠し事なんてできないこと、一番ご存知ですよね?」
こんな時、どういうわけか言葉遣いまでもが丁寧になってしまって、その丁寧感にいっそう蓮が苛立つのもキョーコは知っている。知っているのに、軽妙にさらりと云えないのだ。

・・でもそれが君じゃないこと
・・想像してみて萎えてしまう

はぁ
赤信号でブレーキを踏んで、蓮は小さく溜め息を漏らした。
カーステレオから流れる曲の歌詞がいやによく聞こえて、なにかさっきの光景に重なってしまう。これからパーティーに行くという時に、なんでこんな気分にさせているんだと、自己嫌悪に陥る。でも、気付いてしまった事を放置するのは、キョーコに関しては無理なのだ。
「きっと皆さんがてんてこ舞いしてま・・すね。」
いつだったか、キョーコが言いかけた言葉に、しまったというような仕草をしたのだ。なんという会話でもない、ただのたわいもない会話で。
てんてこ舞いって、、
昔、鶏の着ぐるみに聞いてしまった言葉の意味。蓮が知らない言葉であったことを、キョーコは知っているのか?それともその言葉に何か含むところがあるのか?
キョーコが言葉を途中で止めるのは、主に彼女の過去にある旅館に関わる内容なのだが。
・・・ああ、旅館でてんてこ舞いっていうのはよく使ってた表現なのか。
その時はそう思えたのに。
今朝、クローゼットの片隅に、あの鶏のストラップが落ちているのを見つけてしまった。
鶏くんの正体が知りたくて、蓮が調べようとしたときには番組改編で番組自体が終わっていた。正体を知りたい理由が理由なだけに、あまりしつこく調べまわるわけにもいかなかったが、番組の司会をしていた3人組がLME所属だと知ったから、何気なく尋ねたのだ。そのグループのリーダーだという男は、「知らない方がいいと思うんです。」そう答えた。
「どういう意味?」
「あ、、えと、こんな仕事してたって、知られたくないとか、あるじゃないですか。」
「・・そうだね。」
「彼」は日の当たる場所を歩き始めたのか・・なんとなくホッとしたような気がして、正体がわからないことが腑に落ちて、そのままにしていたのだ。
けれど、キョーコがあの番組のストラップを持っていたというのが、何かひっかかる。しかも、隠すように持っていたのだろう、落ちていたのはキョーコの荷物のスペースの奥。
・・番組で貰ったものをいちいちご披露してほしいわけじゃないけど。
ひょっとして、あの鶏の中身が、キョーコだったってことはないのだろうかと。
・・・それが恋だ。
あの時に蓮を説得したのが、キョーコだとしたら?
・・・全く自分のことだとは思いもせずに相談に乗ってくれちゃったのか・・・。
「彼」が、キョーコとつきあっているというニュースを「よかったじゃないか」と聞いてくれそうな気がしてしまっていたのとは、何か別の方向だ。
だとしたら、なぜキョーコはそのことを黙っているんだろうか。
あの告白を聞いていたのが、他ならぬキョーコだったのなら、それは、、彼女の必要以上の鎧にもなっていたのかもしれないし、、。想いを認め合った今となっては良かったということなんだろうか。あの日あの時の気持ちを彼女が知っているというのは。

「ウルトラマンって、知ってます?」
流れていた歌の歌詞から、思いついたのか、キョーコがそう云った。
「一応は知ってるよ。その手の番組に出てたし。」
「え、そうだったんですか!」
ぎこちない空気が緩んだ。
「・・・あまり言いふらしたくないな。」
蓮は苦笑する。まだ日本語の台詞に慣れるのに懸命だった頃の仕事。CGがあっても、コスチュームを着るから・・・フルコスチューム(きぐるみ)は専門のアクターが着ていたけれど。
ファスナーのついた皮。
・・・ああ、そうか。
「これも隠し事か・・。」
蓮は呟いた。
鶏のきぐるみを着ているなんて、云えなかったんだろう。
しかも、好きな子がいることや自分を赦せないことまで気持ちを吐露されて、なお云えなくなったんだろう。

・・・僕にそれを剥がしとる術はなくても
・・・記憶の中焼き付けて
・・・そっと胸のファスナーに閉じ込めるんだ

「ふふふ、蓮さんにヒーローは似合いますもん。」
キョーコが楽しそうに笑って頬を染める。
「そうかな。」
おどけて蓮は肩を竦めた。
「だって、ヒーローですから!」
キョーコが頷いて蓮を見つめる。蓮は前の車の流れを見ながら、それを感じ取って少し照れた。”ヒーロー”がきぐるみを脱いだところを、彼女は見なかったことにしているんだろう。彼女の前なら、脱いでしまいたいぐらいだけれど、お互い見ない振りをすることだって、大切な気がする。

・・・惜しみない敬意と愛を込めてファスナーを・・


Fin



*****
ええと、みす・ちる・ファンの方によるとこれは別れの曲だって分析でしたが、私は惚れ直しの曲だと思っちゃったんです。恋愛倦怠期というかそんな感じ。
時間が出来たら、隠し部屋バージョンも書きたいですが。



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