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name 9

「おう、来たな。」
社長室の応接セット。社長は本日、中世の貴族、になっているらしい。
後ろに大きなリボンが見えるスタイルは、いささかおとぎ話を思わせる・・・・って。
どかんと座る彼の斜め横のソファーに、お姫様。
そのスタイルに上機嫌で照れている笑顔で、微笑む最上さん。
さすがに彼女は立ち上がっていたが、お姫様衣装のために、いつもの深々なお辞儀ではなかった。

・・・・・やられた。・・・
かなり悲壮な覚悟で望んだ場に、これはあんまりだと思う。
いや、悪ノリぐらいしないと、もうやっていられない。

彼女の前に進み出て、騎士さながらに頭を下げ、差し出された手の甲に口づける。
ふにゃとでもいうような彼女の表情に、またどきりとする。
この場がただのパーティーなら、そのまま手を取って抱きしめてしまうのに。

「じゃあな。俺は引っ込むから。」
「・・・・・着替えたいなら、用意があるぞ?」
ぎょっとしたように社長を見る。
騎士の扮装だけじゃない、ミス・ウッズが控えているということなのだ。
社長の思いやり、なんだろう・・・・
「ありがとうございます。そのときには声をかけさせてください。」
「おう、わかった。」
にやり、と笑って社長は、最上君また後でな、と言って颯爽と出て行ってしまった。

「あのう。」
最上さんの困ったような声。
「うん、、今日は時間をありがとう。」
彼女に座るようにうながして、彼女の前の床に両膝をつく。
「敦賀さん??」
「どうしても、君にわかってもらいたい事があって。」
最上さんの顔が固まっている。

「格好わるい話なんだよ、、大友監督にね、君の目は偽物だって言われてね。」
「そんな、」
ただ、彼女が予想していた内容ではなかっただろうに、やや困ったぐらいで、さっきの固まった顔からは、ほぐれている。やっぱり、俺の何かにおびえる気持ちがあるんだな。
「ちょっと、ごめんね。」
 ポケットからコンタクトレンズのケースを取り出して、テーブルに広げる。
「偽物って、コンタクト・・・」
フォローの言葉をかけようとしたのであろう彼女の声が、途切れた。

 「きれい」

優しく微笑んでくれる、その顔に思わず、涙がおちた。
こんな時に、涙なんてでるものなんだと。
おろおろしたように、彼女がソファーから身を乗り出してきた。

 I love you, Kyoko…

彼女の顔がそばによってきた、その瞬間に言ってしまった。
かすれたような自分の声に自分で動揺する。
今日、話さなきゃいけないことはまだあるというのに。
彼女が差し出しかけたその手を、逃さないように両手で包む。
彼女の顔が真っ赤に染まっているのに、ちょっと安心する。

「この目だけじゃない、髪も違う色。君が、見たいというなら、今髪色も戻すけど、話をさせてもらってもいい?」
コクンと彼女がうなずく。
逃げ出さないでいてくれてる、それだけで救われた。
ほんとの告白だって思ってくれてなくても、今はいい。

「君には知って欲しいと思って、これでも勇気を振り絞って話をしてるんだ。」
コクンと彼女が返してくれる。
「・・・君には10年前会っているんだ、っていったら、怒るかい?」
「え?」
彼女の大きな瞳が目一杯見開かれる。

「俺の名前は久遠だよ。」




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name 8

「で、どうしたいんだ?」
LME社長室、社長はソファーに深くどっかり構えて、敦賀を見上げる。
ハロウィン近いのもあって、何かの妖怪の変装らしいが、いつもより地味で一般的な姿に見える。
「・・・都合のいい話だってわかってるんです。世間に本来の姿とは説明はせずに、敦賀蓮として、出たいと思います。」
社長がため息をついた。
「それでいいじゃねえか?アイツみたいに芸名の葬式もなかろう?」
「え」
敦賀は顔を挙げる。
「で、行くんだろ?」
敦賀は目をみはる。
「ラブミー部のお嬢さん方に英語も教えているんだってな?」
口元につい手が行く。
「・・・先超されて、かっこつかないよなぁ〜」
社長の表情はいやらしい笑いに変わっている。
「ま、最上君じゃないが、素顔を探されまくるあいだ、行ってくればいいんじゃねえか?」
シュボっと派手な音で社長は葉巻に火をつける。
「ただ、条件がある。」
少し和らいだ敦賀の顔が一瞬にして強ばった。
「最上君にはちゃんと話せよ。・・・それができないなら、オレはこの話・・・・断る。」
低く、脅すような声音。
「今、彼女はうちの看板になりつつある、しかも大輪の花を咲かせるはずのな。」
「ちょっっとでも、壊すようなことをしてみろ。たとえお前でも、オレはゆるさん。」

「っ敦賀蓮は作った役だと、彼女に話す事は・・・壊すことに、ならないんですか?」
絞り出すような声。
ふん。社長はにべもない。
「そんなもん、オレが答えんのか?オマエどれだけ最上君を見てきた?」

ーどれだけ、見てきた?

「オレはいい機会だと思っているんだ。」
「佐野と社にスケジュールはつくらせるぞ。どうするんだ?」

「お願い、します。」
胸がつぶれてしまって呼吸が苦しい。
彼女の信頼すら失う、それが怖い。


ー本能が警告してるんじゃないのかー

こちらの苛立ちをすぐに察知しておびえるのは、過去のせいばかりなのか?
アイツがそうだったように、彼女の良さだけを利用してた?都合の良い処だけを見て。
アイツが嘘をついていたように、俺も嘘をついていると、彼女はどこかで勘付いている。
嘘の内容が問題ではない。



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name 7

「はじめまして、大友です。」
微笑んで差し出された手を、ちょっと感慨深げに眺めて敦賀は握手に応えた。
「敦賀です。よろしくお願いします。」
見慣れたLMEの社長室で、そこには社長と大友の姿しかなかった。
「では、よろしく。」
社長が大友に声をかけて、去ってしまう。
「?」
「ああ、僕がね、宝田さんに確認させてもらったら、ここで話した方が、セキュリティーもいいってね。」
敦賀は少し構える。セキュリティーがいるような話、の方向性が見えない。
「君自身のことで、ちょっと引っ掛かる事があるんだ。」
初老というか社長とそう年代は変わらないであろう彼の声は低いが聞き取りやすい。
「ズバリきくけど、その偽物の眼と髪、取り除く気はある?」

 一気に部屋の温度が下がった気がした。

「僕にはわかってしまうんだよね、そういうの。どうしてそうしたのかは全く興味ないんだけど、僕が撮るのは本来の姿がいい。」
「……」
「宝田さんにこの話をするといったら、この場所にしてくれとだけ言われた。あとは君次第だと。だから、僕は理由はしらないんだよ、ほんとに。」
大友はちょっと大きな呼吸をした。
「僕がね、「京子」を美しいと思うのは、どこにも弄った形跡がないのも大きいんだ。俳優やタレントの矜持として整形っていうのを否定するつもりはないけど、僕の美意識からは離れるんだよ、整形の痕跡っていうのは。」
「そのせいか、僕の眼には見えちゃうんだ。君の瞳が、不自然だって。」

「君にオファーをだしたのは、君のその不自然な眼を「京子」が不安そうに見ていたからだけど」
「え?」
「あーっと、彼女は君の眼にあるのは普通のコンタクトだって思ってるよ。不自然とも思ってないかもしれないけど、多分、全幅の信頼をおいていいのか本能は警告してるんじゃないかな。」
 敦賀は無意識に左手で右腕を強く握りしめていた。
「君は熱意のある俳優だと思うから、、僕の映画はみたんだろう?」
 やっとの思いで敦賀はうなずいた。
「なら、解ってもらえるかな。嘘は言ってないって。」
「はい、それは。」
敦賀の頭には、クビを告げるあの忌々しい記憶がのしかかってきた。
「ま、君が本来の姿をさらす気がないにしても、君を撮るよ。僕は今の「京子」をどうしても撮りたいからね。その引き立て役になるのか、共演になるのかは、君次第。」
 大友の声はけして否定的な響きではなかったが、潔癖そのものだった。全ては彼女の為だから、君がどうなろうと興味はないと宣言されたようなものだ。
「即答できないのはわかっているけど、1週間以内には返事をくれないか?」
「ありがとうございます。」
敦賀は深く頭をさげた。


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name 幕間

「蓮、お前すごいな。」
社は電話口でタメ息を漏らした。
「正直、何カ国語いけんの?」
社は事務所の俳優部にいる。マネージャーとしての会議があり、そこで佐野に捕まったのだった。

もし、敦賀さんがフランス語に堪能なら、京子さんと琴南さんに教えて欲しいのだけど。

「みっちゃん、策士だなぁー」
60年代とでもいうようなスーツ姿の社長が苦笑している。今日の仮装テーマなのかもしれないが、普通過ぎて残念だと佐野は思った。
「蓮の好感度も最上君の好感度もあげるって、スゲえわ。」
佐野は笑う。
「うっかり二人っきりでもお勉強ですからね。」
社長のニヤニヤが止まらない。
「社が困ってたぞ、教育番組からのオファーが増えたって。」
佐野が吹き出す。
「いいんじゃないですかープププッ」
「オイ、策士。オレが頼んだのはその方向性じゃないぞ?」
社長の眼は笑っているが、ヤッパリそっちの確認なのか、と佐野は表情を改めた。

その頃、ラブミー部は久々に三人が顔を揃えていた。
天宮は所属事務所が違うため、今回はLME本社に来ないことで嵐を回避。また佐野ともラブミー部の仕事だけで関わっている。
「やっぱり事務所移るべきだったんだわ〜」
と雨宮は二人のヨーロッパ土産を眺めてタメ息をついた。
「そうでもないわよ。」
と琴南がちょっとイライラした風に応えた。
「どうしたのモー子さん?」
「いや、ぼちぼち恐怖の先生がいらっしゃるかなって。」
時計は14時40分を指している。
「あー」
天宮は琴南のイライラがわかるような気がした。
佐野からフランス語講座の教師認定された敦賀の嬉々とした雰囲気に、琴南は居心地の悪さを感じているのだ。
フランス語だけでなく、英語に至ってはスラングからスピーチ英語と幅が広い。
映画やドラマでの言い回しなど、琴南もありがたいと思っていたが。
「英語で話してる敦賀さんて、自然よね。」
天宮がボソッと言う。
「そうなのよ、そして必要以上にフレンドリィ。」
なにしろ、「kyoko」「kanae」「chiori」と普通に呼ばれるので、いつものさん付けでない上に、「ren」と呼び返さなければならない。なんとかMr.で誤魔化そうとした3人は、キュラキュラ笑顔の前に屈したのだった。
そして、敦賀蓮の正体は一体?と3人ともに疑問を持ちつつ、帰国子女なのかとも聞けず、甚だ気持ちの悪い思いを抱いたまま、不可思議な異国情緒を味わっている。

「で結局この教室はいつまで続くの?」
「あー、ショートフィルムの撮影時までとは、聞いてますよ。」
キョーコが二人に告げる。
あそっか。と二人もうなづいた。
そもそもがフランス人監督のショートフィルムのための準備だったのだ。


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name 6

「よかったなぁ、スケジュールに余裕があって!」
社が受けた電話のあとに満面の笑みをうかべてつぶやいた。
「京子」騒ぎと佐野マネージャーのおかげで、映像以外本人の姿を見なくなって1ヶ月近く。
もともと苦手なオフをジムと読書でなんとか乗り切る習慣がついた担当俳優の姿を、ちょっと切なそうに見守ってきた社だ。読書のせいもあって、黙ってすごす楽屋はちょっと空気が重い。それでも、その程度で落ち着いてくれてホッとしていた所もあった。恋する相手の姿すら取り上げられて、ただでなくとも細い食が消え失せたり、闇の国のヒトの出現率が増えたらどうしようかと、佐野の連絡に青くなった日を大人気なかったと今は振り返れる。

「蓮の仕事量、このぐらいがベストなんじゃないか?いままでよりなんていうか深みのあるオーラがでるようになったよな。顔だけっていってたウルサ方がずいぶん友好的になってるよ。食事もちゃんと取ってるんだろ?」
 俳優部の松島主任が満面の笑みで社を見ている。実力派といわれながらもビジュアル先行は否めなかっただけに、松島も嬉しいらしい。
「そうですね、食事はずいぶん落ち着きましたよ。助かってます。」
「佐野になぁ、緊急事態には頼むって言っといたんだけど、良かったよ。」
 松島が苦笑する。
「え、佐野さんにですか?」
「ほら最上くんなら、蓮に飯食わせられるんだろう?」
 社は苦笑する。蓮がちゃんと食べている理由は、彼女に呆れられたくない意地だからだ。今、甘えることもできないなら、ちゃんとできていたと虚勢を張る先輩でいることを選んだのだろうと推測していた。

「蓮、新しい仕事のオファーがあるんだけど?」
 撮影を終えて楽屋にもどった敦賀に、社が満面の笑みで話しかけた。
「ずいぶんいい話なんですね?」
「喜べ、キョーコちゃんと共演だ。」
 敦賀は返す言葉を失った。社は敦賀が固まるのを想定していたらしく、たじろがずに続けた。
「しかも、あの男の役っ」
「え?」
「華粧の夜バージョン」
 ドキンと心臓が大きく鼓動する。
「大友監督はもともと映画化を考えてたらしくてさ、華粧も今回のヒットに気を良くしてるしで、急ピッチ。」
「映画、なんですか。」
 社もさすがにここまできて、困った顔になった。いくらキョーコちゃんと共演といっても、キョーコちゃんの企画へのゲストという印象が否めない、そこを蓮は気にしてしまうのかと。
「・・・・やめるか?」
「え?まさか、なんでそんな。」
慌てた口ぶりなのに無表情。
「いや、俺めっちゃ嬉しいのに、お前嬉しいそぶり一つないからさ。」
「びっくりしすぎて、リアクションでないんですよ。」
 敦賀に表情がないのはそれで怖いし、キュラキュラ笑顔も怖い。社はこの青年の不器用さを改めて見る思いだった。

「万全の状態で大友監督にはお会いできると思ってます。」
 社は,松島にそう告げた。
「そうか、安心したよ。佐野から聞いたんだが、あの役ほんとは日本の俳優にやらせるつもりなかったらしいよ。」
「え?」
「ここんとこ大友監督、イギリスが拠点になってて、あっちで活躍してる俳優を使うつもりだったらしい。」
 松島が苦笑する。
「華粧もEUへのイメージ戦略があるから、そっちで乗り気だったんだよ。」
「え、じゃ、そちらがダメで?」
「いいや、最上君の鶴の一声っていうか、なぁ。あのDArkMoonの打ち上げ画像を見て、そこから。」
「・・・大友監督ってキョーコちゃん相当気に入ったんですね。」
「そりゃね、彼の待望のミューズだってもっっぱらの評判。最上君、英語もできるからってんで、姿を消すついでにヨーロッパ周遊につれてかれてたんだから。」
 社の顔色はだんだん血の気を失ってきた。
「ヨーロッパ周遊って。。。」
「遊んでる訳じゃないぞ。華粧のプロモーションだから。おかげで、彼女と琴南さんはいきなりEUデビューだし。」
「デビューって。」
「社長が見越してたのか、佐野がマネージャーで助かったよ。」
 ラブミー部の二人が海外進出というだけに感慨深げだが、その辺りの情報から全くつまはじきだったのかと社は真っ青だ。
「あ、社。これ公式発表まで絶対口外するなよ。二人のEUデビューもまだ伏せてるからな。」
「蓮には話していいんですよね?」
 松島が笑う。
「そりゃ大丈夫だが、一応口止めしておけよ?」

 大友監督のミューズ、EU,琴南さん・・・
 いったいどこから蓮に説明したらいいんだ??
 


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