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紐解く

新春の薄ら桃?残念桃?





それはクリスマスと世間が浮かれ始めた頃のこと。
連ドラの収録が終われば、年末年始の特別番組の撮影が大詰めを迎える。だから、世間に先んじて雰囲気はもはや年末という様相だった。
「やっぱ、日本人ってカンジだよなぁ〜」
羽織袴の貴島が蓮に話しかける。好評の缶コーヒーのCMの新春バージョンの撮影である。
初詣のお供に。着物の袂から暖かい缶コーヒーを出すという、その撮影は野外で行われていた。神社の境内と参道、エキストラも動員しての撮影だ。
蓮は少しレトロな長めの黒とんびの下は着物に草履である。常とは勝手が違って少し座りにくいから、待ち時間も何とは無しにウロウロと歩いていた。折り畳み椅子では腰が落ち込んで、脚を前にまっすぐに投げ出さない限り、着物が着崩れるのだ。
貴島は慣れたように膝を開いてがっつり座っていたから、蓮は何かコツでもあるのかと思う。袴なのも大きいだろうが、シワを頓着する様子もない。
「あれ、あんまり着慣れてないんだ?」
座らない蓮に貴島が話しかける。
「まあね。」
「そっかーふぅん。」
貴島は意味ありげに蓮を見上げたものの、それ以上には会話を続けるでもなく、撮影中の境内に視線を戻した。
「やっぱ着物の女の子ってイイよね〜」
貴島らしい発言に、蓮は思わず笑みをこぼす。
「でもさ、あれ、脱がすの骨だよね。」
「は?」
「こうさ、帯をくるくるってのやってみたかったんだけどさぁ。」
蓮の戸惑いを置き去りに貴島は話し続ける。
「秘緒っていうんだっけ、紐が多くてさ。焦れったいての、それもまた良いんだけどさぁ。」
「何かあった?」
蓮はややため息混じりの貴島を怪訝そうに見る。
・・・そういえば、彼女も着物三昧だって言ってたな。
年末年始は時代劇が多く、「京子」のように着物の所作がスムーズな女優は引っ張りだこにもなる。付き合い始めて初めての彼女の誕生日もあいにく撮影でゆっくりは過ごせない。
「敦賀君はさ、京子ちゃんの着物、脱がせたことない?」
じいっと貴島に見上げられて、蓮はたじろいだ。
「なっ。」
釘を刺した手前、付き合いだしたことは貴島には知られている。
「てか、まだ清い関係?」
「はは、想像にお任せするよ。」
内心の動揺を「敦賀蓮」の仮面に潜ませる。
「まったー勿体ぶっちゃってさ。いいや、やっぱ京子ちゃんに教えてもらお。」
貴島はあっさりとまた視線を撮影現場に戻す。その視線の先には、小袖姿の共演女優の姿。日本酒のコマーシャルや時代劇など、着物を着せたら右に出るものは無しと云われる美人女優である。艶というのだろうか、襟足から覗く白い項がほっそりしていて、貴島のタイプだというのは蓮にもわかる。
「教えてもらうって、、。」
「京子ちゃん、着物慣れしてるだろ?彼女ともさ、共演してるんだけど、なんだか楽しそうに着物談義してるんだよねぇ。」
はぁと貴島が大きく息を吐く。蓮は蓮で、キョーコが貴島と共演しているのは知っている。まして、その美人女優に良くしてもらっているのだという事も楽しそうに話してくれるから、やっかむ心を押し殺して聞いている現場の話だ。そこまで思い返して、貴島がその女優と良い雰囲気だとキョーコが言っていたのを思い出す。
「着物はなんての、貞操帯みたいでさ。」

「はい、これ。ちゃんと眼を通して、できれば練習して頂戴。」
数枚の紙をテンが蓮の手許に突きつけた。
「ミス.ウッズ?」
「ちがーう!」
ぷうぅっとテンを頰を膨らませる。
「いいこと?和服はね、簡単にお洗濯ってわけにはいかないのよ?」
ビシとテンが伸ばした人差し指が蓮に向けられる。蓮はテンの言わんとしていることがわかって、ザァッと汗をかいた。
それは数日前に遡る。
日中に貴島と着物の話をしていたその日、キョーコが喜色満面で振り袖姿で蓮をたずねてきたのだ。撮影で着たお着物をスポンサーの好意で頂いたのだという。
「勿体無くって着て帰ってきてしまいました。」
それは昔初めてメイクして貰ったとはしゃいでいた時を髣髴とさせて、蓮は愛おしさが募ってしまったのだ。
「きれいだよ。」
抱き寄せてしまって、そして、貴島が言っていた「脱がすの骨だよね。」を実体験した。併せや裾を割るのは容易く、またその様相があまりに淫靡で、脱がせきれずに暴走した挙句、振り袖を台無しにしてしまったのだ。
「もう会いませんっ!」
キョーコがぐすぐすと泣きながら乱れた着物でゲストルームに引き篭もって、荷物を抱えて逃げるように帰ってしまった。そこから、電話にもメールにも返答がない。彼女の誕生日が迫っているのに、これではどうにもならない。そう悶々としていた蓮の前に、ぶりぶりと怒りを露わにしたテンがやってきたわけで。
「御正月のキョーコちゃん、おきものだからね!」
「えっ。」
大晦日の番組に着物で出演するのだとテンが告げる。どういうルートであの顛末がテンの耳に入ったのか、蓮には頭の痛い話だったが、別れ話が浮上しているわけではないと知って、ホッとしてもいた。
「仲直りするんでしょうけど、同じ轍は踏まないで頂戴、周りが大変なのよ。」
蓮は持たされた紙に視線を落とす。
『着物の正しい脱がせ方』
それは見覚えのある見出し。
年末の撮影現場で、にやにやした貴島が休憩時間に蓮に渡してくれたそれと同じだった。
「敦賀くんもやっちゃったんだって?」
にたーと嗤った貴島が、蓮に内緒話というように片手を添えて顔を近づけた。
「これかなり重宝したからさ。」
折りたたまれた紙。
「じゃ、お互い良い年を!」
ひらひらと手を振って去っていく貴島の向こうには件の美人女優が着物姿で立っていた。
・・・上手くいったんだ。
蓮はぼんやりとそれを見送りながら、暴走した自分の話がキョーコから女優に、女優から貴島に流れたのだとがっくり力を落とした。キョーコが落ち込んでいるから、誰しも相談に乗ろうとしたのだろう。自分の悪事がばら撒かれるようでいたたまれないが、自業自得でもある。斯くなる上は、心配する周囲のアドバイスに従うのみだ。


帯〆、帯揚げ、帯枕、帯、
シュルリ
するり
はらり
包み込むものを一本一本紐解いてゆく。
ほうっと切なげに溢れる吐息。
そうっと広げた着物から広がる薫り。
こくりと息をのんでつまびらかにする。
伊達締め、腰帯、
はらり
紐解いて明らかになっていく瞬間。


「あけましておめでとう。」
お互いの顔を見て、微妙に頰を染めてしまった蓮と貴島が、一体なにを思い浮かべてしてしまったのかは、、ここでは敢えて触れないでおく。
「良い年を迎えられたみたいで、何より。」
「うん、助かったよ。」
「そっか。」




*****
ああ、もうすみませんよーとっちらかった妄想そのまんまで。
紐解いて開けた年、、ちょっと桃いねと。
キョーコちゃんに脱いでもらいなよ、とか、ああ、白襦袢でお布団にちまっと正座されたら、やばいよねとか、でもやっぱりガツガツしながら帯を紐解くのが良いよねとか。脱がすなら赤い襦袢が卑猥だよね〜とか。
ほんとはそういう会話を貴島さんとして欲しかったんですが、蓮さんはどうも乗ってくれなくて。




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