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羽田空港の到着ラウンジ、スーツ姿の人々が足早に行き交う。
夏休みも終わり秋の気配が漂い始めた平日の午前中、ビジネスマンが忙しそうに目的地へ散っていくせわしない場所。
中には戸惑うような人々もいて。

「あ」
ラウンジにある大型の画面に社は足を止めた。
社の横を歩いていた敦賀もつられたようにその画面を眺めた。
淡くふんわりした雰囲気の中、唇に人差し指を当てて微笑む美少女の顔。
〜魔法のルージュ〜
笑顔の少女がくるっと向けた背にかぶる文字
「ーなんか、凄く綺麗になっちゃったなぁ〜」
社が足を止めたまま、つぶやいた。
敦賀は横で固まったままで、社は不思議そうに彼の顔を覗き込んで、にやりと笑った。
「・・・顔。」
「ーっ。」
目深にかぶった帽子の下、口元の微笑みは隠せない。
社の指摘に、敦賀は慌てて口元に手をやるが、それで何かがごまかせるわけでもない。
社はそれを突っ込むまでもないと、歩き始める。
「魔法のルージュ、だもんなぁ〜現場ではしゃいでたんだろうなぁ、キョーコちゃん。」
「・・そうですね。」
敦賀は社の言葉に、その長身を少し身じろがせて、返答に間が開いてしまった。
社は気にするでもなく、歩く。
 大手コスメメーカーの華粧の秋冬のCMに「京子」が抜擢された事は、ちょっとしたニュースにもなっていた。デビューから1年そこそこの新人に白羽の矢がたったのは、DarkMoonの打ち上げ会見を見た華粧のCEOの一声だったらしい。そこから、「京子」本人がコスメデマジックと自ら言うほどのメイクに対する強烈なファンタジーをもっていることが知られて、オファーがきたのだという。
「初めて化粧したって、記念写真とったのが昨日みたいなのになぁ」
社の声に敦賀も思わずあのときを思い出す。
足の激痛に耐えながら凛とすました顔と、化粧を落としたくないとがっかりしていた顔と。
「華粧の宣伝部かぁ。」
イメージが全てといっても過言ではない化粧品のCM。華粧は他社のように広告代理店を使わず、独自の宣伝部が企画をたてる。故に起用するタレントとも独特の契約をすることでも知られていた。「ミューズ」といわれるのはその契約のこともさしている。契約期間中のメイキャップはすべて華粧お抱えのアーチストが担当するのはもちろん、出演する全てについて華粧の宣伝部が関わるのだ。つまり一定期間の専属契約に近い。
LMEにオファーが有った時点で、タレント部は上や下への大騒ぎになった。
華粧の宣伝部と渡り合えるマネージャーを京子につけなくてはならない。
「何か問題があるんですか?」
社がつぶやいたまま、思考をはせていたので、敦賀が心配そうに覗き込む。
「いや、女優や女性タレントを担当するマネージャーなら、一度は絶対に華粧の仕事はしたいからさ。」
「社さん?」
「すまん。いや、キョーコちゃんはちゃんといい仕事に巡り会うんだなぁってさ。」
クスクスと敦賀が笑う。
「俺の担当で残念でしたね。」
「いやいやいやいや〜そういうんじゃないって〜」


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