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ASH-11

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「一緒に寝ようか?」
耳許に囁けば、腕の中の身体がぎくりと跳ねた。
俯いたキョーコの耳朶が真っ赤に染まっている。
跳ねたのは、拒絶ではないとわかって、蓮はそっとその右手で、キョーコの髪を撫でた。
「眠れないって、言ってたよね。」
どくっどくっと、キョーコの心臓の鼓動が蓮に伝わる。
きゅうっと固まる身体。

「それは、その・・」
ちいさく、ちいさくキョーコの声がもれる。
「今晩は一緒に眠るだけでいい。」
「・・・。」
「君のぬくもりを、感じたいだけだから。」


さああああ
シャワーを頭からかぶって蓮は想いを馳せる。
あの晩そっと毛布を掛けて、その事にふれないキョーコの気持ち。
キスより先を恐れて強ばった身体。
「好き」
その気持ちが今は大切で。
行為を急いたら、何かが違ってしまいそうだと、危惧する心。
自分が求めるばかりではなくて、
求めて欲しい。

キスの後の蕩けるようなキョーコの表情を思い浮かべ、あがる劣情。
けれど、さっきの・・
「先にありがとうございました。」
たいしてゆっくりバスにつかっていられなかったのだろう、先にバスを使ったキョーコの頬は火照ることもなく、ただ、きゅっと引き結んだ唇だけが赤い、その様子が頭を冷静にする。

「もっと、ゆっくりしてよかったんだよ?」
その言葉を言いかけて、蓮は押し黙った。
ぎこちなく、なにかむず痒い空気。
「先に、寝ていて。」
蓮の言葉にキョーコが首を振るのは想定内で。
「湯冷めしないように、ね。」
「はい。」
顔を紅潮させてキョーコが頷いた。
頷いた時に覗いた細い首筋を、思う。

だから、ゆっくりとシャワーを浴びている心境ではなかったけれど。
抱き寄せて眠るという状況に、心の準備も必要な気がしていた。
今晩だけじゃない、明日、明後日と一緒に続いていく未来。

・・・未来

ずっと一緒に過ごしていく、未来。

「さようなら」
なんて、言われたくはない。
空回りしていたと思っていた気持ちが、そうでないとわかったのだから。
わかったからこそ、、
強く、
求めて欲しくて。

貪欲な自分に気付かされる。

鏡の向こうで、久遠が見ていた。

「俺の未来。」

あの子に「久遠」と呼ばせ、掴もうとしているもの。
コンタクトのケースを持ち上げて、そして、そのまま戻した。

あの子の前で、偽りをこれ以上は重ねない。

ここにいるのは、久遠・ヒズリ。
鏡の中の碧眼を見つめる。

もう否定はしない。

ぎし
軋む筈の無い廊下がいやに大きな音をたてた気がした。

寝室のドアはしっかりと閉まったままで、キョーコはやはりリビングにいるのだと、蓮は確認せずに、リビングに足を向けた。
「あ。」
ソファーに座り、台本を追っていたキョーコが顔を上げる。
その表情が少し戸惑って、そして、大きな眼が見開かれた。

「え。」

蓮は微笑んでみせる。

「やっぱりすぐわかるものなんだね。」

リビングの昼光色の明かりでは、そう目立たないかとも思っていた。

「どうして。」

キョーコが台本を膝に落として、両手で口を覆う。

「こっちがね、本来の眼なんだ。」

「その色って。」

キョーコの表情はただ驚きに満ちていて、それ以外の感情を見せてはくれない。
「そんなに驚かれると、、」
蓮は言葉を探す。
これで、「コーン」だとわかるのかもしれないし、違う答えを導いてきてもおかしくはない。
「やっぱり・・。」
蓮はその言葉に覚悟した。
「・・・・妖精の血が入っていたんですね!」
少し興奮気味のキョーコの表情に、蓮は固まった。
「妖精の血?」
「あ、あのっ、グアムでコーンに会ったってお話しましたよね?」
「う、ん。」
蓮はキョーコの横に腰を落とした。
それは緊張が抜けた勢いのようなもので、脱力して、その身体をソファーに預けるようなものだった。
「その、、、コーンの姿が、、。」
急に勢いがなくなったキョーコの言葉とは裏腹に、彼女の顔が真っ赤に染まっていく。
「あの、その、、そっくりで。」

蓮の心の中を満たしていくもの。
溢れ出していく歓び。
グアムで、反芻した人の声で姿である、と言ったのは自分で。
キョーコがそれを「敦賀蓮」に詳細に説明していなかったのは。
彼女のいうところの「ファースト・キス」の相手が、先輩の姿を借りた妖精だったとは、「先輩」にいえるはずもない。

「だから、妖精のDNAが入っているんだって。」

「姿形は魔法でも、その、、あの、、笑顔が、全く同じだなんて、魔法でもできないと思うんです!」
がばりとキョーコが蓮に身体を向けた。
「コーンのこと、信じて下さったのは、だからですよね!」
「絶対に黙ってますから、安心して下さい。」

「ありがとう。」
くすくすと蓮は笑いをこらえながら、キョーコの頭に手を伸ばした。
君にはかなわないよ。

俺はたくさんのものを君から貰っているんだ。

「もう、休もう。」

その愛おしい存在を抱いて、眠ろう。




*****
今回も、気持ち乱高下な蓮さんです。
キョーコちゃん、ある意味、現実逃避かな。。。




















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