スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

web拍手 by FC2

わるいまほう

ぬぬぬ、オフィスラブ??
長いわ、纏まりないわ、、でも渦巻く妄想は吐き出してみましたよ!



「最上さん、この資料修正してくれないか。」
ばさり
音を立てて置かれた書類の束。所々に付箋がつけられているのが、キョーコの机からもわかる。キョーコを「最上さん」と呼ぶ上司は、キョーコの右隣に50cm程空間を開け部下を見張るような向きに机を構えているから、その机の上は視界に入るのだ。中央にパソコンディスプレイ、キョーコ側には電話機をおく彼は、社内の女性陣の人気を一手に集める・・社内史上最年少の課長。まだ20代だとキョーコは聞いている.
180cmはゆうに越える長身なのに、座ればディスプレイに隠れるぐらいだから、、要は脚が長いということで、整い過ぎとまで言いたくなる顔立ちはすっきりと小さめだ。にこりと微笑めばきらきらと光がこぼれるようだとつけられた渾名は「春風の貴公子」。ホストクラブじゃあるまいし、噂を耳にした同期の奏江がキョーコにぼそっと感想をもらしたのを思い出す。彼の机は窓に背を向けた配置のせいか、日中は後光が差しているように見えて、まともに見れないというか見たくないのだが、キョーコは椅子から立ち上がった。

「いつまでに仕上げれば宜しいでしょうか?」
その上司に淡々とキョーコは問う。この課に配属されて三ヶ月。羨ましいと言われるより、気の毒と言われる事が増えた。「春風の貴公子」は仕事の鬼、この三ヶ月で、キョーコはこの上司と仲良くやっていこう、という変な気遣いを放棄した。
「いつまでにできる?」
チラリとキョーコを敦賀課長の秀貌が見上げる。キョーコは置かれた書類の表紙を確認し、手に取りサーっと捲ると、「1時間頂ければ、指摘通りには修正できます。」と、機械的に答えた。
「では、1時間。」
にべもない回答。
・・指摘通りには、、それはキョーコの見解を交えず、単純に打ち直しするだけですが?という、キョーコの精一杯の嫌味も込めていた。元はキョーコの提出した資料である、、ざっと目を通しただけでも、指摘の意味は判った。課長と視点がズレてる、そういう事だ。そのズレの議論をする間はないから、ただ修正しろという事。
資料が必要な会議が明日なのは、キョーコも把握している。配布物ではないから、急いで仕上げる必要はない。問題は、課長と同行するキョーコが、ズレたままでは困る、という事だ。

キョーコの正面、つまり課長の右前に座る椹主任が驚いた顔で腰を浮かせた。
「最上さん、大丈夫か?」
書類を手に戻ったキョーコは正面の椹に笑顔を見せる。そう、キョーコにはキョーコの仕事があり、その締切は本日17時、時計は15時をさそうとしていた。同じ案件に関わる椹も必死で資料をチェック中なのだ。
「課長は無理を仰いませんから。」
にっこりとキョーコ微笑んで席に着く。椹とキョーコが準備しているものをチェックするのも敦賀の仕事なのだから、たぶん考えがあってのことだ、とキョーコは思っている。仲良くはなりたくないが、敦賀の無茶振りはないと、それは信用するようになった。キョーコができると判断し、必要な事柄だからの指示で、いつまでに?という質問は単純にキョーコが予定通りにこなせているかの確認にすぎないことを、わかっている。
・・・この課は仕事が多すぎるから。
締め切りギリギリの案件が併行して5件はざらの「解決屋」営業企画第三課。
同じ営業企画の他二課の尻拭いという、もっぱらの評判。実際、「こじらせ事案」がほとんどだし、にもかかわらずきちんとした形にしてしまうから、結局せっぱつまったものばかりがやってくる。
「ほら、敦賀君がにっこりとすれば、相手方も丸め込めるからさ。」
スピード出世を快く思わない連中の声。

三課には椹とキョーコ以外に3人、その5人が何をしているか、どう進めているかも敦賀は全て把握していて、仕事を振り分けているとキョーコは思う。ただ、課に振られる仕事をもうちょっと調整しようとしてほしいとは、感じている。
「敦賀課長、最上さんが気に入らないみたいよね。」
同じフロアで働く女性陣は、キョーコを気の毒がる。課長からバンバン仕事を振られている様子は、信頼よりはイジメに見えるらしい。
・・・まぁ、そうみえたほうが楽なんだけど。
キョーコは肩をすくめる。
スピード出世は上層部にウケが良いという事、その上容姿が良い独身男性となれば、その近くにいる女子は妬まれるのがオチ。陰口ぐらいならいいが、業務に支障をきたす場合もある。キョーコには苦い経験がある。
「正面突破ばかりが仕事じゃない。」
まだキョーコがこの課に配属になる前、女性社員の嫌がらせが元で敦賀に迷惑をかけてしまった事があり、謝罪した場でそう言われた。キョーコはその言葉に救われたし、それで、行動を見直した結果、仕事が余計なことで邪魔されることは少なくなった。
だから、敦賀の下で働くのは一々学ぶことが多くて、キョーコは大変ながらも仕事の充実感は覚えている。
・・・ただ、嫌われてるのに愛想振りまくほど、人間できてないのよ。
そう。
気に入らないみたいよね、は、当たっているとキョーコも思っている。ふつう相性のあわない人と仕事をするのは苦痛だと思う。ただ、敦賀の場合、キョーコを気に入らなくても、仕事の能力評価にマイナスではないらしい。だから、キョーコは無駄口も愛想笑いも敦賀には向けず、仕事のことだけをきちんとという関係に徹しているのだ。
「似非紳士」
キョーコは内心で敦賀をそう評価する。折衝が必要な場での、害のなさげな笑顔。裏で何を考えているのかとキョーコには思えるのだが、世間一般ではそうでは無いらしい。丁寧な物腰など紳士然とした振る舞い。その一方で、キョーコに対してはズケズケと厳しい事を言い募る。

「おっかしーな、ウチに君を寄越せって、圧力かけてきたの蓮なのになぁ。」
人事部の課長補佐の社が、首を傾けていた。キョーコの前の所属は総務部庶務課、人事部とは同じフロアだったこともあって、よく話しかけてくれる人だ。敦賀を名前呼びできるのは、大学のサークルの先輩後輩だからだという。仲がよいらしく、社はちょこちょこ敦賀を訊ねてくる。その社がキョーコに話しかけてきたのは、ランチタイムの社食でのことだ。キョーコは奏江と千織という総務部へ同期で配属された、数少ない社内の友人と憩っていたのだが、二人がキョーコの激務ぶりに「パワハラじゃないの?!」と声を荒げたのを聞きとがめたのだ。
「聞き捨てならない発言だなぁ。」
眼鏡の奥の表情が少し読めなかったものの、奏江と千織が、キョーコが異動になってこのかた痩せただの、特製弁当にありつけなくなっただの、ちょっと仕事とは違うところに愚痴をぶちまけたから、キョーコは内心ほっとする。美人だが他と馴れ合おうとしない奏江に、可愛いのに言葉が辛辣な千織。社内で浮きがちな二人だが、世慣れていないわけではない。
「キョーコちゃん、大変?」
社は空いていた席にちゃっかり腰掛けて、食べ始める。
「ちょっと忙し過ぎると思うことはあるんですけど、大変というほどには。」
にっこり
社が柔らかく微笑んだ気がして、キョーコは驚く。
「うん、良かった。忙しいんだよね?」
「・・・。」
3人が顔を見合わせたので、社がしまったという表情になる。
「いやその、、。あいつ、他人に仕事が振れないからさ。」
「へ?」
「あの課、いまでこそメンバー落ち着いたけど、任せてもらえないって、くじけちゃう人が続いたんだよ。」
「はぁ。」
「なんか、感じ悪くないですか?キョーコには命令しやすいみたい。」
奏江が口をはさんだ。
「あ、それは違うから。あいつ、人に何か頼むってことできないから、命令もないんだよ。」
「・・わかる気はするんですけど。」
「よっぽど信用してなきゃ、仕事を振るなんてできないんだよ、完璧主義だから。」
社が力説し、だからキョーコちゃんはすごいんだよ?と付け足す。
「ありがとうございます。仕事は信用されてると思うんですけど、なんていうんでしょう、、人としては嫌われてると思います。」
キョーコの発言に、社が驚いた顔をした。そして、冒頭の「寄越せって、圧力・・。」の話になったのだ。
「だからね、嫌うってことはない筈だよ。」
社の力説に、若干キョーコ達はひいた。
「そうでしょうか?」
キョーコは少し俯いた。
「・・すいません、好悪で仕事が変わるわけじゃないですし。」
「や、でも、それ、何か勘違いだと俺は思うんだけど。」
社が慌てる。
「もしかして、敦賀課長って、好きな子には意地悪っていう?」
口に出した千織にキョーコは驚愕の顔を向けた。
「キョーコさん、その顔、酷いですよ。」
「まぁ、アンタの場合、今、人の好意なんてものが信用ならないんでしょうけど。」
「・・・・。」
きょとんとした社に、奏江が迂闊な発言だったと眉を寄せた。
「蓮が天邪鬼かぁ、面白いな。」
「へ?」
「あいつ、もてるわりに彼女いたとか俺知らないんだよね。」
社の発言に、三人の顔は能面のように表情を無くした。
そもそも、三人の話題は、モテすぎる男の性格の悪さだったのだ。
・・自分になびかない可愛げのない部下に対する冷たい態度。
「まあ、仕事は大変ですけど、やりがいは感じてます。」
キョーコは社が、敦賀のコイバナを披露する前に話の矛先をかえた。


・・・嫌われてる。
異動してきて課のメンバーが催してくれようとした歓迎会が、敦賀の一言で中止になった時に、ほぼキョーコの中で確定となった。あとからわかったのは、皆残業が続いていたし、敦賀自身は出張の可能性がある日程で、形ばかりになってしまうから、ということだったが、改めて場を設けるようなこともない。
「そういえば、キョーコちゃんが来てから、みんなで飲んでないですね。」
石橋が何気なく言ったときに、キョーコはぎくりとした。
「なんか、ずっと仕事テンパってたし、この山越したら、ぱーっと行こうか?」
敦賀が席を外していた間に、そんな話になる。
「この山、ってどの山だよなぁ〜」
「年末に向かってもっと酷くなるかもしれないぞ?」
「去年も年末はゆっくりできたから、大丈夫ですよね。」
椹と隣り合う石橋が肩を廻しながらそう答えた。
「最上さん、飲めるんだよね?」
ディスプレイ越しに椹がキョーコを覗き込む。衝立のない机。
「はい。」
にこりとキョーコは微笑む。
「じゃ、課長に確認しとくかなぁ。」
椹の楽しそうな声に、キョーコは暗澹とした気持ちを呑み込んだ。
庶務課の時の一言に救われていたから、敦賀の下で働けるときいて嬉しかったのだ。けれど、歓迎されているわけではないと思えば、その反動がきつい。
・・・好意を期待したから、いけないんだ。

机の位置も最初は端だったのだが、「仕事ぶりがわからない。」その理由で今の位置に変えられた。その位置になったおかげで、他部署の人などにホイホイと話しかけられることは激減したから、、今となっては、仕事に集中させるのが目的だったのかと気付けたのだけれど。
お茶だし、三時のおやつ。庶務課でキョーコが担当していたそれらのことは、三課では禁止事項。
飲み食いは個人で、他人の時間を奪うなという。
「自分の仕事をしろ。」
異動してきて、ずっとそう言って怒られてきた。
フロアにいる人にもわかるように怒られているから、皆、気の毒そうにキョーコを見る。
「敦賀課長って怒らない人なのに、怒らせるなんて、あなたよっぽどね。」
以前、隣の二課の薪野にそう言われたとき、キョーコは項垂れた。
今となっては、庶務課ではいいように使われてただけとも思うけれど、異動したばかりのころは庶務課に戻りたいと願っていたような気がする。
「そんなに使えないと思っていらっしゃるなら、ここから外して頂けないですか。」
キョーコが堪え兼ねて、敦賀に噛み付いたときに、冷然と言い返された。
「外す気はないね。」
「わかりました、会社を辞めろということでしたら、別の職を探します。」
肩たたきという言葉がわからないキョーコでもない。
「どうしてそういう結論になるんだ?」
がたん
乱暴に立ち上がった敦賀に、キョーコは後じさる。
「使える人材だから、外せないといったんだ。」
「は?」
「最上さんは、おだてなくても仕事をちゃんと考えるだろう?評価してるんだけどな。」
「はぁ。」
「少しは嬉しそうにしてくれても、いいと思うんだが。」
「へ?」
「これで、どうして、褒めていると気付かない?」
「褒められている気がしません。」
「・・・・。」
とはいえ、そのやりとりがあってから、キョーコが落ち着いたのは事実だ。
周囲の誰にも褒められているようにも見えないから、妬まれない。仕事ができないように思われているかもしれないが、「敦賀課長のお眼鏡に叶う」のが大変だというのはすでに知られた事。椹や石橋が、邪険にしていないから、足を引っ張るほどではないというのはわかるらしい。その結果、仕事云々ではなく、「女の子」として扱われていない、という評判になる。


「大変らしいじゃん。」
ニヤニヤと嗤う男を前に、キョーコは腹立ちを抑えきれない。
「何の用よ。」
「花の広報部に栄転したって聞いたのにさぁ、貴公子に怒られっぱなしなんだってなぁ。」
全ての仕事を〆切に間に合わせて、ほっと一息つきに休憩所に足をむけたことをキョーコは悔やんだ。17時過ぎ。終業時刻前に帰参する営業がここにたむろうのを、うっかり失念していた。
「だからなに?」
「営業にお茶汲みに来いよ、お前、そういうのだけはうまいじゃん。」
カチン
「厭よ。」
「なんだよ、俺が誘ってやってんのに。生意気。」
「アンタがなんていおうと、人事は動かないわよ。」
営業のルーキーとかいわれて、鼻高々なんでしょうけどね、それが何よ。キョーコは内心毒づきながら、カップに入ったミルクティーを手に、不破に背を向けた。
・・・忌々しい幼馴染み。
庶務課でやられた嫌がらせの原因は、この男だった。
・・・昔からそう。
目立つ事が大好きなこの幼馴染みは、要領もいい。
がつっ
掴まれた腕、そこから抜き取られるカップ。
「なっ。」
「はー、やっぱり疲れたときには甘い物だよなぁ。」
一気に飲み干した不破が嗤う。
「自分で買いなさいよ。」
「ばっかじゃね?この俺様がミルク増量と砂糖増量のボタン押してるなんてみっともねぇだろ?」
「は?疲れたときには甘いものだといえばいいじゃない。」
「ほんと、お前うるせーな。」
「構わなければいいでしょ。」
キョーコは一度向きかけた姿勢を正して、休憩所を去ろうとした。
「まったく可愛げがねぇなぁ。だから、女扱いされてないんじゃね?」
ぐっ
どうして、どいつもこいつも!キョーコの眼にはからずして涙が浮かんだ。
会社は仕事をするところだ、どうして、課長が敦賀だからといって、そんな風に評価されなくてはいけないのか。あの人の部下だからって、あの人に好いてもらおうとか女扱いとか、どうして、そんなことを考えなくちゃいけないのか。

「最上さん?」
こみ上げた涙がおちないように見上げた先に、敦賀の顔があった。
「お、お疲れさまですっ。」
キョーコは慌てて頭を下げると、涙を指で拭って、顔を合わせないように、俯き加減で歩き始める。
ふわ
まるでその行く手を遮るように敦賀がキョーコを抱きとめた。
「君を探しにきたんだけど。」
「え、す、すみません!」
キョーコは後じさる。
「謝る必要はないから。その、、君の歓迎会をやりたいと思って。」
「あ、、」
「明日が終われば、課の仕事は一段落だからね。打ち上げも兼ねてで申し訳ないけど。」
「そ、それでどうして、課長が?」
微妙な間。キョーコは自分の涙を隠すのに懸命で、敦賀の顔を見上げられない。
「社さんが、、その、君に誤解されているというから。」
「誤解?」
「俺は、君を嫌ったつもりはないよ。」
ぽん
肩に置かれた大きな手がとても暖かかった。

このとき、たぶん悪い魔法にかかったのだ。


おわり



*****
ここから転がるように秘密の恋だよね〜と妄想は渦巻いてますが。
一応、長編を匂わせ短編で止めておきます。


関連記事
web拍手 by FC2

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

message
場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
最新記事
counter
カテゴリ
flyaway news twitter
ブログとHPの更新状況とちょっと呟き フォローはご自由にどうぞ!(フォロー返しはあまりないかも)
Link
上部のサイト様は相互リンクいただいてます。 マナー携帯でご訪問くださいませ。 下部のサイト様は大好きサイト様で、リンクフリーに甘えさせていただいてます!!
検索フォーム
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。