松があける

仕事も詰まって
お話も煮詰まって
ころりと短編です。


「敦賀さん、何かいい事があったんですか?」
キョーコは挨拶から起こしたそのままの姿勢で、蓮の顔を覗き込んだ。普通な感じではあるものの、なにか神々スマイルがどこかに潜んでいる気配。
新年早々であるし、キョーコも何かいい年になりそうだとか華やいだ気持ちでいたのも確かだ。何しろ、去年の初詣でお賽銭に気合いを入れた結果が、コーンとの再会だったのだから、今年も神様へは丁重な御礼と期待を込めて、金額増ししたのだ、ご利益が早々にあってもいいと思ったのも否めない。
「何ってほどじゃないけど、新年だからね。」
「そ、そうですねっ。」
にこりと微笑んだ蓮の笑顔には、なにかカイン兄さんめいた黒いものが混じっていて、怨キョ達がざわめき始める。似非とはまた違うその特上笑顔は、うすら寒い。
「まあ、松もあけるんだし。新年気分も落ち着けなきゃいけないけれどね。」
「松」になにか強調を感じてしまったキョーコは少し後じさる。
「ん?なんで距離をあけるのかな?」
「あけたら、燃やすんだよね?」
「?」
一瞬キョーコの顔には大きなクエスチョンマークが浮かんだのだが、ああ、話題が松の内のことだったと思い至って、正月飾りなどを燃やすことか、と腑に落ちる。ただ、良い事とそれが結びつかないのだが。
「だからね、消してしまえばいいと思うんだ。」
蓮はまだ悪い笑顔のまま、キョーコをみている。
「はぁ。」
「ちらっと耳にしたんだけど、まだ松が飾りっぱなしなんだって?」
「へ?」
だるまやは親方もおかみさんもその辺りは抜かりないのだ。都内でどんと焼きはできないから、門松のたぐいは神社で焼いてもらうのだと教えてもらったぐらいだ。キョーコ個人で飾った正月飾りなどはない。
再びクエスチョンマークを並べるキョーコに、蓮はいっそう悪い顔をみせる。
「気付かない?」
「はい、ヒントをください!」
思いっきり力の入ったキョーコに、蓮が少し呆れたという顔をする。
「まあ、いつまでも引きずるのも自由なんだけどね。」
「いえ、その、松があけたのに飾りっぱなしは良くない・・・・。」
そこまで口にして、キョーコは眼を見開いた。部屋のポスターのことだと、心臓が跳ねる。一体、敦賀さんはどこであの部屋のことを見聞きしたのか?だいたい、並べたポスターのことまで知られているのなら、破滅まっしぐらである。・・いや、恋心を隠すにはいいのか、とかもうぐるぐるとるつぼに嵌りかかる。
「あ、あれは飾りではなくて、呪いです!!!!」
叫ぶように力強くキョーコが言い放って、蓮の眼がすぅっと細められた。
「・・やっぱり飾ってたのか。」
・・・・・・・
ひっかけだったと知って、キョーコはまた真っ青になる。呪いといったって、ショータロー絡みの話題は敦賀さんの不機嫌の原因になるというのに。
「ちょうどいい機会だから、燃やして清めたほうがいいんじゃない?」
血の気がひくとはよく云ったもので、キョーコの顔は青を通り越して真っ白になる。
「ど、どこで燃やせと。」
「うん?ああ、マリアちゃんがなんだかいいやり方があるって云っていたから、預かろうか?」
い、いえいえいえいえいえいえいえいえいえいえ
キョーコは手を振り首を振り後じさる。
「敦賀さんのお手を煩わすようなことではっ」
「君は自分でかたがつけられないみたいだし、手伝ってあげた方がいいかなって、そういう親切心なんだけど?」

・・・そうだ、もうあんな奴に構っている場合じゃない。

帰宅したキョーコは、壁のポスターに手をかけた。
びりっ
「さようなら、ショーちゃん。」
びりびりびりー
大きく裂けたそれをまた細かく切り刻む。
「さようなら。」
出逢ったからこその今があるけれど、尽くしてきた過去はもう過去。

「ちゃんと決別できたね。」
蓮がキョーコの頭を撫でる。
「清められたキョーコちゃんになら、愛してるって伝わるよね。」
驚いて見上げれば、キョーコに微笑みかけているのは金髪碧眼のコーンの笑顔で。
「コーン?!」
「キョーコちゃんの王子様はあんな奴じゃなくて、俺なんだから。」
キョーコの手を取るコーンの姿はいつしか煌びやかな衣装をまとっていて、すっと跪いてその手にキスを落とした。
「薔薇色のお返事を。」
真っ赤になってキョーコは立ち尽くす。
「キョーコちゃん?」
首を傾けたコーンがキョーコを覗き込んで、そして、立ち上がると驚くキョーコに顔を寄せた。
吸い付くように重なった唇。
まるでグアムの繰り返しのような。

「キョーコちゃん?」
おかみさんの声に、キョーコはハタと眼を覚まし、がばりと起き上がった。
「はいいっ!」
「七草粥、食べるかい?」
「頂きます!」
「じゃ、おりといで。」
「はいっ、すぐまいります〜」
真っ赤になった顔のまま、キョーコは慌てて身支度を始める。

「あれ?」

壁のポスターがあったところには少し壁の色が鮮やかに四角く痕を残すのみだった。
「夢、だったわよね?」
首をひねりながらも、キョーコは階下へ急いだ。


よい一年になりますように!



*******
きっと、キョーコちゃんは粥をすすりながら、敦賀さんがコーンになっちゃうなんて、さすが夢はご都合展開ね!とか考えるに違いないと思うのです。

いえね、松飾りを燃やすと聞いて、ショータロのポスターを燃やす妄想が。
失礼しました!










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