Shinkai-gyo10

解説と目次


暗闇に降る雪のように
ちら、ちら
落ちてくるのは小さな光の粒

海上が荒れてもたらすもの

迷い込んできた光は
あっという間に、闇に呑み込まれてしまうけれど
あっという間だからこその

儚い夢

【Shi・N・Kai・Gyo】

きら
小さな煌めきが、キョーコの首元に踊る。
薄桃色の雫型の宝石

「この形はね、神々のこぼす涙、乾いた地におちる慈雨の形ね。、、悲しみを癒し、復活を象徴するものなの。」
宝石を受け止めるようにデザインされたペンダントヘッド。
「癒し、、復活。」
キョーコが反復する。
「そう、、貴女に、今必要なものだと思うわけ。」
「必要?」
きょとんとしたキョーコに男は続けた。
「自分自身を信じて、って、最初にいったよ?」
それを蓮は黙って見守っている。
クロスかキーか、勾玉か、、護符ならそれが一番効く。けれど、それを彼は選ばなかった。そしてキョーコもまた示された数々のデザインから目を止めたのは柔らかい色の涙。
・・・彼女に必要なのは、癒し。

「なぁに?御守りをあげたかったのかもしれないけど、、、蓮ちゃん自身が御守りでしょ?」

余計なものを勧める野暮は嫌いなのよ、と彼が言った。
「蓮さんが、御守り。」
キョーコがほんのりと頰を染める。
「だから、安心して、あなたは自分を癒してあげなさい。泣くだけ泣いたらいい。」
「泣く。」
「弱いから泣くんじゃないのよ、泣いて流してしまうことも大切なの。」
キョーコがコクンと頷いた。

この、人を視る男が、、レイノに何も感じないのはどういうことだと、蓮の頭の片隅が考え始める。入り口でのやり取りを、知らなかった訳ではないだろう。
「蓮ちゃん、アタシは商売なのよ?」
蓮の疑問などお見通しだと言うように、男が言う。
「どちらに味方するでもないの。」
「、、、、あの鱗は。」
「さあね?アタシじゃない。作った人は、死んでるわね、可哀想に。そんなヤバいもの手を出したくないわ。」
店内のジュエリーに目を奪われているキョーコから離れたところで交わされた会話。
「彼女が目をつけられた理由はわかっても、何処でどうやってってことは、アタシには見えない。」
「目をつけられた理由?」
蓮がそれを口にした時、男が嗤った。
「蓮ちゃんが引き寄せられた、その理由よ。」
やめてよね?わかってなかったの?

マンションの地下駐車場に車を停めた。
戸惑うキョーコに手を差し伸べて、その首元に踊る宝石に、蓮は一瞬目を留めた。
この薄暗がりの場所で、煌く。
暗闇に灯る明かり。
・・・・引き寄せられる。
どこまでも昏い闇に灯る、光。
希望
願い


包んだ手に指を絡めて、歩き出す。
隣で少し俯くキョーコを伺いながら、蓮はゆっくりと歩く。
乗り込んだエレベーターは急速に海上を目指すのに似て、圧がかかる。
グォウン
静かな空間に機械が作動する音が鈍く伝わる。

昏い水底から天上を目指して浮上する。
水底でかかっていた重圧からの、急速な解放。


「あの、何処へ行くんですか?」
キョーコが蓮を見上げる。
目的の買い物は済んだのではと、キョーコの目が語る。
どう見たところで、ここはタワーマンションで、エレベーターの行き先階に光るのは最上階。
「どなたかのお家ですか?」
「俺の家、だよ。」
チーン
小さな鐘の音とともにドアが開いた。
広い廊下が開け、そこには厚い絨毯が敷き詰められている。
足音が立たない。
重厚なドアの前、蓮が慣れたようにカードキーを通すのを、キョーコは茫然と見ている。
すっと開いたドア。
「どうぞ。」
蓮はキョーコに囁きかける。
握った手を前に促し、玄関へ誘った。
戸惑うキョーコの背に腕を回し、前に進む。

「お家がふたつって、。」
キョーコは座らされたソファで小さくなりながらも、周囲を見回した。
、、、滅多に帰ってこない。
奏江の言葉がキョーコの頭に浮かんだ。
、、、モデル以外の、仕事。
「うん、まぁ、隠れ家かな。コーヒー淹れるから、、気になるなら、家中見てもらって良いよ。」
蓮がキッチンのコーヒーメーカーに向かいながら、キョーコに斜めに背を向ける。
、、、見て良いと言われても。
キョーコは目の前のテーブルに視線を落とす。
シンプルな飾り気のない部屋。
隠れ家というには、あまりに広い。
キッチンに立つその後ろ姿に、、蓮の体格を思った。
高い身長、長い手足。
彼の胸のうちが広くて、安心できるのを、キョーコは知っている。
・・・男と女が、、
アノ声。
きゅう
キョーコは俯いて、膝を更に寄せた。
・・・好きだ
浮かんだ声にかぁっと顔が火照って、慌てて、両耳に手をあてる。
頭の中に響く声に、耳を塞いだってどうにもならないのに。
・・・ほとんど知らない人なのに!
知っているのは、奏江の兄で、モデルで、、暖かい大きな手をしていて、、
安心して眠れてしまう胸の中だけだ。
・・・破廉恥よ・・

ショータローのことは何だって知っている。
プッチンプリンが大好物だとか、甘い卵焼きが苦手だとか、歌が好きで上手で、、、
褒めれば喜ぶし、気取っているけど、お笑い番組が何より好きだとか、笑い上戸だとか。
でも、安心できる胸か、暖かい手なのか、、知らない。
・・・知らない。
器用にギターをかき鳴らす、少し筋張った手の質感を、、、知らない。
近寄ったときにくすぐる香りは、、キョーコが選んだ柔軟剤の香りで。
蓮の腕の中で吸い込む薫りとは違う。

ちろり

キョーコは視線をあげて、珈琲カップを棚から取り出す蓮を見た。
・・・私の何を、好きなんだろう、そう思ったけど。
きっと、私の何を知っている訳ではない。
ただ、抱きすくめた感触を、、、知っているんだ。
繋いだ手、絡めた指、触れて触れ続ける感覚。

もっと、知りたい。

触れ合う感触を?
彼が何者かを?

耳から首へ落とした両手が、ネックレスに触れた。
「癒し」
「御守りは蓮ちゃんでしょう?」
そのくすぐったい言葉の響き。




*****
ネット接続の問題で、一回記事が消えました・・・(涙)
やっぱりテキストで書いて、貼るのがいいのかも。。
書き直したこちらのほうが、良くなったとは思いつつ。

そうそう、前回のアンケートにコメント下さった方、ありがとうございます!
おお、そういうのもありかとか、楽しませて頂いております〜
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