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Shinkai-gyo 4

解説と目次


地上の明かりは、此処までは届かない。

深い、深い、海の底。

其処にあるのは、僅かな光。

僅かなその小さな煌めきに、吸い寄せられるのは闇世のモノもあれば、、
永遠の片割れを求め彷徨う同類もいる。

昏い、昏い、漆黒の闇。
そこにひっそりと棲む「深海魚」

灯す明かりは、希望へのよすが。

【Shi・N・Kai・Gyo】


はぁっ、はぁっ、はぁっ

胸を抑えて、キョーコはベッドの上で身体を起こした。
隣に蓮の姿がない。
ベッドサイドのオレンジの灯りをみて、ほぅっと大きく息を吐く。
すっと額を拭った右手の指に、汗がまとわりついてくる。
時計は3時を過ぎていた。

・・・蓮さん、帰って来ないんだ。

ぱたん
キョーコは両手を投げ出して、またため息ともつかない息を吐いて、ベッドを降りる。
ひやり
床にマットは引いてあるものの、夜の冷気が足元から上がる。
モコモコのスリッパに足を滑らせて、そうっとキッチンへ向かう。

「飲むなら、こっちを飲みなさいね!」

奏江がびしっと言い放ったのを思い出して、キョーコは冷蔵庫を開いた。
ここの家の冷蔵庫にはミネラルウォーターのボトルが常備されている。飲用するのはこっちだと、奏江は言ったのだ。
美容オタクとも言える奏江のコダワリだとは思いつつ、遠慮しながらもキョーコはそれを手にする。
深夜に水道の音は案外響く。
そうっとコップにミネラルウォーターを注いで、キョーコはリビングのソファーに腰掛けた。

時々見ていたまるでホラー映画かのような、悪夢。
だんだんとリアルなものになってきて、眠るのが怖くなっていた。
最初は一面の花畑をフワフワと楽しく歩いているのだが、
「おい、キョーコ」
松太郎の声に振り返って走っていけば、いつの間にか真っ暗な空間に閉じ込められる。
そこに松太郎の姿はなく、というより、なにも見えない。
「ショーちゃん?」
キョーコは必死に手を伸ばすが、何にもふれない。
必死でかき分けているうちに、ひんやりと触れる感触にあたって、
いや、触れるとそれは、いやらしい感触のもので、、夢だというのに、生臭い。
そして、ぞっとするのだ。
後じさってもその感触が手を蝕んでいく。
見えていた筈の自分の身体が、暗闇に溶けて消えてしまうのだ。
息ができない!
そうやって眼が醒める。

この家に来て、夢を見なかったその朝、蓮に抱きすくめられていた。
偶然かと思ったら、彼が居るときはちゃんと朝まで眠れている。
どう考えても、相手は男性であって抱き合って眠るなど、普通ではないのに。
まして、相手は親友の兄で、ただ、それだけの関係だ。
だから、奏江が言うように部屋に鍵をかけた。
けれど、鍵をかけた晩は悪夢におそわれる。
破廉恥だと思いながら、キョーコは鍵をかけないで眠るほうが、安心だった。

・・・蓮さんがどういうつもりかは、判らないけれど。

勤めている芸能事務所のモデル。
美人の親友の兄と紹介されて遜色ない、、というか、ちょっと浮世離れした美貌の男性。
ちょっとその辺りが鈍いと言われる事の多いキョーコでも、蓮がもてる男であろうことはすぐに察しがついた。
だから、初日はただの事故だと思ったのだ。
それが、数日に重なると、それは嫌がらせなのかとも疑った。
でも、キョーコは安心して眠れてしまう。

「よく眠れるんだよ。」

蓮の口がそう言ったとき、キョーコはドキッとした。
・・同じ。この人が悪夢にうなされるなんて、想像ができないけれど。
蓮がそれを理由にするなら、キョーコにも都合が良かったのだ。
・・いやな夢を見ないで済む。

そして、キョーコは蓮に興味を抱いた。
全てを持っている、キョーコにはそう見える彼が、どうして、キョーコを抱いて眠ろうとするのか。
どうして、彼に抱かれていれば、あの夢をみないのか。


「キョーコちゃん、蓮を知っているの?」
事務所でも話しやすい人であった、社が蓮のマネージャーと知って、キョーコは挨拶をしたのだ。
奏江の兄という縁で、ご厄介になっているのだと。
社はかなり驚いていた。
「奏江ちゃんも人付き合いするほうじゃないのに、蓮も大丈夫だったの?」
「え、あの、とてもご親切にしてくださってますが。」
「いや、それならいいんだけど、驚いたなぁ。」
にこにこと社は笑顔ではあったが、キョーコはその反応にも驚いた。
「あいつ、奏江ちゃんもだけど、プライベートをほとんど明かさないからさ。家に住まわせるなんて、よっぽど君を信用しているんだな。」
キョーコが頼み込んだわけではないのだが、あの兄妹が面倒見がいいタイプには思えないから、社が言う方が正しいのは判る。
「でもよかったなぁ、最近ちゃんと食事を気にするようになったし、キョーコちゃん効果だったわけだ。」
「効果、ですか?」
「そ、少食というか、食を嫌悪しているみたいでさ、マネージャーとしては健康管理に悩むところだったわけ。」
「食を嫌悪なんて、それ、おかしいですよ。」
「だろ?なんかトラウマでもあるのかって聞いた事あるんだけど、はぐらかされてるんだよね。」
「ちゃんと食べてくださいますよ?」
そういいながら、初日の朝食をキョーコは思い出した。
・・朝食は生活の基本です!
初対面でよくあそこまでお説教したものだと、うっすら頬を赤らめる。
「よかった。キョーコちゃんがいるかぎりは、食生活の心配はいらないなぁ。」
社は深くつっこむこともなく、朗らかに笑って、じゃぁと去っていった。


事務所に勤めているから、蓮がこうやって帰って来れない理由がモデルの仕事だけではないということは、キョーコには判る。
「最近よく帰って来るのね。」
「だんだん帰りが早くなっているのね。」
少し意地悪な表情で奏江が蓮に言うぐらいだから、あまり帰ってきている家ではないのだろう。
・・・プライベートを明かさない。
親密なひとがいたっておかしくないのだもの。


「あ、そうだ。劇団の公演で1ヶ月ほど出ちゃうから、ご飯はいらないからね。」
朝の食卓、寝不足の顔を心配そうに見た奏江がそう告げた。
「・・あの、、兄さん、帰ってきた方がいいの?」
キョーコの視線から眼を背けた奏江の頬が、赤い。
彼女は彼女なりに、キョーコを気遣ってくれているのだと、伝わる。
「えと、モー子さんも複雑よね。」
「ま、そうね。」
「あの、ほんとにね、、、蓮さんがいると変な夢をみないで済むの、それだけ、なの。」
奏江が、キョーコに向き直る。
「それだけって、、それ、大切な事でしょう?」
その声はとても真摯なもので、奏江がどれだけ、キョーコを心配してくれているのかが伝わる。奏江も奏江で、兄が親友を抱いて眠るなんていう異常な事態に困惑していたのに違いない。受け入れた親友の感覚もまた。

「いいわよ、あんたが兄さんにそれを言いにくいのは判るから。私から、伝えて良い?」

キョーコは小さく頷いた。




*****
こっちがスラスラ続いてすいません。
なんだか続きがでてくるもので、、。


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確かにつかみどころがない話ですが

こんばんは。久しぶりにコメントを書かせていただいています。shinkai…、確かにつかみどころがない話ですが、それがこのお話の個性だと思って楽しませて頂いています。良い方にも、不気味な方にも、どちらにも振れそうな微妙なお話ですね。艶に行っても、オカルトに行っても、どっちでも面白そうです。

以前、浦島太郎的なお話がありましたが、あれがドライな古典的生物のお話なら、これはウェットな現代?または近未来?生物のような感じです。←わけ分からない…とか思ったらごめんなさい。
どうもありがとうございました。

Re: 確かにつかみどころがない話ですが

> genki様

コメントありがとうございます!

近未来生物のような感じ!嬉しいです。
ウェットなので艶ありのオカルトかな〜と書きながら妄想を広げています。
またしても蓮さんが何考えてるのか怪しい人になってしまってますけど、お楽しみ頂けたら幸いです。
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場内整備を勉強しておりますが、不行き届きがあって申し訳ありません。何かのご連絡等は<読者様相談窓口>にコメントをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
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