Shinkai-gyo 7

解説と目次


昏い、昏い、
重い、重い、
密度の濃い闇の中、
出逢うものは、僅か

出逢った相手は運命の相手

その運命は

生を繋ぐのか

死を招くのか


【Shi・N・Kai・Gyo】


「やめて下さいっ。」
蓮の手を掴んで拒んだキョーコの手。
それに構わず進めた先で。
びくぅっ
震えてキョーコの身体が硬くなり、痛っと声が漏れた。
・・・痛い。
蓮は弄ろうとした指を止める。
「どうして。」
キョーコは蓮が動きを止めたことに、安心したようだった。
「男が女と一緒に眠るのは、どういう事か知っている?」
背を向けたままのキョーコの耳元に蓮は囁く。
「それは、、。」
言い淀んだキョーコの声。
「ひょっとして、、経験、ないの?」
それは、希望を籠めた質問。
「・・・・・酷い。」
少し震えたその声に、蓮は抱きすくめた身体を自分に向き直らせた。
真っ赤になった瞳から、滲み出る涙。
「ごめんね、でも、大切なことなんだよ。」
蓮はその頬を、髪をゆっくりと撫でる。


「ネックレスをつけてた時間の長さにもよるのだけど。」
ミス.ウッズは顎に拳をあて、蓮から視線を外した。
「その子、蓮ちゃんから見て、まだ、アチラ側の感じは無いのよね?」
「ええ、ありませんね。」
蓮はキョーコであることを言い出せずに、飲み込む。社長やミス.ウッズさえ、気づいていないのだから。そもそも、この事務所にいて誰も彼女に異常を感じてはいない。だから、解決してしまえば、彼女は何も気づかずに、気づかれずに生活し続けられるはずなのだ。
「でも、蓮ちゃんがネックレスに気づいたってことは、何かあったんでしょう?」
「夢見が悪いそうなんです。」
ミス.ウッズが険しい表情のまま、蓮を見上げた。
「、、、一歩手前なのね。」
シン、、、
冷ややかな静寂。
「止める事は出来ないんですか?」
「難しいわよ?」
「止められなかったら?」
口にした蓮も、耳にしたミス.ウッズも、また黙った。
・・・・闇の餌食。
「よっぽど気に入ってるんでしょうね。この鱗で他の連中を退けるぐらいなんだし。」
「大物っていうことですか?」
「そうね、その辺にチョロチョロしてる連中とは違うわね。」
そう言ってから、ミス.ウッズが昏く声を落とした。
「、、花嫁への贈り物だから、、手出し無用、という強力なマーキングよ。」


家に向かう蓮の足取りは重い。
あのネックレスに感じた禍々しさ。
抱きすくめて安らぐ自分の感覚。
にこにこと微笑みかけてくれるキョーコの顔。
・・・闇の花嫁
その言葉の絶望的な響き。
それでも、あの尚という男は、ただの人間だった。
すれ違った時の感じに、アチラ側の気配はなかったのだ。
一体誰が、彼にアレを渡して、キョーコにプレゼントさせたのか?

「ネックレスが外れたことを知ったら、「本人」が迎えに来るかもしれないわ。」
ミス.ウッズの声が蓮の頭に響く。

奴等は闇夜に動く。
今晩は満月。
月光は夜を薄明るい世界にしていた。
だから、きっと、迎えに来るのは、新月の、夜の闇が深くなるその時。
それまでに。

此方の世界と繋いでしまわなければ。

「彼女が心から想わなければ、意味ないのよ。」
ミス.ウッズが心配そうに蓮を見上げる。
覗き込む大きな黒い瞳の奥に、煌めく光。

・・・貴方が人をちゃんと愛せるようになったら。
願うようなその声は、眩いばかりの美貌の人のもの。
・・・私達のもとへ戻って来れるのよね。
ちゃんと愛せるようになったら・・
蓮の心の奥底にいつもある儚げで優しい微笑み。


蓮は抱きすくめたキョーコの潤んだ瞳を見つめる。
ツキン
甘くて苦しいその胸の感覚。
「好きだ。」
口をついた言葉。
見開く潤んだ瞳、さっと頬に走る紅潮。
「酷くしたい訳じゃない。」
髪を、小さな耳朶を撫でて、顔を寄せる。
溢れそうになる涙に唇を寄せる。
ぴく
腕の中で小さく震える身体。
それに拒否の気配はないように蓮には感じられて、唇を、唇に重ねた。

「嘘でも、、、嬉しいです。」
離れた唇が、零した震える声。
「嘘なんて、どうしてそんなこと言うの?」
蓮はその瞳を覗き込む。
「誰も、私を好きには、、なってくれなかった、から。」
あのっ。
「こんな身体でも、お役に立つのでしたら。」
キョーコが眼を閉じて振り絞るように言った。

「違う、ちがうんだ。そんなんじゃ、ない。」
蓮はその細い躯を抱きすくめる。
「こんなふうに、抱きしめたいなんて、君だからなんだよ。」
ツキン
「君が居ると思ったら家にも帰りたくなるし、君が作ってくれるから、ご飯も美味しいんだ。」
ツキン
「こうやって、君の体温を、君の薫りを感じて、、ぬくもり、って言葉を実感してる。」
ツキン
「ぬくもり、、」
キョーコが蓮の胸に埋もれた。

「私も、ぬくもり、が欲しいです。」



*****
蓮さんの回想がフラッシュバック的に入るので、読みにくいですかね?
っていうより、闇のモノって何よ?という感じでしょうか・・。
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分かりにくくないですよ。

こんばんは。お話は濃密な夜の気配とどこか、怖いような冷ややかな気配が入り混じって、興味深いです。蓮様のナラティブも分かりにくい感じはないです。冴えざえと光る月夜に暗い雲が時折かかってまた抜けていく、みたいな印象の回想と今の切り替わりも楽しんで拝読させて頂いています。まだまだ全容の見えない展開に、怖いもの見たさの好奇心で引っ張られますね。続きを楽しみにしています。どうもありがとうございました。

Re: 分かりにくくないですよ。

> genki様

コメントありがとうございます!
別件ですが、そんなに分かりにくい文章書いてたっけ?!と凹んでしまった矢先なので、嬉しいです。
月夜にかかる雲が抜ける、、いつもながら素敵なコメントに書く気が倍増しました。
怖いもの見たさ、、期待にお応えできますように!
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場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
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