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野茨の冠 10

シリーズものパラレルです。
前シリーズは解説と目次を参照下さい


****


「部外者の方は、遠慮していただきたいんですけど。」
薄暗い海岸に、ぴしゃりとでもいうような言葉が響いた。
「そうだったんだ、悪かったね。」
淡々と感情ののらない低い声。
「え、あの、敦賀さんに言った訳じゃ。」
オロオロとする声が横から入る。

ナツと蓮の前に3人の女性。
まん中の女性に縋るようにして立っているのは、いつぞやの彼女。

「いや、俺が連れてきたんだから。花火楽しそうだよって。」
蓮は視線を彼女たちからナツに向けて、ゴメンねと云う。
「あれ?敦賀くん!」
彼女達とは別の方向から、声がする。
「よかったー打ち上げモノとか、男子いないとツライのよー」
ロングヘアーの美人。
ナツは蓮を見る。
「百瀬さん、、。」
ナツを拒絶したショートカットの女性が、声の主を振り返った。

シャァァー
並べた小筒から、火が吹きこぼれて、キラキラ光る。

短い導火線だから、点火しては離れてと、蓮にしたらすこし落ち着き無い動き。
赤や緑、青と色を替える火に照らしだされる表情が、子供じみていて、ナツは何か満足を覚える。
「はしゃいじゃって。」
その声にナツは、花火から声の主に視線を移した。
百瀬と呼ばれていた人だった。
「敦賀くんって、あなたと一緒だとあんな感じなの?」
「え?」
ナツは何と答えていいのかわからない。
「あやとり」していた時もあんなだったから、そうだともいえるし、そればかりではないから、そうだとは言えない。
「あんなに笑う顔、私、見た事なかったから。」
「そうなんですか。」

パンッ

大きな音に、視線を向ければ、蓮がこちらに駆け寄ってくる。
「凄いね、打ち上げ花火っぽいのまであった。」
「ふうん。」
ナツが答え、百瀬が一歩を踏み出す。
「手持ちもね、変わった花火があるのよ。」
「そう。ナツ、どうする?」
蓮がナツに手を差し出す。
どきん
ナツの胸が大きく鼓動をうった。
・・・嬉しい。
今、そう思った。
ナツは笑みをこぼす。
「やってみたい。」


痛っ

ナツの手にぶつかった火花。
それはちょっとした隙だった。
「この悪魔。」
囁くように言って、離れていった女。
その面影に、あぁと何か納得した。
右手の甲を抑えて、そして、じっとその痕に目を凝らす。
暗闇ではハッキリしないけれど、火傷にはなっただろう。
じんわりと痛みがあがる。

「ナツ?」
驚いて手をとった蓮が酷く困った顔になっていた。
「冷やさないと。」
「・・うん。」
持ってきたミネラルウォーターを蓮が手早くナツの手にかける。
「しみない?」
「うん。」
「なら、見た目ほど酷くないのかな。でも、帰ろう、このままは良くない。」
「いやよ。」
「ナツ?」
「私、やられっぱなしは、厭。」
「・・・どうしたいの?」
蓮がナツを覗き込む。
「どうもしないけど、平然と楽しんで帰るだけ。」
クスクスとナツは嗤う。
きっと離れたところで様子を伺っているに違いない。
・・・こんなのは、めげた方が負けなんだから。

誰かが、ナツの手の傷を話題に出すたびに、ナツの姿をみるたびに、「良心」が痛めばいい。
ちらりと女の姿を追う。
・・・あれは、ショッピングセンターで謝れと絡んできた人だ。
人を悪魔よわばりできるだけ、自分が正しいと信じているのか。

「ナツは、綺麗だ。」
ぽつりと蓮が言う。
ナツはどきりとして蓮を見る。
「傷すら、勲章なんだね?」
蓮がナツの手に口づける。
「そんなに、、、きれいじゃ、ないわ。」
ナツは小さくこぼした。
「綺麗だよ。」
屈んだ蓮がそう囁いて、唇を重ねる。


そうか。

重ねた唇の熱さに
入り込む熱い息に

ナツは身体を震わせる。

蓮が綺麗だというたびに、
嬉しかったのだと。

この人には、わかるんだ、と、嬉しくなっていたんだと。

ナツは両腕を蓮に伸ばして、絡めた。
この口づけが永遠に終わらないといい、と願って。










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二人だけよりも誰かが絡む方が…

こんばんは。久しぶりの「野茨」とても面白かったです。二人だけの世界だと窒息しそうな、またはバラの棘で引っ掻き傷だらけ、という方がイメージかも知れませんが、そんな二人なのに、他人が絡むと二人でいることで二人以上に強みが増す感じですね。雰囲気は違いますが、カイセツコンビに通じます。また、他人とのやり取りを通してお互いを発見している、みたいなところもありますね。興味深いです。

野茨の世界の雰囲気がとても好きなので、まだお話が続くのかなと思って楽しみにしています。どうもありがとうございました。

Re: 二人だけよりも誰かが絡む方が…

>genki様

コメントありがとうございます!
私自身、思い入れたっぷりのお話なので、とてもとても嬉しいコメントです!

蓮さんもナツちゃん(キョーコさん)も、自分軸で外を見ると世界がこんがらがっているんじゃないかと。外から刺激されると、咄嗟に対応した自分が見えて、世界も見える。
まだまだこの二人を巡って、なにかせずにはいられない周囲がいますので、お話は続きますー

楽しゅうございました!

「野茨」シリーズを最初から読み返し、未読だった『野茨の冠』
までたどり着きました。

二人の距離が一気に縮まりましたね。
賢く綺麗で、自分の思い通りに事を進めることができるように見えた悪魔な女やモテモテ男が、実は「か弱いふりをした、強欲な者」たちから、常に攻撃されている・・・視点を変えると被害者がいれかわりますね。

(これまた被害者なユミカなどは負の連鎖から生まれた犠牲者と言えるかと。)

あいつには何をしても平気、だってあいつが悪いんだから・・・そんな差別的な攻撃に対し、己の高いプライドだけを糧にして必死に立ち向かってきた二人がやっと安心してそばにいれる人を見つけたんですね〜。

ここから先どうなるのか・・・続きも楽しみにしてます。
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