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ASH- 4

ASH・・・灰・灰色


カチャン
開いた控室のドア。
蓮は中に入ると、ふぅと息を吐いた。
同じテレビ局に、不破がいる。
今晩の約束をしたとはいえ、あの男がキョーコを探し出さないかどうかとは、別問題だ。あんな避け方をされて黙っているとも思わない。
・・・ただ、彼女が、そういう避け方を覚えたっていいんだ。
蓮は、ふと触れたスマホをぐっと握った。
顔をあわせれば素を曝け出してしまうキョーコの姿が、、蓮の胸の裡を黒く染める。
・・・自分に向ける顔と違う、顔。

「キョーコちゃんに、早くマネージャーがつけばいいのにな。」
社が、出来るだけ柔らかくなのだろう、蓮の様子を伺いながら、そう言った。
「・・そう、ですね。」
社が言わんとしているのは、馬の骨避けのために誰かキョーコの側につく人間がいたほうが良いということなのだろうが、何かこうやって悪感情を露にしてしまう蓮に困っているようにも、聞こえてしまう。
軽く頭を振って、その考えを蓮は振り払う。

キョーコが不破に悪態をつきたくなるように、蓮もまた、不破を見れば何かしてやらねば気が済まないような思いに駆られる。
・・・俺は子供か・・。
不破が、こちらにつっかかってきていることも原因だとは思うものの、4つも年下の男にキリキリしてしまう自分も情けない。

何を言われようが、揺るぎない自分であればいいのに。


「え?事故??」
社が控室にきたスタッフに声をあげた。
ぎくん
蓮の身体が椅子から浮く。
「Aスタジオって、、歌番組じゃ。」
「そうなんですけど、ケガ人がでて、こちらのCスタは隣なんで、撮影に入れないんです。」
「ケガ人って、一体・・。」
「セットが崩れちゃったってことしか、まだわかってないんですけど、とりあえずココで待機していただければって、とりあえずの連絡ですみません!」
スタッフは慌てているのか早口でまくしたてて去っていった。

「聞こえてたか?」
社が青い顔で振り返った。
「セットが崩れたなんて、一体。」
蓮もそう返したが、、頭に浮かんでいたのは、この知らせを聞いたであろうキョーコが、スタジオに駆けつけたのではないのだろうか、という非常時にあるまじき内容だった。不破が出演していただろう番組の事故。
・・・事故にあったのが、不破だったなら。
「他人事じゃないよな。」
安全に万全を期しているのは当然のことなのだが、セットの中には使い回しているものも多いのも事実。
自分の身は自分で守らないといけない部分もある。

結局、撮影は1時間遅れでスタートした。
「幸い誰も下敷きにもならなかったんですよ。」
局側のスタッフが、お待たせしてすみません、そう言った前置きのあとに笑顔をみせた。
「ケガ人て聞いたよ?」
年配の俳優が声をあげた。
「それが、打ち身とかすり傷で済んだんですよ。良かったです。」
「ああ、それならよかったよね。」
「じゃ、こっちも巻いてるんで、お願いします。」


「驚いたよなぁ。」
スタートが遅れた分の撮影は休憩時間短縮で撮り終えた。
こういう時ほど、緊張感があってリテイクがないというのも良かったのかもしれない。
感想を述べた社は助手席に収まっていて、外はもう完全な夜景だ。
「セット、外注だったらしいから、そっちは揉めるんだろうな。」
「詳しい話、わかったんですか?」
「ま、ね。なんでも、口パクや、あてぶりはしないってバンドの連中がいたせいらしいんだけどね。」
「どういう事なんです?」
怪我をしたのも、セットも不破とは関わりが無いと知って、ほっとしたような変な気持ちが蓮を襲っていた。
「バンドセットの移動と、背景用のセットとの兼ね合いが悪くて、なにかひっかかって、大掛かりな背景用のセットが崩れて落ちたらしいんだ。だから、移動のスタッフの怪我ぐらいで、歌手やタレントは問題なかったって。」
ぺらぺらと話す社を、蓮は横目で伺う。こんなふうな話し方をするのは、、社らしくない。
「そのわりに、時間かかりましたよね。」
「うん、まあ、そのバンドのメンバーが見つからなかったから、らしい。」
明らかに、社の口ぶりが重い。

***

「今日は大変だったよね。」
蓮の声に、キッチンに立っていたキョーコの背中がビクリと揺れた。

「そ、そうですね、、撮影止まったんですか?」
「うん、1時間待ちだったよ。最上さんは?」
「わ、私は打ち合わせが途中中断したぐらいでした、けど。」
ちらり、蓮の様子を伺うような視線。

「そうなんだ。」

蓮が帰った時、キョーコは既に部屋にいて、料理をしていた。
玄関で迎えてくれた彼女の姿を嬉しいと思うのに、何かモヤモヤが蓮の中に産まれる。
「もう少しで、出来ますから!」
リビングの蓮に背中を向けたまま、キッチンで忙しそうにするキョーコに、聞きたい事がどんどん積もっていく。


「心配、じゃ、、無かった?」

「はい?」

「Aスタって、、」
蓮はそこまで言いかけて、止まる。
料理を並べていたキョーコの手も止まった。

「・・・セットって崩れるんだなって、怖くなりましたけど。」

「・・・そうだね。気をつけないと、いけないよね。」

「ですよね。」
かちゃり
キョーコが、カトラリーも並べ終えて、蓮の前に座った。
「あの、ありがとうございました。」
不意をつくようなキョーコのお辞儀。
蓮は戸惑って、それを見る。
「ただ気が強いお嬢さんって感じじゃないのが、いいって、監督さんに褒めていただきまして。」
「あ、あぁ、そっか、、、、よかった。」
その反応にキョーコが戸惑って蓮を見つめる。
「はい。いいスタートになって、なんだか、スゴく頑張れそうって。ですので。」
「うん、良かったね。それに油断しないようにしっかりしないとね。」
蓮はキョーコに、微笑む。
「・・はい。」
「・・それじゃ、、なりきってみようか?食事のシーンもあるんだろう?」

にこっ
そう小首を傾げて嬉しそうになるキョーコに、蓮は衝撃をうけて。

・・・君は不破を、心配しなかったの?

その質問を心の裡にある箱の奥底にしまい込んだ。





******
桃っていったくせに、、嘘吐きで、ごめんなさい。


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