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めるふぇん

まあ、その、、、


「行って参ります。」

からりと玄関の引き戸を開けて、キョーコさんは表に出たのでした。

それはよく晴れた秋の日の朝のこと。
雲ひとつなく広がる青空に、心地よい風は、金木犀の花の香りを乗せてきます。

「きっと良い1日になるはずだわ!そうよね?」

キョーコさんの言葉の最後が疑問形ですが、相槌を返す人の姿はありません。
いえ、キョーコさんには明らかに話しかけた相手がいるのですが、、まあ、独り言を言っているように見えるのが普通です。

ふふふ

そっと胸の前に翳した掌を、柔らかく丸くして、キョーコさんが微笑みます。

「間違いないわ。」

ほにゃり
頬を少し染めたキョーコさんは、掌をそうっと空へ投げるようにして、自転車に跨りました。
そう、彼女は高校生。これから登校するところです。

「そうね、時間は余裕があるのだし。」
ゆるくのんびりとこぎ出した、自転車。
制服に袖を通すのも久しぶりのキョーコさんは、こんなのんびりとした朝の登校も久しぶりなのでした。
ですので、お天気にも誘われて、遠まわりをする事にしたのです。

東京の都心部とはいえ、いえ、都心だからこそ、緑化ということで、そこかしこに木々やちょっとした公園があります。キョーコさんは、お仕事への移動中に見かけた、ちょっと大きめの居心地の良さそうな公園に寄ってみることにしました。


紅葉には早い時期、公園の外にまで、花々の香りが漂っていて、キョーコさんは自転車をとめると、公園の中へ足を踏み入れました。散歩をしている人もいないようですが、明るい雰囲気にキョーコさんの足取りはどんどん軽くなります。

・・・・キョーコちゃん、こっち、こっちよ。
・・・・ほうら、キレイでしょ?
・・・・こっちもステキよ。

キョーコさんに誘いかける声、笑い声。
木漏れ日がきらきら、風に揺られた枝葉がさやそよと。

チチッ
鳥の囀りに、キョーコさんは思わず空を見上げました。

「うーん!やっぱり良い天気!」
鞄は肩にかけて、両手を空へ伸ばし、キョーコさんは深呼吸しました。
瞼を閉じて、秋の花の香りとほんのりとつめたい空気をめいいっぱい味わって、キョーコさんはまた微笑みをもらします。

、、、コーン、どうしてるかなぁ。

グアムの空に消えた妖精。

、、ちゃんと笑って、こんな空気を楽しんでるわよね。

伸ばした腕を胸前に置いて、キョーコさんは少し祈るような姿勢になりました。

、、、コーンが、ちゃんと笑ってますように。

キョーコさんは、はっ!と、真っ赤になってしまいました。

、、、コーンの笑顔を思い浮かべたらっ、あのキスがっっ。

両手を頬にそして口元を塞ぐように、キョーコさんは立ち尽くしてしまいました。

、、、、そうよっ!の、呪いが解けたんだもの!大丈夫よっ!

キョーコさんは何か虫を避けるかのように片手を払うと、少し乱暴に歩き始めました。

、、、大丈夫、大丈夫!


「最上さん?」

突然聴こえたその声に、キョーコさんは吃驚して立ち止まり、空を見上げました。
、、、違う違う、コーンは最上さんなんて、、、
ぎくりと身体を震わせて、キョーコさんはゆっくりと左右を見渡しました。
、、、げ、幻聴?

「おはよう。」

その声はキョーコさんの後ろからでした。
くるっ
回れ右をして振り向いたキョーコさんの前には、背の高い人。
帽子を目深に被っていましたが、キョーコさんにはすぐ誰なのかわかりました。

、、、、間違いようのない、妖精規格。

「敦賀さん、おはようございます!」
ぺこり
キョーコさんのお辞儀は直角、最敬礼です。
地面には敦賀さんの靴が近寄って見えます。
頭を上げた時には、敦賀さんはキョーコさんの真正面で、シィッと言わんばかりに、その口に人差し指を当てていました。
「す、すいません!」
通りの良い声で、キョーコさんは有名俳優さんのお名前を呼んでしまったのですから。

「早いね。学校?」
「はい。天気も良いので少し散策してから、と思いまして。あの、、、?」
キョーコさんは、敦賀さんはどうして?という言葉を飲み込みましたが、敦賀さんには判ったようです。
「いま、帰りなんだ。」
「それは、、、お疲れさまです!」
またお辞儀をしようとしたキョーコさんを、敦賀さんは押しとどめます。

「少し、、一緒に歩こうか?」

「ハイっ。」
キョーコさんは笑顔で応えます。
クスッと敦賀さんが笑みをこぼしました。

、、、、敦賀さんの自宅からは方向が違うけれど、、ロケ先からなのかしら?
キョーコさんは敦賀さんをチラチラと伺いながら、歩きます。
、、、、どうしてこの公園に?
敦賀さんは、空を見上げたり、少し周囲を伺うように歩いています。

「公園の入り口に、自転車が停まっていたから。」

へ?

キョーコさんは吃驚して立ち止まりました。
質問を口に出したつもりはありません。

、、、、自転車で?
、、、、どうして?

「最上さんに会えると思って。」

は?

、、、、あの自転車が私のって、覚えて?
、、、、車の運転でどうして?

「この辺り、ちょうど登校中かなって思ったから。」

はい?

さわさわと風が枝葉に囁かせます。
、、、キョーコちゃん、キョーコちゃん、しっかりして!

「風が、今日はいいことあるよって。」
キョーコさんはぽろっと口にしました。
「朝から敦賀さんにお会いできるだなんて、幸せ者ですね!」
にっこり笑ったキョーコさんに、敦賀さんが無表情になってしまいました。

あの?

キョーコさんは、変なことを言ってしまったかと、小首を傾げて敦賀さんを見上げます。

「それなら、、良かった。」
敦賀さんはその大きな手で、口元を隠しました。



「では、行って参ります!」
公園の入り口でキョーコさんがお辞儀をするのを、敦賀さんは見送ります。
「頑張っておいで。」

「ハイ!」

キョーコさんは、颯爽と自転車に跨り走り始めます。
その顔が真っ赤に染まっていたのを、見送っていた敦賀さんには見えませんでした。


それでも、2人には素敵な1日の幕開けだったのです。
ある秋晴れの朝のこと。


おしまい




*****
その、だから何って。
爽やかな文体は、爽やかに纏まるのです。(みなさんびっくり?)

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