奴がきた!33

もういまや、何処に向かっているのか、このハナシ。


「Hello!」

緊張の走る車内に、ジュリエナのビジネスライクな声が響いた。
女神の容貌は何か女社長か何かという風情で、さっきまでの「ちょっと困ったお母さん」とはガラリと変わる。
・・・スーパーモデルで女優。
その迫力。

固まるキョーコを、オロオロしながら見ている久遠とクー。

そう、ジュリエナがまとったその雰囲気は、弁護士である母・冴菜が日々まとっていた冷然としたもので、女神がそれをまとえば、雪の女王というか、暗黒の魔女というか、、、迫力は段違いである。

「怖え。」
タケシがぽろりといい、キッとジュリエナに睥睨される。
そう、会話は手短に終わり、アポイントが取れたわよ、と彼女は全員に告げた。
「何か?」
そう言いながら、彼女はバッグからコームを取り出し、そのゴージャスな髪を束ね始める。

「相手が弁護士なら、こっちは検事よね。」

「あ、あぁ。」
クーが、ぎこちなく返事を返し、その返事故に、キョーコ・久遠・タケシの三人の視線を一気に集めた。

「Law & Orderってドラマ知ってるだろう?」
クーがこそっと三人に耳打ちした。
ジュリエナは、きちきちと髪を整えるのに、余念がない。
そう、Law & Order、それはアメリカの長寿ドラマの一つ。
事件を追う刑事、それを受けて立件する検事、それに対抗する犯罪者と弁護士のそのやりとり等を巡る、社会派ドラマだ。
「あれにはまってるんだよ、、。」
「あぁ、、そういう。」

「だからな、弁護士はダークなんだよ。」

クーの言葉に久遠が頭を抱えた。
そう、弁護士とは、犯罪者を弁護するのだから、犯罪者が本当に無罪ならば正義の味方だが、、、。
ドラマ上は、いけ好かない悪役である事が多い。
そして、金髪碧眼の美女であるジュリエナが、映画でその手の役を演じる場合、徹底した悪役であることが多く、助演女優賞を受賞したこともある。

・・・あれは血も涙もないような演技だった。

クーと久遠が、遠い眼になりながら、鏡を前にしてチェックしているジュリエナを見つめる。

キョーコは、役と聞いてからは、凄いっと尊敬のまなざしに変わっていた。
苦手な母と会うことから、意識を遠ざけた、とも、いえる。

タケシはにやにやし始めた。
「オレ、刑事の役ね。」

はぁ?

久遠とキョーコがすかさずツッコミをいれたが、クーは腕を組んだ。

「じゃぁ、裁判官は私だな。」

なっ。

「ホシ(犯罪者)は久遠。」

ジュリエナとクーとタケシが口を揃えた。

「そう、キョーコを攫った罪でね。、ちゃんと弁護してもらうのよ?」

きりりと何処に持っていたのか、、いや、もうそのつもりで用意されていたに違いない、ノンフレームの眼鏡をかけ、金髪を一つにきりりと纏め上げたジュリエナが微笑んだ。

「え、俺が弁護してもらう?」
久遠がぽかんとして答えた。

「そうじゃなきゃ、おかしいだろう?キョーコに罪はないからなっ。」
タケシがけけけと笑った。

「タケシ、お前、、。」
俺のいない間に何やってたんだ?という言葉を久遠は呑み込んだ。
そう、家を飛び出してからの長い不在。その間に両親がどうやって過ごしてきたのか、、タケシは見ているのだ。ごっこ遊びは、クーもジュリもよくやっていたのだから、、、。
三人は打ち合わせもなく、役に入れるのだろう。
・・・悔しい、かな。

ふっと久遠は、呆然としているキョーコを覗き込んで、微笑みかける。
「大丈夫、ちゃんと弁護してもらえるよ。」
母に会うという緊張と、この設定を母が受け入れられるのかという不安が、キョーコの顔に出ていた。
「キョーコはそのままで、ね。」
そっと、久遠はその肩を抱く。
「はい、、、。」



*****
わぁ、、どうしよう、、。
調子に乗ってしまい過ぎた気が。


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